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オーストリア物語 51
「オーストリア国立図書館」で過ごす
アカデミックなひととき


 王宮内、スイス宮の隣に位置する「オーストリア国立図書館」。もとはハプスブルク宮廷の書庫だったが、帝国の解体後は国立の図書館として人々に長く愛されている。

 造られたのは1723年から1737年にかけて。マリア・テレジアの父であるカール6世の命令により、 建築家ヨハン・ベルンハルト・フィッシャー・フォン・エルラッハが手掛けた。フィッシャー・フォン・エルラッハは、シェーンブルン宮殿の設計などでも知られる当代きっての建築家だったが、工事の始まった年に惜しくも死去。同じく建築家であった息子のヨーゼフ・エマニュエルが遺志を継ぎ、完成させた。

 バロック建築の代表的建築家であった フィッシャー・フォン・エルラッハ父子の手による建物は、図書館とは思いがたいほどの華やか。 ダニエル・グラン作のフレスコ画が掛かったドーム型の豪華な大広間は、高さ約20メートル、奥行き約80メートル。ドームの下には堂々の佇まいを見せるカール6世の石像。その脇には、羊革の重厚な本が所狭しと並べられている。

 金の装飾と大理石の柱で飾られた空間には膨大な書物が納められ、まさに「世界で最も美しい図書館」の称号にぴったり。 「知の小宇宙」とも言うべきスペクタクルなスペースとなっている。ちなみにカール6世は知力の向上を国民へ呼びかけるため、この空間を午前中のみ一般に開放したと言う。

 所蔵の本はおよそ230万冊。対トルコ戦争などで活躍した軍人オイゲン公の蔵書15,000冊や、宗教改革者マルティン・ルターの膨大な蔵書があることでも知られている。蔵書以外にも、著名な音楽家直筆の楽譜や、15世紀までの印刷物、地図、ポスターなど、芸術文化に関するさまざまなコレクションでも有名。中でも特に価値あるコレクションは博物館としてコーナーが設けられ、人々の注目を集めている。世界中から集められた380あまりもの地球儀を展示した「地球儀博物館」や、古代エジプトのロマンが詰まった「パピルス博物館」などは必見だ。

 この他、国立図書館では、好奇心を刺激するテーマを掲げた展覧会も開催。2006年10月31日までは、国立図書館が所蔵する貴重な古文書や文献をもとに、中世の手書史料からバロック時代のディナーまでの調理方法の発展や多彩な食文化の歴史をたどる「味覚をめぐる展覧会〜調理の芸術と食文化」が開催されている。19世紀に出版された料理書にはハプスブルク時代の多種多様な伝統料理が紹介され、食に興味のある人にはたまらない特別展となっている。


情報提供:オーストリア政府観光局
最終更新日:2006年5月23日
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