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トラベルライターによるホットな現地情報
<No.10>キューバ


この夏日本からのチャーター直行便が飛ぶ
魅惑の国キューバ

 今年の夏に日本航空が関西空港からキューバの首都ハバナへ4往復8便のチャーター便を運航させる。これまで、メキシコシティかカンクンで1泊してから乗り継いでいた一般的なルートが約30時間であったのに対し、関空〜バンクーバー〜ハバナと飛ぶことで約17時間程で行けることになる。カリブ海に浮かぶ未知の国キューバへ飛んだ。

鈴木一吉(ガイドブックライター)


透明度抜群のビーチに軒を連ねるパロデラのホテル
■カリブの真珠と表されるバラデロのビーチリゾート

 ハバナから東へ140qにあるバラデロは、カリブ海の中でもとりわけ水の色が美しいのどかなビーチリゾートである。スペイン、イタリア、ドイツ、フランスをはじめ、カナダやメキシコなどのほか、国交のないアメリカからの旅行者も、ビーチ沿いに建ち並ぶ瀟洒なリゾートホテルを、キューバ観光の滞在拠点にして利用している。

 キューバと聞けば、日本の旅行業者や観光客は、まず首都のハバナを思い浮かべるが、ヨーロッパからのパックツアーでは、多くのチャーター便がバラデロ空港へ直行している。このことからもわかるように、ヨーロピアンのキューバ観光なら、このビーチリゾートで長期滞在し、滞在中の1〜2日を利用してハバナの旧市内観光や、古都トリニーダなどを訪ねるというのが、一般的なコースだ。

 バラデロ海岸の特徴は、純白に近い砂浜とエメラルド色の海水に少しミルクを流し込んだようなバランスの色調で、カラー写真にして見る時には、極めつけ上がりの良い絵になることである。もちろん海水の透明感も、これまでに私が訪れた世界的に知られたビーチの数々と比較しても5本の指に入ることは確かであり、モータボートや水上スキー、ジェットスクーターなどというマリンスポーツの喧噪がないことも、この海岸がエコツーリズム向きで、特にのんびりと滞在したい観光客好みの理由になっているらしい。

 滞在中に7件ほどのホテル探索もしてみたが、いずれも客室は広く機能的で、アジア並のリーズナブルな料金なのにファシリティが優れている。中には18ホールのゴルフコースや、大きなプールが3つもあるホテルがあり、これらのホテルに滞在するのなら、例え1週間の滞在であっても施設内で過ごすだけでも飽きないだろうと思えたほどだ。


現役として活躍を続けるクラッシクカー?
■世界遺産の町ハバナで50年前へタイムスリップ

 チャーター便を利用したツアーも出揃ってきたので、ハバナの楽しみ方も掲載しておく。「世界遺産とヘミングウェイ」がキューバ旅行の定番キャッチフレーズになっているようだが、ハバナに到着してまず驚ろかされたのが、空港施設の立派さだった。

 ”アジアならプノンペン、ヨーロッパならソフィア程度”と、ローカル空港をイメージしていたが、あたかも関空を想わせるほどの、採光を充分に考慮した鉄骨フレームのガラス張り建築は私の予想外であった。空港は1998年の8月に完成したそうだが、滑走路の片隅には20年以上前に主力機として活躍したソ連製の現役プロペラ旅客機も堂々と駐機していた。

 市内の観光ポイントは16〜17世紀に建てられた教会や要塞等が主なポイントになるが、街には革命当時と変わらないままの民家が今でも多数残されている。私には旧市街にある冷房施設がないので窓やベランダに腰掛けて涼を取る古い石造りの民家の生活や、50年前のシボレーやフォードが今でも現役で走っていることの方が何倍にも嬉しかった。

 「あの車はクラシックカーのファンにとっては垂涎の物ですね」と尋ねたところ、「確かに車は何とか動いているのだが、エンジンや関連パーツが寄せ集めの部品なので、オークションではあまり良い値段がつかない」という返事が返ってきた。

 一般の家屋もさることながら、ホテルにもノスタルジックな個人客向きのお薦め施設が多数ある。旧市街のサンタ・イザベラやヘミングウェーが常宿として利用していたアンボス・ムンドス。中心街にあるイングラードや、セビリヤも情緒があるし、 かのアル・カポネが愛したナショナルホテルにも当時を彷彿させる雰囲気が残っている。残念ながらパッケージ・ツアーでは使い勝手の良さから近代的なメリア・コヒバやハバナ・リブレ、ハバナ・リビエラなどに滞在するのが一般的だが、時間があればこれらのホテルにも足を運んでみたい。


陽気なキューバの人々
■外貨不足がもたらす夜の異文化交流?

 昨今の海外旅行で一番気になるのが治安の問題だが、ことキューバに関しては共産主義ということが幸いしてか、夜間の一人歩きもさほど心配することはないようだ。とは言っても、滞在していたホテルを一歩出るとタクシーの運転手に「タクシー」と誘われ、10m間隔で立っている娼婦が「チーノ(中国人)チーノ」と声をかける来るのには正直言ってまいった。

 ホテルのチェックインの際に知り合いになった名古屋市立大学のK先生も、「とにかく外出するたびにタクシーの客引きが多くてうるさくて敵わないので、"No TAXI"とプリントしたTシャツでも着ていないと、いちいち断るのに疲れますよ・・・」と話していた。

 この国では、全ての国民に2週間毎に米と卵と灯油が配給になるのだそうだが、国民がペソ払いで買える物は僅かの野菜類や鶏肉とラム酒ぐらいで、牛肉をはじめ、あの有名なコーヒー豆や砂糖などの食料品はもとより、ビールやウイスキーといった飲み物、新柄の衣類や電気製品が買いたければ、ドル・ショップと呼ばれる外貨専門店に行くための外貨を得なければならない。海外に親類がなくドル送金の無い一般市民にとって、闇で生活用品を手に入れるための外貨を稼ぐ方法はこれしかないのも、この国の現実なのかもしれない。


■「老人と海」のモデルになったコヒマル

 ところで私が夕食に案内してもらったのが、ホテルから車で15分程のコヒマルにある「ラテラサ」という海の見えるレストランだ。生憎、夜だったのでこの辺の海が美しいのかどうかは分からなかったが、同行してくれたツアーオペレーターの是永社長が、店のマネジャーに「日本から来たジャーナリストだ」と紹介してくださったおかげで、店に入ってすぐ左手の窓際にあるヘミングウェーが常用していた4人掛けのテーブルに案内された。

 ほかのテーブルが、白のテーブルクロスの上に赤のテーブルクロスを交差させてかけてあるのに対し、このテーブルだけは赤のクロスが下で、白のクロスを上で交差させという逆のやり方だ。私が座らせてもらった海に向かって右側の席がヘミングウェーの指定席、正面に海が見える席が彼の奥さんの指定席、そしてその傍の2人掛けのテーブルがグレゴリー老人の席だったそうだ。

 この日私達が注文したのは、活きのいいオマール海老のバーベキューとパエリアだが、この店で忘れてならないお薦めは、ヘミングウェーも好んだという"ダイキリ”、大きなカクテルグラスに入れられたダイキリの、カリブ海よりももっと濃厚なブルーキュラソーを使った味は、モヒートとハバナ・リブレ同様に、私の大好きなカクテルの一つになっている。


衣装もきらびやかなキャバレー「トロピカーナ」
■必見−−トロピカーナ・キャバレーのショー 

 さて、ラテン音楽大好き人間の私にとって、最後の楽しみとして残しておいたナイトライフが、キューバ旅行の第一の目的でもあったキャバレーのツアー。

 1夜目はナショナルホテルの中にある「パリジャン」、3夜目は「トロピカーナ」のショーを鑑賞したが 、いずも素晴らしい演出で、ラテン音楽の愛好者でなくとも飽きることはない。特にトロピカーナは2000人収容という野外の大きなキャバレーということもあり、夜空の下で演じられるダイナミックなサウンド効果やダンサー達の衣装の華やかなど、パリやラスベガスのレビューと比較しても充分に満足できる内容だった。

 このほか、サルサやルンバを聞かせるライブハウスや地元の若者達が集まるディスコ・クラブなども数件あったが、いずれも旅行者が訪ねても料金をボラれたり、怖い思いをすることもなくナイトライフを楽しめるはずだ。

 とはいえ、こうした地元の人達が行く店ではスペイン語しか通じないのも事実。チャーター便の運航で日本人旅行客が増えれば、言葉が通じないことを理由に料金をボラれるなどのトラブルが起きないとも限らない。

 旅は訪ねる国が遠ければ遠いほど楽しみも沢山あるのだから、充分に注意して、旅を台無しにしないように行動したい。


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