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トラベルライターによるホットな現地情報
<No.11>シンガポール


今絶品の水餃子が食べられる
シンガポールの電脳屋台

 とある雑誌の取材で先日、何度目かのシンガポールに出かけたときの余話である。
 ある日のお昼時、シンガポーリアンで日本語の堪能なコーディネーターのケネスさんに「何が食べたいですか?」と聞かれ、「水餃子が食べたいなあ」というと、「それならおすすめの店がありますよ」と自信たっぷりの答えがかえってきた。餃子には目のないうるさ型の私である。どんなものが飛び出してくるか、興味津々さっそく案内してもらうことにした。

井上 理江(トラベルライター)


これが「天津馮記餃子」の外観。餃子作りにいそしむ皆さん
■安くて清潔な屋台の料理

 そこはチャイナタウンの一角、ピープルズパークセンターの一階にあるホーカーセンター(屋台村)だった。シンガポールは屋台の街である。何しろ政府の規制が厳しいので、衛生面もきっちり管理されており、安心して観光客も地元民も屋台での食事が楽しめるのが有り難い。
 同じホーカーセンターでも、目抜き通りのオーチャードロード近辺では観光客らしき人々を多く見かけるが、ここはローカルご用達。ただでさえ安い屋台だが、ここはさらに安い。1皿2〜3シンガポールドル(約130〜200円)程度というのが当たり前。麺屋、チャーシュー飯屋などの小さな店がずらりと並び、その中央に丸いテーブルがいくつも並んでいる。ケネスさんはずんずんと奥に入っていき、そして、一つの屋台を示した。「天津馮記餃子」(フォンキー)という名前で一見、何の変哲もない店である。
 メニューは4種類。名物の水餃子は1皿で8ドルとここではやや高めだが、皿が大きいので2人で1皿食べればお腹いっぱいになる。皮は艶やかでぷりぷりとしており、具はニラと白菜と豚肉とシンプルだが何とも旨味があり、なるほど、確かにこれはうまい。わざわざ足を運ぶ価値は十分ある。餃子が入ったキャベツとかき卵のスープもやさしい味で、つるつるとお腹に入っていく。ほかにジャージャー麺と焼き餃子があり、そちらも食べたかったが、さすがにお腹がいっぱいだったので我慢した。


メニューは4種類。写真を指させばオーダーできる
■ホームページまで持っている屋台も

 わたしは記念にと思い、店の前に行ってカメラを構え何枚か写真を撮った。すると、主人らしき人が気づいて何やら大声を出して外に出てきた。結構こわい顔である。写真を撮る前に一言断るべきだったのだが、店員さんが皆一心不乱に餃子を作っていたので、邪魔するのも悪いと思いついつい声をかけずにシャッターを押したのが悪かった、、、。わたしは覚悟を決めて「ごめんなさい、ごめんなさい」とぴょこぴょこ頭を下げて謝った。
 するとくだんのご主人はこわい顔のまま、「ノー、ノー」と言いながら近づいてきて、何かを手渡そうとする。それは名刺だった。「写真はどんどん撮ってください。うちの店を日本の友達にどんどん宣伝してくれ、と言ってます」と、いつの間にかケネスさんがそばに来て、彼の話す中国語を通訳してくれる。なんだ、そうだったのか。怒ってなくてよかった・・・。
 しかし、それにしても、屋台で名刺を作っている店は珍しい。電話すらない屋台もザラだというのに、よく見るとホームページとメールアドレスまであるではないか。さすが電脳大国シンガポール!「ホームページもあるのね」と主人に言うと、彼は「イエス、イエス。ユーマストシー」とこわい顔にようやく笑みを浮かべて、得意げに答えた。


店主からもらった名刺。デザインもなかなか洗練されている
■マンション住まいの屋台富豪も

 シンガポールでは共働きも多く、ローカルの人々も屋台で食事をする機会が多い。かなりの財をなして豪邸に住んでいる屋台の店主も結構多いと聞く。ケネスさんは「僕のおじさんにも屋台やってる人いますよ。マンションの部屋2つ持ってて車はベンツ、時計はロレックス」とわかりやすいたとえで説明してくれたので、屋台富豪は本当の話なのだと納得。質素な店の外観によらず、あの店主も大金持ちなのかもしれない。
 帰国してさっそくホームページを見たところ、これまた丁寧に作られていてびっくり。私が会った店主はあまり英語が話せなかったが、ホームページはきっちり英語で作られている。メニューから店の歴史(1948年に創業した歴史ある店である)、はては店にやってきたお客さんのスナップ写真まであって、なかなか楽しいページとなっている。アドレスはhttp://www.fongkee.com。シンガポールへ行く機会があったら、ぜひ出発前にこのホームページを覗き、この店の水餃子を味わってみて欲しい。


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