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トラベルライターによるホットな現地情報
<No.6>ミクロネシア・ポナペ


ミクロネシアの果ての小さな楽園ポナペ
「ザ・ヴィレッジ」での休日

 ポンペイという島をご存知だろうか。日本ではポナペという名前の方が一般的だが、現地の言葉に則ったポンペイが正式な名称だ。この小さな島へはグアムから週5便、コンチネンタル航空が運航しており、トラック経由で4時間半ほど。昨年の初め、この島のザ・ヴィレッジというホテルに2泊滞在したのだが、忘れがたい思い出となった。

井上理江 (トラベルライター)


海に面したバーレストランのあずまや。
猫も気持ちよさそうだ。
熱帯の花々が咲き乱れる別天地

 空港から車で20分、海を見ながらくねくねと曲がる道路を走り、途中からひたすら山の中の未舗装の道を登り、いったいどこにホテルがあるのだろうと不安になる頃、レセプションのあるメイン棟に到着する。高台から海を望むオープンエアの建物は美しい熱帯の花々に囲まれ、天井にはのんびりファンが回っている。そこに漂う何とも居心地のよい空気にふれた途端、一気に身体から力が抜けていくのがわかった。

 客室は1棟1棟が離れの高床式のコテージスタイル。アメリカ人オーナーのアーサー夫妻が1970年代にこの島にある材料と建築手法を用いて7年かけて作り上げたという。屋根はアイボリーナッツというヤシやバナナより丈夫な木の葉でふいており、雨にも風にもよく耐える。断崖絶壁の上なので、ほとんどのコテージから海が見える。コテージとコテージの間はパパイヤやハイビスカス、巨大なシダなど熱帯の木々に囲まれ、森の中の一軒家に滞在しているようだ。

 客室は電話もテレビもエアコンもなく、シンプルなつくりだが、シャワールーム(温水の真水が出る)と洗面所、トイレはこくのある飴色の木を使って丁寧に作られ、ナチュラルで暖かい雰囲気。目の積んだ真っ白いシーツがかけられたウォーターベッドの上には白い蚊帳があり、夜はランプを灯してこの中で眠る。窓は網戸だけでガラスは入っていないので、ざわざわと風に揺れる葉の音、にわか雨、鳥のはばたきや虫の鳴き声、いろいろな音が耳元に迫り、森の真ん中に置かれたベッドで寝ているような気持ちになる。これはちょっとほかのリゾートでは味わえない不思議な感覚だ。昼は昼で、窓から見える海を見ながらぼよんぼよんと揺れるウォーターベッドに埋もれるように横たわっていると、なんだか波間に漂うクラゲの気分になってきて、いつの間にか心地よく眠ってしまう。


熱帯の植物に囲まれたコテージ
何もない何もしないことの心地よさ

 メイン棟には、海を見渡すバーレストランがあり、ここで朝から夜まで食事がとれる。料理はいわゆるアメリカンスタイルでディナーは魚や肉のグリルがメイン。朝食で食べたマサラという揚げたてのポルトガル風ドーナツもおいしかった。レセプションの脇にはゲストがみやげがわりに置いていった本が本棚に並んでおり、部屋に持ち帰って自由に読める。古いナショナル・ジオグラフィックや、日本の文庫本も結構あって嬉しい。

 バーレストランから海に向かって突き出したあずまやのチェアでのんびりビールを飲みながら、本を読むのもいい気分だった。

 このリゾートには猫や犬も同居していて、あちこちで気持ちよさそうに昼寝しているのを見かけた。わたしがコテージの建つ崖の下にある小さなビーチに降りていった時は、サーシという犬がついてきて、水遊びをしている間、ライフガードのように砂浜にうずくまってずっと見ていてくれた。夕食時のレストランで、いつのまにかテーブルの脚に寄り添うように座り、可愛らしい顔で見上げる猫もいて、ついつい肉や魚のかけらをあげてしまったものだ。

このベッドでの昼寝は最高。お試しあれ!

 1年前に泊まった時は1泊1室1万円くらいだった。今はもう少し値上がりしているかもしれない。日本のパノラマインターナショナル(tel:3403-3331)という旅行会社で予約を受け付けている。最も混むのは8月で料金も少し上がり、2ヶ月前から予約した方が確実だ。ちなみにこの島には台風は来ないそうだ。

 ダイビングのメッカとして知られるこの島で、わたしはまったくダイビングをせずに過ごした。考えてみれば特に何もしていないのだが、そこで過ごした時間を思い返すと、豊かな気持ちになる。いろいろなリゾートホテルに泊まってきたが、ここは特別だ。あれほど心の底からリラックスできる場所はなかった、と正直に告白しよう。近いうちに是非とも再び、訪れてみたい。そんなことがいつまでも心に残るリゾートである。



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