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トラベルライターによるホットな現地情報
<No.8> フランス・ブルゴーニュ
運河を航行する「ラ・レヌ・ペドーク」号
(La Reine Pedauque)は定員僅か12名。
時速6kmの旅
ブルゴーニュ運河を旅して
フランスはその殆どの国土がなだらかな肥沃な大地におおわれているため、その町々や村々が豊かな水をたたえた川と運河によって結ばれている。彼らはその運河を名付けて「真水の道」と呼んでいる。フランスの運河の全長は約4800kmといわれ、地図を見ればその四通八達の様がよく分かる。その大半は300年前から100年前にかけて掘削されたもので、そのいわれをひもどけば必ずフランスの歴史に結びつく。のんびりとちょっと知的なヨーロッパの旅をしたい方々向けに、運河で巡るヨーロッパの旅の魅力を紹介しよう。
今村茂雄 (日本旅行作家協会会員・学校法人会員)
のどかな水門小屋の風景
旅はパリのリヨン駅のレストランからはじまった
フランスの川はおおむね古く蛇行しきっているので,内陸の細い川を水運に利用すると余りにも時間がかかり過ぎる。ために直線的な運河を掘って川と川とを結び水運に利する方法が古くから考えられていた。思い立って10年前にそのひとつであるブルゴーニュ運河に魅せられて以来、南運河、中央運河、ニヴェルネ運河など幾つかの運河を旅して回ることになった。その中でもっとも豪華で印象的だったのがブルゴーニュの船旅であった。
パリから南東に約 400km、なだらかな起伏が広がる田園地帯のあちこちに白壁と赤い屋根が特徴の昔ながらの集落が点在している。ブルゴーニュはフランス人の食料庫であり、古くから地中海と大西洋とを結ぶ交通の要衝でもある。ブルゴーニュ公国の首都であったディジョンを中心に南につづくコート・ドール(黄金の丘)はフランス人の酒蔵でもある。いたる所に古城や寺院、城跡などが昔ながらの姿で点在している。
ブルゴーニュへの運河の旅は実はパリのリヨン駅の2階、かの有名なレストラン「トラン・ブルー」(ブルートレイン)から始まった。かつてオリエンタル・エクスプレスに乗りこむ紳士淑女が、艶やかさを競い出発の杯を挙げた豪華レストランである。ここで小説「白鯨」のエイハブ船長を思わせるような白髭の老紳士と落ち合うことから、旅ははじまった。まことにフランス的なしゃれた出発である。
ス
水門の開閉は子供達の仕事だ
50qを6泊7日で航行
パリよりTGVで約1時間半、時速 260kmの快適な旅である。スペースは新幹線の1倍半はあるから快適さはJRの比ではない。芥子(からし)の街、デジョンに着き高地に入ること車で約1時間、ヴァンドネス・アン・オーソワ ( Vandenesse en Auxois )が船旅の出発点であった。
出発地点での乗客は僅か3名、途中から少しずつ客が増えてくるとのことだったが迎えるクルーは5名である。約 260トンの超デラックス・ホテルクルーザー(定員12名)の船名は「ラ・レヌ・ペド-ク」(la Reine Pedauque : ぺドーク女王)とある。有名なワイン会社の商号と同一である。よって同社名の銘醸ワインが常に供されるのは呑み助にとってまことに有難い次第であった。
船の建造は1922年といささかご老体ではあるが、それを全く感じさせない改装ぶりで、船室には大理石(もどき?)の浴槽さえしつらえてある。
生活感がそのまま伝わってくる
水門小屋のおばさん
出発点よりデジョンまで約50kmである。満々たる水をたたえた運河を6泊7日かけての川下りはまことに贅沢な旅となった。運河は時速6kmに制限されているから本当に滑るがごとく航行し、しかも夜間は航行禁止となる。起点と終点との標高差が 137mあるので途中46ヵ所の水門によって船の上下が調整される。それぞれの水門は水門小屋の家族によって管理され、すべてが100年以上の歴史を持っていて、昔ながらの梃子で開閉される方式である。水門の開閉は何時見ても飽きることを知らない。多くの場合はカミさんや子供の仕事であり、主人の姿を見ることはまれである。一軒一軒の水門小屋の家族はそれぞれに個性豊かな風格を持っている。船長(37才の女性でその綱さばきは絶妙であった)との会話の端々にもそれが読み取れる。
自転車やミニバスで周囲の町々を散策
静かな森と牧場の中を船は滑るように静かにそして優雅に進む。途中で船から降りて船とともに歩き、船に積込まれている自転車を利用して運河沿いの小さな町を訪れてはまた戻る。それがまた楽しい。時にはミニバスで周囲の由緒深いロマネスク寺院や古跡を訪れる。朝もやの立ちこめる川面を通して見る深い森の色は何にも譬えようがない。手に取れるほどの距離にある景色を賞でつつ田園の中をゆっくり進む船旅は、同じ船旅でも大海原を往く巨船のそれとは全く違う。
「真水の道」はどこまでも
昔は両岸で馬が船を引っ張っていた
運河のひとつもないわれわれ日本人にとって「運河の旅」は大きなインパクトを与える。数年前に体験した北欧のヨ−タ運河の旅では、3日目の朝に十数人の日本人乗客が余りの退屈さに全員いなくなってしまった。
であるが故に、この「静かなる真水の道」の旅行を通じて、現代日本人の旅への考え方や「旅とは一体何なのか」をまたここでもつくづくと考えさせられることになった。私の趣味の欄から「運河の旅」という活字はなかなかに消えそうもない。
なお、2000年の運航については目下予約受付中。興味のある人は下記メールに問い合わせてみるとよい。
info@chateau-la-chassagne.de
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