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 香港には2つの暦がある。太陽暦と中国古来の旧暦である。香港の人達はその、まるで異なった2つの暦をうまく使い分けながら両立させている。太陽暦による西欧風の生活方式を100%受け入れながら、一方で旧暦による先祖伝来の中国のしきたりとか祭事、因習などをかたくなに守る二面的な生活をしているのである。

 英国は植民地香港に旧暦を捨てさせ、太陽暦を押しつけるようなことはしなかった。むしろ、旧暦による中国の習慣を尊重し、自ら馴染んでいったのである。 事実、香港に住むすべての人達にとって、例えば、「恭喜発財」(コンヘイファッチョイ)といいながら祝うお正月は旧正月、つまり旧暦によるお正月で、太陽暦の1月1日は単に年の最初の月の最初の日でしかないのである。

 もっとも、太陽暦に生きる「よそ者」達は、12月31日の大晦日には行く年を送るドンチャン騒ぎをしてうさを晴らし、また、たまたまビクトリア・ハーバーに寄港していて新年を迎えることになった外国の船舶は、1月1日の午前零時には一斉に汽笛を鳴らして来る年を祝う。

 しかし、土地の人達は、西欧人もふくめて、みな、1月の最初の日などにはあまり感慨を抱くことなく、きたるべき旧暦による「本当のお正月」の休日を心待ちにしているのである。

 このような西欧と中国双方の伝統の共存と融和は、観光的にも面白い魅力をもたらしている。どっちつかずのもの、つまり、西欧的なものと中国的なものが化合して、そのどちらにも属さない1つの異質なものが育ってしまうことなく、本物の英国的西欧と純正中国が混合しながら両立し、香港ならではの魅力を生み出しているのである。


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