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★私見 その6・・「新生香港」の強力な持ち札と更なる飛躍の可能性

 さて、「新生香港」は、中長期的にみて、観光促進上有効と思われる多くの新しい持ち札を手にすることになる。ここにその一部を挙げてみる。

 先ず、ランタオ島の北のチェックラップコックに新しく完成するアジアのハブ空港ともいえる新国際空港の開港がある(1998年4月)。

 近代的な空港の設備そのものも魅力だが、その開港に伴う新しい交通アクセスがある。チムサアチョイまで18分、香港島のセントラルまで23分という空港鉄道の利便性、高速性もさることながら、空港鉄道と高速道路兼用の世界最長の吊橋は香港の新しい「売り物」となろう。そこからの、あるいはそれをビクトリア・ピークなどから俯瞰する景観は、昼といはず、夜といはず観光客を魅了する香港の新しい顔になることは間違いない。

 カイタック(啓徳)旧国際空港跡地も、その周囲は埋め立てられ、香港最後の広大な敷地が造成される。香港の中の新しい都市として、そこにはホテル、ビジネス・センター、ショッピング街、プレイグランドなどが建設される。また万国博覧会もその敷地で開催される筈である。また、そこに出現するであろう新しい摩天楼群は香港の夜景に一段と豪華な輝きをもたらすことであろう。

 新空港建設に伴って、もう一つ新しい都市が生まれる。それはチェックラップコック新国際空港を目の前にするトンチュン(東涌)(ランタオ島)近辺の大開発である。そこには主として空港施設関係で働く人達のための住宅、ホテル、それに、オフィス街、商店街、公園、海岸に沿ったプロムナードなどが建設される予定である。もともとたった1,000人ぐらいの人が住んでいた小さな村だったが、既に人口は20,000になっており、空港が開港する1998年の4月には35,000人に膨れ上がっていることであろう。

 香港の返還式が行われた国際会議場(HKCEC)は香港の新しい名所となることは確実である。単に観光客が見物に訪れるというだけではなく、そこを利用する大小のコンベンションや各種産業展示会など、目白押しの大盛況が約束されている。

 その他、新界のシャテイン(沙田)に水上スポーツ専用の競技施設を作ろうという計画もあるし、チンマ地域にはユニバーサルスタジオに似た映画都市を建設しようという話もある。

 また、既に開通している、京九鉄道の北京ー九竜、上海ー九竜の直通列車は香港の中国に向かって開いたランド・ゲートウエイとしての新たな地歩を固めることになる。航空機や船舶を利用した中国観光のゲートウエイとしての香港が今や北京や上海と長距離直通列車で結ばれる訳で、中国への往復に必ず経由したくなるような魅力ある「スーパー・ゲートウエイ香港」を目指すことこそ香港観光を大きく飛躍させることになろう。

 さらにいえば、中国の国際観光の近代化に香港として大いに手を貸し、その促進に努めねばならない。中国の観光があらゆる意味で国際的に一流レベルにまで成長し繁栄すれば、香港観光も同時に栄えることになる。中国にとって、その道の頼りになる先輩としての香港の存在は極めて大きい筈である。

 次に、忘れてならないのは香港の新しい開発に伴い一流ホテルが続々とオープンすることである。英国植民地時代から培われてきた西欧風の本格的ホテル・サービスは必ずや香港での滞在を十分に満足させる影の立て役者となろう。

 さらに、香港の魅力を代表する大きな柱として日本人観光客のイメージに何十年もの長期にわたり広く、深く、根を下ろしている『食』特に中国料理とショッピングの魅力がある。これらは現在すでに輝いている香港の大きな「売り物」なのだが、その双方の強力な磁力は容易には衰えを見せず、共に将来にわたり香港の大きな観光誘致力として作用し続けることであろう。特に「スーパー・ゲートウエイ香港」にとっては最も条件にかなった格好の核的魅力となろう。

 さて、最後になったが、中国広東省旅遊局と共同で進めている香港周辺の地域観光開発がある。具体的には、珠江(パール・リバー)河口の3つの宝石とよばれている、香港、マカオ、広州が囲むデルタ地帯、『珠江デルタ』の観光開発促進である。すでに動きだしているが、国際観光の分野で経験豊富な香港観光業界のかかわりは必須で、香港はその中心的存在として積極的にその促進に努めるべきであろう。

 このように「新生香港」の『裏』の舞台では新しい観光素材を織り込んだ香港ならではの多彩な魅力が際限なく拡大を続けているばかりではなく、更に大きな飛躍をもたらす可能性が満ちあふれているのである。

 先に述べたように、それらをどう束ねてブームにもっていくかは、期待に弾む楽しい課題ではある。



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