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中国の郷土料理を楽しむ

上海料理

 上海料理は揚子江流域を代表する料理である。

 上海は昔から貿易港として発展したところで、料理にも洋風の味付けなど、西洋の影響が多分に入っている。

 一般的に味は濃く、また甘味も強い。盛りつけも華やかで、調味料には味噌よりも醤油が多く使われる。上海料理のレストランのメニューには、しばしば他の地方の料理も入り込んでいて、ちょっと惑わされることがある。また、揚子江の南の浙江省紹興でとれる紹興酒を始め、優れた醸造酒が多く、上海料理の食卓をいっそう楽しませてくれる。

 上海料理で有名なのは、あの上海蟹である。

 珍味中の珍味だが、旬の期間は短い。大体、秋から冬にかけて楽しめるが、厳密にいえば、卵をもった雌が9月頃、雄が10月頃が食べ頃だというが、いずれにしても、9、10のたった2カ月しか楽しめないのが残念である。日本の食通をもって任じる人々も、この時期を狙って香港に押し寄せている。この時期を外すと、たとえ上海蟹にお目にかかれても、てきめんにおいしくなくなるから不思議である。

 この蟹は、以前はその名が示す通り、上海がある揚子江の河口でとれたが、現在は乱獲がたたり、殆ど全部養殖ものである。

 中国では文字どおり河蟹、又は、毛が生えているから毛蟹、香港では大閘蟹とも呼ばれている。

 レストランによっては、蟹を料理前に選ばせてくれるところもある。もちろん大きければ大きいほど値段は高い。ただ、雌と雄とでは卵があるなしだけでなく、味も微妙に違うので、できたら両方を試してみたい。

 この蟹は酒ともよく合う。しかし、先に述べたように酒は土地の紹興酒に限る。

 食べる時、甲羅の中身は熱いうちに食べ、脚とかハサミはむしろ冷まして食べた方が風味がでるらしい。

 脚の部分を食べる時、ちょっとした要領を心得ていないと、旨そうな脚をあちこちに無駄に潰しながら苦労して少しずつ身をほじくりだすことになる。こんな悪戦苦闘を続けていては、一口と一口の間に時間がかかり過ぎて食べた気がしないものである。一回り小さい脚をそのまま使って、適当な大きさの脚の殻に差し込み、トコロテン方式で身を押し出すのがコツだが、もちろん、太い脚はそんな手間をかけなくても、2つに割って身が出せるものもある。いずれにしても、ウエイターに要領を尋ねると親切に教えてくれる。


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