どうなる?香港観光

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気になるマーケティングの問題点


 香港を代表する魅力として広く知られている「ショッピング」とか「グルメ」というような市場機会の高い売り物にスポットライトを当てながら観光誘致を計るという常套的なやり方ではなく、観光素材の『多様性』、つまり、特定の観光素材を売るのではなく、多種多様な魅力があふれているという現象を、「ワンダーランド」という名の下に売り物にしていこうという、このマーケティング戦略の転換は香港だからこそ可能な、極めてダイナミックなものだといえる。しかし、このユニークなマーケティングにも、多少気になる点がなきにしもあらずである。

 私は掛け値なしに香港の観光的魅力は底なしだと思う。すべての人を魅了する何かがある。いつ訪れても何回行っても、また、何処を歩いても、必ずトキメク何かに出くわす。ありとあらゆる楽しみのルツボが香港だとも思う。

 確かに「ショッピング」や「グルメ」だけが香港の魅力ではない。香港はまさにトキメキがとまらない不思議な街、「ワンダーランド」なのである。香港観光協会はこの「ワンダーランド」を形成する要素として、前述の通り、極めて控えめに9つの観光素材をあげているが、香港の魅力はその9つに限定できるほど単純なものではない。

 しかし、先にも触れたが、市場に浸透してるイメージとなると話は別である。香港の魅力は極めて簡単に割り切られ、一般的には「ショッピング」と「グルメ」(それに夜景)に集約されている。そんなイメージが何十年も続いているのである。

 最近、香港では中小の小売店から大店舗までみな家賃の高騰に苦しんでいる。それが商品の値段にはねかえり、昔ほど安くはなくなっている。百貨店なども一層のリストラを迫られ、人員の削減や閉店の危機に追い込まれている。レストランにしても悩みは同じである。

 しかし、香港に生活力旺盛でかつ食通のあの香港の人々がいる限り、「ショッピング」や「グルメ」は外からの訪問者にとっては大きな魅力であり続け、これから先も、香港のアトラクション・イメージはいささかも変わることはないであろう。

 「香港に行った」といえば、例外なく相手から「何を買ってきましたか?」という言葉が返ってくる。このような香港が、魅力の『多様性』だけを訴え続けていくことに何か不自然さを感じるのである。多様な魅力の中にはもちろん「ショッピング」も「グルメ」も含まれるのだが、あえて『よろずや』という看板を掲げ、陳列棚に並べられた商品の豊富さで客を引きつけようとするところに不安を感じるのである。

 「イメージがショッピングとグルメに偏重しすぎているからこそ『多様性』を強調する必要があるのだ・・・」

 「『多様性』を売ることによって香港観光の対象市場を拡大することができ、ひいてはその体質を全方位型に強化することができる。これからは『何でもある香港』を目玉にしないと生きていけないのだ・・・」と自らを説得するが、もう1人の自分は、「『多様性』を宣伝すればするほど香港観光の魅力が拡散され、誘致力としての核が見えにくくなり、香港観光のアンデンティティが失われるのでは・・・?」 とブツブツつぶやくのである。


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