香港ワンダー・コラム

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董建華(TUNG Chee Hwa)初代行政長官に期待する


 中国の民主化運動の指導者、王丹氏が1996年10月30日の初公判で懲役11年、政治権利剥奪2年の有罪判決が言い渡された。罪状は国家転覆陰謀罪であった。
王氏は直ちに北京高級法院に上訴したが11月15日上訴が棄却され刑が確定した。

 王氏は1989年の天安門事件にかかわり1991年に反革命宣伝扇動罪で懲役4年の判決を受けたが、しかし後に仮釈放されている。
判決によると仮釈放後も政府を批判する論文を香港や台湾の新聞、雑誌などに数多く発表し、しかも外国の反中国組織の資金援助を受けながら国家転覆を計ったというのである。

 天安門事件の懲役4年という判決に比べると、今度の判決は非常に厳しいものがあり、民主化運動を煽る「言論」をこの際特に厳しく抑圧しようとする中国の姿勢が現れている。

 中国は、実は、「言論の自由」を基本法で保証している。しかし、その「自由」の範囲は中国主導で決められ、その限度を越える自由はない。
つまり、「自由」にも中国が決めた枠がはめられており、残念ながら本来の意味での「自由」ではないのである。

 英国の統治下で報道・言論の自由に恵まれてきた香港人にとって、返還後「言論の自由」は何処まで認められるのだろうか、ということは深刻な関心事であった。

 ところが、このたび、政府批判の「言論」が国家転覆陰謀罪に問われたのである。
その厳しい現実に、マスコミは勿論、今まであらゆるジャンルの情報の自由な収集や伝達、時には政庁批判をも含めた勝手気ままな「お喋り」に生きがいを感じていた香港の一般市民は当然大きなショックを受けた。

 香港には、いち早く香港人意識を捨て、新しい主権者中国に全面的に迎合する決心をし、自ら愛国的中国人の看板を掲げながら利口に立ち回っている急進的親中派もいれば、返還後の香港の民主主義、言論・報道・集会などの自由を身を賭して守ろうとする民主派の活動家もいる。

 この民主派の活動グループは10月30日、王氏支援デモや新華社香港支社での座り込みなどを行ってこの言論弾圧に強く抗議した。
香港の初代行政長官に親中派財閥の1人、前海運会社会長の董建華氏が選出された12月11日にも抗議デモや座り込みを行い、民主派政党の議員を始め多くの逮捕者までだした。彼等の主張は行政長官を中国主導で選ばれた「候補者」の中から選出するというやり方は民主的ではないというのである。

 さて、中国は基本法で50年間の『1国2制度』を保証していて、経済的には資本主義の下での開かれた自由な経済活動が認められている。
したがって、香港が今までどうり経済的繁栄をつずけられるお膳立てはできているのである。

 一方、政治的にはどうだろうか?
香港に、中国のリモートコントロールのない、文字どうり『港人』(香港人)による完全な自治や、香港人の自由奔放な民主行動が許されることは先ずありえない。
ということになると、中国のいう『港人治港』(香港人が香港を治める)は残念ながら外見だけの、実効性のないものになる可能性が多分にあるのである。
しかし、何者にも拘束されない完全な『港人治港』は望む方が無理かも知れない。

 香港は長年にわたり西欧の民主主義になじんできた。
そんな香港が、返還後、現政府をおびやかす反体制活動の根城になる可能性がないとはいえない。中国は、当然ながら、そうなることを最も恐れるであろう。
もし中国に批判的な民主派が香港で自由に活動することにでもなれば、反体制の火の手が香港から燎原の火のように中国全土に及び、それこそ現政府が転覆することにもなりかねないからである。

 返還後、中国は安全の保障のため、香港に住んでいるすべての反体制活動家を探しだし、身柄を確保するか、香港から追いだそうとする“かも知れない”。              
同時に、報道、言論、集会に目を光らせ、好ましくないすべての民主派活動を徹底的に弾圧する“かも知れない”。ことによると、民主化運動にとどめを刺すため、民主派をがんじがらめにする厳しい「国家転覆罪」などを立法化する“かも知れない”。     

 以上の“かも知れない”可能性は、返還後、歯車がどんどん悪い方へ回転していった場合、そんなことも起こる“かも知れない”という話である。      
しかし、いずれにしても、言論、集会の自由や人権法の扱いなど、民主化をめぐる環境は極めて厳しいものがあることは確かである。



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