香港ワンダー・コラム

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返還後の香港はこうなる

1996年12月26日発行「香港ニュース」から


 返還後何がどう変わるのか、香港観光協会は「香港ニュース」で大体次のように説明をしている。

 1997年7月1日から香港の主権は中国に返還され、香港は中華人民共和国香港特別行政区となる。しかし、中国と英国との間で合意された「基本法」に基ずき、返還後50年間は1国2制度が認められ、今の資本主義体制はそのまま継続される。個人の住居、財産も保障され、返還後といえども現在の経済的、社会的体制は変らない。

 香港には高度な自治が認められ、香港は「香港人」によって統治される。文字どうり『港人治港』である。さらにいえば、香港特別行政区の最高責任者である行政長官は香港に最低20年間の居住経験がないとその任につくことができず、また、政府各部署の長官にも最低15年の居住歴が要求される。つまり、外部から、例えば中国本国から行政長官を派遣することはありえないのである。

 香港の治安も今までどうり現在の香港警察が守ることになる。また、香港人の旅行、集会、デモの自由も認められる。特に中国から香港への入境を管理するため香港と中国大陸との境界は残さる。香港へのビザ(査証)の発給は、今までどうり香港出入国管理局が取り扱う。しかし、海外でビザを申請する場合、窓口は勿論英国大使館ではなく中国大使館になる。しかし、日本人観光客の場合は返還後でも現行どうり1ケ月以内の滞在ならばビザは不要である。 

香港の公用語だが英語も引き続き公用語として認められる。返還と同時に中国語(広東語)だけに絞られることはない。しかし、ゴルフコースや、ヨットクラブ、ジョッキークラブを始めとして多くのクラブや団体、機関の名称に付けられている『ロイヤル』は直ちに外されるだろう。『ロイヤル』には「英王立の」とか「英女王に奉仕する」とかの意味があるからである。しかし、もうすでに外されているのが実情である。

 これは香港観光協会の意見ではなく、全くの私見だが、『ロイヤル』以外にも、現在の香港には中国の立場からすると直ぐにでも変えたい道路名、地名、施設名などが無数にある。例えば、英王室の名前をとったクイーンスロード(皇后大道)、プリンスエドワードロード(太子道)、プリンセスマーガレットロード(公王道)など、また、ビクトリア女王のビクトリアを冠したビクトリア・ハーバー、ビクトリア・ピーク、ビクトリア公園、さらには、クイーンエリザベス病院、キングスパーク、、キングスカレッジ(英皇書院)、キングジョージ5世記念公園など、それに、ボッテインジャーとかネーザンなど歴代英国総督の名前をとった通りなどもある。その類いは枚挙に暇がない。   

 これらを一挙に変えれば地図やガイドブックの出版社や旅行会社はいうに及ばず、一般市民の社会生活にも大混乱が起き収拾が付かなくなる。先ず『ロイヤル』を追放し、その他の英国の名残は時間をかけて徐々に中国名に変えていこうということだろう。

 さて、「香港ニュース」にもどろう。    
香港の通貨だが、返還後も今までどうり香港ドルが米国ドルと連動する国際通貨として存続する。また、香港は今まで同様、国際金融センターとして機能し続け。貿易面でも今までどうり世界貿易機構(WTO)の一員として、その責任を果たしていくことになっている。

 以上が1996年12月26日に発行された「香港ニュース」の要旨だが、その「香港ニュース」で取り上げられなかった「その他の変貌」を次に、補足的に付け加えてみたい。

 先ず祝日である。確実に変わることが2つある。先ず、1998年から女王誕生日の祝日がなくなる。返還の年,1997年の女王誕生日は6月28日で、返還寸前の「最後の女王誕生日」となる。もう1つ、7月1日が「主権返還記念」の祝日になることは確実である。以上の他に、中国建国記念日である10月1日の国慶節も祝日となることは間違いなかろう。その他、クリスマスや復活祭なども祝日として残るのではなかろうか。

 香港にも「香港」を象徴する国旗の性格をもった『旗』があった。英国の植民地であったためユニオン・ジャックをベースに、1959年に正式に制定された獅子と竜が入った香港の紋章をいれたものであった。しかし、返還後は『香港の花』である『ハナズオウ』をあしらった「香港特別行政区旗」が制定される。

 オリンピックのような国際スポーツ大会などには香港は「中国香港」として独自のチームを編成し参加することが認められるということだが、しかし、仮に「中国香港」が優勝したとしても、掲揚される旗は『ハナズオウ』の香港の旗ではなく中国の国旗「五星紅旗」で、演奏されるのも中国の国歌ということになるらしい。

 香港のコインにはすべて表に女王クイーンエリザベス2世の横顔が入っていたが、1993年から女王の横顔に代わり、ハナズオウの花が入ったものに変わった。

 同様に、切手も変わった。香港の切手にはすべてエリザベス女王の横顔が入っていたが1997年に新しく印刷される切手からこの女王の横顔は消えることになる。面白いことに1月に販売が終了した「女王肖像切手」がなんと中国で猛烈な投機対象になっているらしい。将来、その他の『ロイヤルもの』も蒐集の対象になるかも!?

 香港は英国と同じ左側通行である。中国は右側通行。左側通行を右側通行に変えることは実際問題として不可能。しかし、中国に入る香港の車、香港に入る中国の車の往来が激しくなることは間違いない。正面衝突の事故が心配である。観光バスの事故だけは絶対にあってはならない。

 返還後も英語は広東語と並び香港の公用語として認められるのだが、最近の「英語」の退勢はかなりのものである。加えて香港政庁は来年の1998年9月から中学での教育言語はすべて広東語だけにすることに決め、3月24日その旨教育委員会に正式に通知した(毎日新聞H9/3/25)。英語で万事片付いた国際都市香港の何年か先が気にかかる。

 最後にもう一つ。「基本法」第27条で確かに言論、報道、デモ、結社の自由が認められている。しかし、第23条には国家反逆、分裂、反乱扇動、政府転覆などの禁止条項がある。「人権法」の扱いや国家反逆などの定義づけは民主派が排除されている『臨時立法会』が審議することになっている。ちょっと気にかかるところである。



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