カナダ北極圏の豪華絢爛のオーロラ

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杉田 房子

どちらを見ても氷と雪の平原



チャーチル駅とハドソンベイ号

 「カナダのオーロラは素晴らしい。初めてオーロラを見たとき感動で言葉も出なかった」と何人かの知人から聞かされ、いつかオーロラの見られるところに旅したいと思っていた。

 オーロラの見られるところといえば、カナダでもノースウエスト準州やマニトバ州の最北まで行かなければならない。かつて旅行社の知人にいくらかかるのか見積もってもらったらベラボウに高い。気楽にオーロラを見にーーとはいかなかった。ところが、数年前からカナディアン航空の系列会社が北極圏内の主要地域に就航するようになり、航空周遊券も使えるようになって、大分手の届く距離に近付いてきた。

 今年の3月、いよいよオーロラとの出会いを求めて出発することになったが、旅好きの仲間に声をかけても、ホイホイ集まってこない。「だって寒いんでしょ?オーロラは見たいけど、寒さに弱くてーーー」。結果オーロラへの情熱の高い7人で出発した。

イヌイット カリブーの毛皮の防寒服
風を通さず大変暖かかった

 オーロラの観測地として有名なのは、ノースウエスト準州の州都イエローナイフである。日本から出ているツアーは、ほとんどがここ。人口1万4000人、高層ビルの目立つ街である。ビルや住居の灯が明るすぎるとオーロラも見にくいという話もあり、私たちはイエローナイフを避け、マニトバ州の最北の町チャーチルに行くことにした。

 チャーチルは一年に夏の3カ月間かり船の航行ができない、つまり秋から初夏までは氷に被われてしまうハドソン湾に面した町である。人口は1000人ちょっとで、イヌイワト(エスキモー)が目立つが、立派な公共の建物、教会、ホテル、スーパーなど、チャーチル鉄道駅の前に並ぶ。3月は白一色に被われてしまっているので色彩的に単調だが、夏には一面に花が咲く美しい町なのだろうと想像はつく。

 チャーチルへの行き方は、カナダの西の玄関口バンクーバーまで飛び、乗り換えてマニトバ州都ウィニペックへ。それまでは東へ東へと飛んだのが、ウィニペックからは北に向かって、真白で平坦な大地の上を飛ぶ。北極圏内は、航空機が飛ぶようになって、厳寒の時にも訪れることができるようになったが、航空機がそこに住む人たちへの生活物資を積み込む貨客混合機であるため、座席の確保は早めにしっかりとしておくことが必須である。

ドームとオーロラ

 空路のほか、ウィニペックからチャーチルへは鉄道がある。1000キロを走る長距離列車ハドソンベイ号は、ウィニペックを火・木・日曜の21時55分に発車し、チャーチルには翌翌日の8時20分到着となる。所要34時間。チャーチル発は火・木・土の21時。ディーゼル機関車に電源車、荷物車、座席車、食堂車、寝台車が各1両の編成である。ハドソンベイ号の別名はオーロラトレインと名付けられているそうだが、夜が晴れていれば列車の中から、天空に舞うオーロラが見られるという。もちろん夏は白夜で太陽が沈まず明るいから、残念ながらオーロラは見られない。

 3月のチャーチルはひどく寒い。マイナス30ー40度。外出用に耐寒服に靴に手袋を借用するが、外に出ると数分で寒さに震える。夕食を済ませ、8時頃からいよいよオーロラ観測に出る。そのころになると、天の川を思わせるような薄い色のオーロラがあちこちに現れてワクワク気分。宿泊しているツンドラホテルの主人が、オーロラ観測用のドームを町はずれに造ったので、寒い思いをせずに思いきりオーロラ・ウォッチングが楽しめるのはありがたい。

犬ぞり、雪上車、スノーモビル

 このドームに3晩連続訪れたが、1日目はマアマア。2日目は時にハッとする見事なオーロラにご機嫌で空を見る。そして3日目はホテルから車に乗る前にすでに激しくといっていいほど次々に現れ、ドームい着いてからは、大感動の連続に首が痛くなるほど。3つのオーロラが一度に頭上で重なり合って見えたときなどは、底に手が届きそうなほど迫ってきて、オーロラの高度は最低でも地上60キロという科学的実施のほうが信じられない感じだった。地上の果てから他の端までアーチをかけ、形ではカーテン状あり、コロナ状あり、竜巻状あり、そうしたそれぞれで色彩と輝きが異なるうえに、そのそれぞれがまた時とともに移り変わる変貌は、夢幻というか幻妙というかーーー。あまりの寒さにカメラが動かなくなったり、フィルムが切れたりというトラブルもあった。

 チャーチルの後、さらに北上しノースウエスト準州のランキン・インレットとベイクドレイクに行ったが、チャーチルで見た最高の芸術とさえいえるオーロラには再び出会えなかった。3夜連続でオーロラに出会えたのは天気も良かったこととあわせ、ラッキーだったということになるのであろう。


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