自分の「ベストシップ」を選ぼう

このエントリーをはてなブックマークに追加
はてなブックマーク - 自分の「ベストシップ」を選ぼう
Share on Facebook
Post to Google Buzz
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip
Share on FriendFeed

上田寿美子クルーズアドバイザー
上田 寿美子さん

船旅が本格的なブームを迎えて身辺に火がついたように忙しくなった。
執筆、講演、船上でのアドバイス講座などスケジュールが次々と埋まる。その間寸時を惜しんで新船の就航や未体験のクルーズ取材で世界を飛び回る日が続く。

「旅コム」のインタビューも2カ月ぶりにようやく実現に漕ぎ着けた。僅か1時間のインタビューと言っても今の上田さんにとっては1日分にも相当する。
ひとつひとつをきっちと仕上げなければ気の済まない性分だから、徹夜をしても一生懸命、律儀に仕事をこなしてしまう。要するに、今が旬(?)の、まだ日本では数少ないクルーズアドバイザー兼クルーズライターである。その忙しい時間の合間を縫って纏めたクルーズガイドがこのほど発刊された。題して「ワンテーマ海外旅行--世界のロマンチック・クルーズ」(弘済出版社)。

両親が船旅好きなこともあって早くからクルーズを体験する機会に恵まれたのが、この道に入ることになった遠因。「飛鳥」初の世界一周クルーズに母子で参加したというクルーズ一家である。
日本のクルーズ元年と言われた平成元年に先立つこと数年前、クルーズライター兼クルーズアドバイザーとして本格的な活動を開始、89年「おせあにっく・ぐれいす」と「ふじ丸」、90年「にっぽん丸」と「おりえんと・びいなす」、そして91年「飛鳥」と日本の外航客船が続々と進水するにつれ、一部特権階級やマニアに限られていた船旅が、一挙に大衆のものとなった。船上セミナーや旅行会社主催の説明会に引っぱり出され、船旅の楽しさや楽しみ方をレクチャーする機会が年ごとに増え始めた。

「まだ高校生だった頃、両親に連れられてホーランドアメリカンのロッテルダム号で横浜/ハワイ航路に乗せて貰った時の感動はとっても強烈でした。世界一周の旅を続ける方々のきらびやかでエレガントな世界、心の篭ったもてなしがあり各種のエンターテイメントが次々と繰り広げられ、そして出会いがありドラマが生まれる。ホノルルまでの船上生活は正に夢のようでした」後に船旅を仕事にすることになる思い出のひとコマでもある。

上田寿美子 「それにしましても、クルーズが身近になりましたね。海外クルーズというとある種の誤解も含め敷居が高くて窮屈な旅の象徴とまで見られていましたが、最近はエレガントが売りものの高級クルーズから楽しさ一杯のカジュアルクルーズまで、実に多彩になってきました。すでに年間400万人もの人がクルーズを楽しむようになっている米国から比べるとまだまだこれからですが、余り構えず格式張らず、とりあえず一度船旅の世界を体験してみることをお勧めしています。この間もカーニバルというメガ・シップでカリブ海クルーズを取材して65人位の人にインタビューしてみたんですけど、ニューヨークのおまわりさんも含め8割の人が、楽しくて下船したくないと異口同音に漏らしていました。ともかく体験して、それからニーズや好みにあった自分のクルーズシップを選ぶ、船旅もそんな時代に入りました」

「飛鳥」が先鞭をつけた日本船籍による世界一周が次々と満杯になってマスコミを賑わせているが、この春からは外国のクルーズシップとしては初めてシンガポール籍の「スタークルーズ」が沖縄を基点とした定期クルーズに登場、来春には「ぱしふぃっく・びいなす」が就航するなど第2のクルーズ元年ともいうべき賑わいを見せ初めている。更にカーニバル・クルーズのアジア版ともいうべき「カーニバル・ヒュンダイ」の日本・韓国就航や7万5千トンのメガシップ「スーパーレオ」の登場など、98年から99年にかけてはアジア全体がクルーズ元年ともいうべき様相を呈し初めてきた。
そして、海の向こうではカリブを中心にした超大型船によるメガシップ競争である。

「1,400人を収容する3階吹き抜けの大劇場や高層ビルそのもののガラス張りのエレベーター。これが海の上に浮かぶ船なのか驚くような近代設備を満載した10万1千トンのカーニバル・デスティニーに代表されるファン・シップは、新しい時代の新しいお客様向けの新しい方法による船旅の提案ですね。とにかく陽気で楽しい。続いて10万5千トンのグランド・プリンセス、13万トンのイーグルとこれから西暦2000年にかけて、ディズニーを凌ぐメガシップが続々と登場して、カリブ海は生き馬の目を抜くような厳しい競争が展開されることになりそうですが、一方ではミッシェル・ルーのフランス料理で名高いエレガントなセレブリティ・クルーズ社のギャラクシーが、また違ったカリブ海クルーズを楽しませてくれるという具合で、とにかく選り取りみどり、消費者が自分の嗜好に合わせて船旅を選べるようになったのが、嬉しいですね」

船旅の選び方から船上での楽しみ方にいたるまで、臨機応変、無駄なく的確に受け答えをしてくれるのは、さすがにプロのクルーズ・アドバイザーだ。上田さんの話を聞いて船旅を体験、そのままクルーズファンになった人も多い。
「旅コム」に毎号連載している「夢とロマンのクルーズ考」は、そんな船旅への入門書でもある。

「船旅とはこんなもの。クルーズとはこういうものと決めつけず、機会があれば気楽に船のうえで何日かを過ごせたらきっと素晴らしい発見があると思います。その上でそれぞれに個性溢れる世界のクルーズシップを選び、また新たな出会いの場を拡げて行く。そんな時代がもうそこまで来ていると思うんです」

総乗客数2600人を数えた目下世界一のメガシップ「カーニバル・ディズニー」には、800人の日本人が乗り込んだ。
地球上を飛び回る上田さんの取材旅行も、これからが本番となりそうである。

(構成:高梨 洋一郎)


このページの先頭へ