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エコツーリズムに関するいくつかの解釈

エコツーリズムアドバイザー
ローリー・ルーベック



 エコツーリズムという言葉自体にはあまりとらわれることはありません。この言葉には幾つかの定義があります。

 例えば、「持続可能な観光」、「環境に責任をもつ観光」、「環境負荷の少ない旅行」等がそれです。

 要はJATAの「地球にやさしい旅人宣言」のとおり旅行地の保全についての責任であり、普通の良識と環境を大事にする心です。また訪問先の伝統文化を尊重することであり、旅行者に質の高い経験をしてもらうことです。

 エコツーリズムに対する認識も色々あります。多くのエコツーリズムと聞くと市場規模も小さく収益性も低いと思っています。環境保護団体の会員を主な対象として催行してきた生態系、野生生物、文化の研究を含む旅行等が「純粋のエコツーリズム」と言えます。エコツーリズム・コンサルタントのR.E.アシュットン氏もエコツーリズムにも色々なものがあると言っています。「純粋のエコツーリズム」とは一般的に小人数のグループで、施設の利用は最小限にして、その訪問地の自然や文化遺産にたいする負荷が殆どなく、自然保護に寄与する旅行のことですが、この範疇に入る旅行者は現在、保護地域だけを利用しているほんの一握りの人達であり、その数は年々減少しています。

 以上のことからして、保護地域や重要な自然資源を使いながらも、旅行会社が営業上の収益を求めて実施するその土地への負荷の少ない旅行は総てエコツーリズムの中に含める広義の解釈が必要になっています。観光行政に携わる政府関係者もまた、様々な形態の旅行が持つプラス・マイナス両面について十分検討する必要があります。広義に据えてみれば、環境保護に果たす役割は一層大きなものになります。


フレーザー島でのレンジャーによるエコツアーの様子


より広い見方

 エコツーリズムとは、大自然の中で自然や土地の文化に交わることを目的とし、時には旅行者行動を制限し、また啓蒙によりその自然資源を守り、保護指定地域の保全のための財政的支援に資する旅行であり、旅行が与える形態を調べ、その影響を受ける人々の情報を勘案しながら、慎重に企画・催行する旅行です。エコツーリズムは持続可能な、同時に関係するすべての企業に一定の利益と安定した収入をもたらす旅行のことです。

 エコツーリズムのかかわる問題と今後の課題点を、現在、日本で主流となっている旅行との関連においてシリーズで取り上げていきます。すでに環境問題に積極的に貢献している会社の実際の成功例等を中心に取り上げていきたいと思います。その他、調査の結果、倫理綱領、ガイドライン、無駄を省くことによる経費の削減、JATA会員会社の事例、この分野における外国の専門家の意見等も取り上げていきます。また参考になるとおもわれる情報の入手先、環境会議情報等もお知らせします。

 このシリーズは、旅行業界が倫理や環境問題について視野を広め、力者が個人志向を強める中、旅行者の環境意識をさらに高め、旅行地における環境の改善に資するとともに、エコツーリズムが新しいビジネスチャンスをもたらすものであることを確認使用とするものです。