◆ 対立から尊重へ
しかしながら、80年代の終わりから90年代初期にかけて、この状況を変えるさまざまな要素がでてきました。
90年代における著しい景気の後退により、多くの投機的開発業者がゆきづまり、建設計画は大幅に後退しました。景気後退は多くのマイナス要素を持っていますが、同時にオーストラリアの観光産業が今後どの方向へ進むべきかを考える機会を与えてくれました。
我々が行う決定は政府、産業界、それに環境運動が行う「国家環境開発計画」の推進事業によって大きな影響を受けています。我々のワーキンググループでは事業が各世代に公平にいきわたること及び生物の多様性の保護という同計画の原則を、特定の業界にどう適用するかで2年間に亘り作業をしてきました。その特定の業界のうちの一つが観光産業なのです。観光報告書の中の調査結果や勧告等が、社会的責任や環境に対する責任についての業界の考えを変える要因になっていることは言うまでもありません。
1992年6月に作成された「国家観光計画」は、環境活動家の見地からすると必ずしも完璧ではないようですが、第一の目標として自然・文化遺産の保護と共に持続可能な観光を明確にあげています。
80年代後半における行き過ぎた開発に対する環境運動と一般社会の関心の高まりが業界の反省を促し、その結果として開発のための倫理規定及びガイドラインが作られました。
オーストラリア政府観光局においても会長や役員が行うスピーチの中で環境保護とその対策の必要性に言及することが非常に多くなってきました。「オーストラリア政府観光局使命宣言」は1990年に作られたものですが、その中で「我々は訪問客に質の高い体験をしていただくこととオーストラリアのユニークな自然、文化、社会環境を守る役割を担っている」と言っています。
今は言葉が先にありますが、有力なオピニオンリーダーの言葉はいつも何らかの重要な変化をもたらすことに貢献するものです。同観光局はまた、オーストラリアの環境と遺産を楽しんでもらうために訪問者用ガイドブックを作成しました。そのガイドブックでは環境を損なわない為の簡単なガイドラインを具体的に示しています。
WWF(世界自然保護基金)のマーガレット・ヤング氏、PATA(太平洋アジア観光協会)のイアン・ケネディ氏そして私自身のような特定の個人が、多くの公園やインタビュー、それに論文などを通して、環境問題を観光業界の中での主要な関心事にまで高めるのに貢献をしていると私は考えます。
最後に、しかしとても重要なことですが、オーストラリアを訪れる旅行者は、オーストラリアの清潔で損なわれていない自然環境に接することを同国訪問の第一の動機にあげていることが、オーストラリア政府観光局による調査の結果はじめて確認されたことです。
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