「緑の丸天井」展示室 Photo: © David Brandt | まばゆさに圧倒される宝物館「緑の丸天井」 |
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ザクセン選帝侯の居城であったドレスデン城(レジデンツ城)は、城の最古の部分は16世紀に遡ると言われているが、1945年に第二次世界大戦の大空襲で一夜にして灰燼に帰した。 再建工事が完了したのは2006年のこと。現在ドレスデンを代表するバロック建築の一つとして再びその華麗な姿をあらわし、当時の栄華を偲ばせている。 現在ドレスデン城は宝物館として一般に公開されている。1階は「緑の丸天井」(写真左:© David Brandt )、2階は「新・緑の丸天井」(写真右下:© Juergen Karpinski )と呼ばれ、居室には歴代ザクセン選帝侯が収集した金銀、象牙、琥珀や珊瑚などをあしらった、文字通り目がくらむほどの宝飾品が陳列されている。その数は3000点以上に及び、とにかく膨大だ。 特に圧巻なのは1階の「緑の丸天井」だ。 宝物の展示された8つの部屋は「象牙の間」「銀の間」など宝飾品の種類によって分けられ、それぞれの部屋には壁一面にびっしり、握りこぶしほどの大きなエメラルドやルビー、水晶をあしらった彫刻、壺、グラス、櫃がずらりと並んでいる。 30センチはあろうかという大きなオウム貝や、ダチョウの卵に金銀の装飾をほどこした置物などは、大航海時代の荒波を越えて、欧州列強が次々と海へ繰り出していった人々が必至の思いで持ち帰った品々だ。特に、ダチョウの卵は当時「最高の宝の一つ」と言われる貴重な珍品で、それがいくつもあるから凄い。 こうした貴重な宝をこれほどまでに手中に収めることができた「ザクセン」の力、富、財力をまざまざと見せつけられる思いだ。 その一方、居室の一つに飾られた、焼けただれた選帝侯国諸侯の紋章や壁の焼け焦げが目を引く。これらは第二次大戦の空襲で焼け残ったものをそのまま展示したもので、輝かしい宝物とは対照的に、瓦礫の山と化した当時の街のモノクロ写真は壮絶さを持って迫ってくる。 栄華、破壊、復興。 愚かだったとしか言えない歴史を、いつまでも反芻するような気持ちにならずにはいられない。 大戦後から共産主義時代を経て自由化へ。 「アイデンティティやイデオロギーを変えるのは大変だった」と話してくれたガイドの女性の言葉が頭をよぎる。 「再建」されたのは街だけではない。 ドレスデンの街がここまで見事な復興を遂げたのは、こうした華麗な過去、文化への誇りという歴史があったからこそだと、改めて感じさせられる。 | |
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