バーンズ・サパーで幕を上げた
「ホームカミング・スコットランド 2009」
スコットランドでは、バーンズの誕生日にあたる1月25日の晩をバーンズ・ナイトと呼び、各地で晩餐会が催される。「ホームカミング・スコットランド 2009」は、このバーンズ・サパーを皮切りに幕を開けた。
このバーンズ・サパーには、いくつかの決まりごとがあるという。まずメインディッシュにはミンチ状にした羊の内臓にスパイスやハーブを加え、羊の胃袋に詰めて茹でたスコットランドの伝統料理ハギスを食べるのだが、そのハギスはバグパイプの音色に導かれてホールへと運ばれる。
次にバーンズの『ハギスのために (Address to a Haggis)』の朗読が行われた後、ハギスは切り分けられ各テーブルにサーブされる。食事を楽しんだ後には、スコッチ・ウィスキーを片手に『蛍の光(Auld Lang Syne)』などバーンズが作詞した唄を歌ったり、詩を朗読したりしながらバーンズを偲ぶ。
日本人にも馴染み深いこの『蛍の光』は、日本では一般にしみじみとする「別れの歌」と認識されているが、実は別れ際に再会を誓ったり、再会を果たした時に祝す「再会の歌」なのだ。だから、スコットランドでは輪になって隣の人と腕を交差、手を繋ぎながら‘明るく’、そして‘元気良く’歌うのが習慣となっている。
このバーンズ・サパーは毎年行われているが、バーンズ生誕250周年にあたる今年は、バーンズの生まれ故郷であるエアシャーを中心に特に盛大に行われた。
(写真:バグパイプの音色に導かれ「ハギス」が入場 © Visit Scotland / Scottish Viewpoint)
スコットランドの歴史と知を未来へ伝える
「スコットランド国立博物館」
世界屈指の高い教育水準を誇るスコットランド。
エジンバラのロイヤル・マイルの一角、チェインバーズ通り沿いにあるスコットランド国立博物館には、歴史や民俗から産業、芸能やスポーツ、最新のテクノロジーに至るまで過去から現代までの貴重な品々がコレクションされている。幼い子供から大人まで楽しめる、まさにスコットランドの歴史と知が詰まった博物館だ。
同博物館では、現在「ホームカミング・スコットランド 2009」に因み、バーンズが使用していたピストル(写真上)や愛読していた本などの展示が行われており、バーンズ愛用の品々を間近に見ることができる。場所は博物館の入口を入ってすぐ、ミュージアム・ショップの手前。
“I am ever yours, Robert Burns”
エジンバラのカッスル・ヒル(ロイヤル・マイル)の路地裏に、ひっそりと佇んでいるのが「作家博物館」(写真右)だ。博物館になっている建物そのものはバーンズとは無関係だが、ここにはロバート・バーンズはもちろんのこと、ウォルター・スコット卿、そしてロバート・ルイス・スティーブンソン(写真下)といったエジンバラが誇る作家の私物や遺稿が展示されている。
バーンズは、37年という短い生涯に数々の情熱的な詩や作詞を残しているが、同時に数多くの手紙を書いた「レター・ライター」としても有名だ。手紙を受け取った人の数は200人にもおよぶ。
作家博物館では「I am ever yours, Robert Burns」と題し、その中の8人に宛ててバーンズが書き綴った直筆の手紙を公開している。
これらの手紙からは、バーンズが持つ強さや弱さ、ユーモアな性格やまじめさといった内面だけでなく、交友関係や家族との絆、情愛といったバーンズの人生そのものが垣間見えてくる。
余談だが、1786年にバーンズが初めてエジンバラへやって来た時、この博物館のある小道の東側(バックスターズ・クローズ)にあった売春宿の上の階に下宿していたという。建物はすでに取り壊されているため見ることはできないが、この付近を散策しながら当時のバーンズに思いを馳せてみるのも良いだろう。
先に紹介した場所以外にも、クイーンズ・ストリート沿いにある「スコットランド国立肖像画美術館」などで、「ホームカミング・スコットランド」の主題を肖像画で綴る特別展が開催されている。国立肖像画美術館はこの4月中旬から10月まで改修工事が行われるが、工事期間中はインバネスやバンフ、キルマーノック、パースなどで同様の特別展が開催される予定だ。
なお、ここで紹介したイベント、および今後予定されているイベントの開催スケジュールは、「ホームカミング・スコットランド 2009」の公式ウェブサイトでチェックできる。この機会にスコットランドを訪れ、あなたにとっての「心のふるさと」を見つめ直してみてはどうだろうか。