知と創造の都・ワイマール

 ゲーテ街道の主要都市の一つであるワイマールは、人口6万4000人ほどの小さな町だ。「ドイツ古典主義の都」として世界遺産に登録されているワイマールは「知識人の巡礼地」と言われるほど、ドイツのみならず世界各国から文学、芸術、音楽など様々な分野の著名人が集まった。

 代表的な人物は、やはりゲーテ街道の主役であるゲーテであり、その招聘に応じてワイマールにやってきたシラーであろう。
街の中心にある国民劇場は、ゲーテ劇場監督のもとシラーの作品を多く上演した場所で、フランツ・リストやリヒャルト・シュトラウスも音楽監督を務めている。

 時代を遡ると、16世紀の宗教改革者ルター、楽聖バッハ、ドイツの画家クラナッハなど、文学、絵画、音楽といった様々な分野で名を成した人物がこの地を訪れ、あるいは滞在した。ドイツ人のみならず、先のリストをはじめデンマークの作家アンデルセン、ロシアの作家プーシキンもこの地を訪れている。

 2009年に創立90周年を迎える近代建築「バウハウス」もこの地で生まれた。
現在も建築大学として世界各国の学生が学ぶワイマール・バウハウス大学では、1920年代にはロシアの芸術家カンディンスキーも教鞭を取り、またパウル・クレーらとともに芸術グループ「青の四人」を結成した。このように何世紀にもわたり、挙げればきりがないほどの文学者や芸術家達がワイマールで何かを得て、そして創造しているのである。

 こうした近代学術都市・ワイマールのきっかけを築いたのが、ザクセン・ヴァイマール・アイゼナッハ公爵夫人アンナ・アマリアだ。彼女は学術・芸術を助成し、ワイマールにゲーテをはじめ詩人や哲学者を招聘した人物である。

 市内にあるアンナ・アマリア公爵夫人の図書館は、こうした学術都市の象徴とも言える場所だ。同博物館は2004年に火災で焼失したものの、修復され2007年に再開した。図書館の蔵書は、19世紀前後の欧州文学をはじめ約100万冊という。
柔らかな陽が差し込む館内には、昔の皮張り装丁の古書が天井までずらりとひしめいている。その様は圧巻で、まさにワイマールの知性の結晶かという感慨が溢れて来る。

 もう一つ、ワイマールの歴史を知る上で興味深いのが、中心部のシラー通りにある「ワイマールハウス」だ。
立体映像博物館型のアトラクションで、ゲーテの案内に沿ってワイマール発祥から近代までを辿るという趣向のものだが、何より日本語での解説も付いているので非常にわかり易い。

 だが、「ワイマールへは何も知らずに来て、ゆっくり過ごして自分の肌で感じ、それぞれが何かを持ち帰ってほしい」と関係者は言う。
ワイマールは、数時間もあれば十分に回れる小さな街。ガイドブック片手に一通り歩いた後はぱたりと本を閉じ、自分だけの「発見」を探しながら、ゆっくり散策を楽しんでみてはどうだろうか。


アンナ・アマリア図書館内部 アンナ・アマリア図書館蔵書
アンナ・アマリア図書館
通常は非公開の2階部分

ずらりと並ぶ歴史的にも
貴重な蔵書の数々

バウハウス大学 バウハウス・ミュージアム
近代建築が生まれた
バウハウス大学

バウハウス・ミュージアム

ワイマールハウス入口 ワイマールハウス展示室
ワイマールハウス入口
ゲーテが誘う
ワイマールハウス
展示室の一場面

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