ここで言論の自由という少々角張った話をしなければならない。
返還前の香港では、植民地でありながら言論、報道、出版、集会などの自由が認められ、結社やデモまでも自由で全く規制されなかった。これらの自由は「基本法」により返還後50年間は保証されている。しかし、どこまで民主的に保証されるかということになると不安がないわけではない。
気になるところは、『保証する』という条文に対応するかのように『禁止する』という条文があるということである。
基本法」で同時に禁止されているものには、国家に対する反逆はもちろん、反乱や扇動、国家機密の漏洩などがある。これらを根拠にした理由づけのもとに、先に認めた自由を規制することは容易であろう。
例えば、今まで毎年6月4日に行なっていた『香港市民支援愛国民主運動連合会』の集会などは返還後は何らかの禁止条項をあてはめて認められそうにない。しかし、万一そうなったら、集会の自由の「基本法」による保証は有名無実となる。
これは一つの例にすぎないが、英国植民地時代に認められていた言論、報道、出版集会などの自由が、中国の政治的イニシアティブにより規制され始めると、今までの、政庁に対する自由な批判、自由奔放な噂話、ゴシップなど、好き勝手に情報を流すことに慣れてきた香港の人達の精神的仰圧感はかなりのものとなる。『親中派』がのさばる中で、『反中国的』という烙印を怖がり、ストレスがたまることになる。
私は、ひたすら「基本法」に保証された自由は少なくとも50年間は阻害されないことを祈るのみである。香港の「活気あふれる生きざまの魅力」を失いたくないのである。