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 その新しい売り物の開発には余り金をかけるわけにはいかなかった。ショッピング、中国料理で十分やっている時、将来のためにもう1つ大きな売り物が必要だといってみたところで、短期決戦型の香港の投資家の気を引くことは難しかったし、香港の旅行業界にしても、日銭を稼ぐことには熱心だが、長期的展望にもとづく、さしあたりその必要性があるとも思えないような「売り物作り」には興味を示してくれそうになかった。

 という訳で、その新しい売り物の開発は、香港観光協会が独自で、頭と手と足だけを使って創りだし、軌道に乗せられるものでなければならなかったのである。その売り物は又、開発する以上は香港という土地柄にも馴染むものでなければならなかったし、さらに、その期待される必要誘致力を考えると、老若男女すべての市場を対象にでき、しかも将来にわたりニーズは落ち込むこともなく、理想的には半永久的に魅力であり続け、その上、幅広い企画による商品化が可能で、おまけに、中国への返還のも余り影響されず、また、もちろん、経済情勢の変動などにも強いものでなければならなかった。

 しかし、正直のところ、そんなものが今時香港に埋もれているとは思えなかったのは事実である。
 あれこれ思いめぐらしていたら、ふと「占い」が頭にひらめいた。

 多分、香港の風水師の話をどこかで耳にした時だと思う。「これだ!」と思わず手を叩く。これなら必要条件をどうにかカバーできるし、効果的なマーケティング戦略により、日ならずして香港を「占いのメッカ」として売り込み、定着させることはそれほど難しいことではないように思えた。私の回りには直ちに使える「占いのメッカ」を裏書きするようなPR材料も豊富だったし、すぐにも開始できる対マスコミ活動も次から次へと頭に浮かんできた。

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