客足を維持するため大規模なキャンペーンを即時実施することになった。
香港貿易発展局、香港観光協会を始めとして、関連業界や団体を総動員した『スポットライト香港ー−次ぎなる21世紀に向けて』と銘打った、1997年から2001年末にかけての5年間にわたる長期大キャンペーンである。
香港観光協会はさらに独自で『トキメキ100日間キャンペーン』を実施する。参加旅行業者を通じて、返還後の100日間の間に香港を訪れた観光客には、もれなく「来港証明書」が発行され、さらに、割引クーポンや各種イベントの詳しい情報満載のアクテイビテイ・ガイドブック、また、特別に飾り立てられたスターフェリーやアンテイーク・トラム(路面電車)の無料乗車券(夜間1時間)などがもらえるというものである。(詳細は香港観光協会に問い合わせること。東京事務所は03-5219-8288、大阪事務所は06-229-9240)
5年間にわたる『スポットライト香港』キャンペーンでは、スポーツショー、グルメの祭典、国際会議、各種の展示会、演劇、オペラ、オーケストラ、その他趣向を凝らした音楽祭、映画祭、ファッションショー、アイスショー、返還記念バーゲン、など、など、幅広いジャンルのイベントやエンターテイメントを集中的に開催し客を呼び込もうという訳である。
そのすべてが世界的レベルでのトップクラスのものばかりを選りすぐったもので、その意味で『スポットライト香港』の期間中、香港は魅力あふれるアトラクション殿堂として文字どうりスポットライトを浴び、その存在を広く世界にアピールする筈である。
という訳で、この強力な観光誘致策により返還後の落ち込みもいずれ回復し「心配ご無用!」といえそうである。
しかし、『スポットライト香港』キャンペーン中のイベントやアトラクション、つまり1連の「催し物」が、果たして日本の観光市場に効果的に作用し、総体的な香港観光の嵩上げを可能にする実効性があるか、を考えると、特に対象が日本市場である場合、気になる障害がない訳ではない。
日本人の香港観光のパターンを見ると、香港観光協会の統計資料によれば、1996年度ではパッケージツアー(包括旅行)が59%を占めている。約60%のシェアーである。しかも、このパッケージツアーは業者間の安売り競争が極めて激しく、また、「売り物」として「ショッピング」への極端な偏重がある。
ここで、参考までに日本人観光客のショッピング志向がいかに強いかを示す統計的な数字を挙げてみる。同じく香港観光協会の最新の統計資料によれば、日本人観光客の香港での一人当たりの平均消費額は円貨で約116,000円(1996年)だが、その消費の対象は、次のようになっている。
1996年 ショッピング..... 50.9 %
ホテル ....... 31.8 %
食事 ........ 8.5 %
観光ツアー ..... 4.8 %
娯楽 ........ 1.7 %
その他 ....... 2.3 %
日本人観光客のショッピング志向が抜きんでているのが分かる。この傾向は実は香港観光が戦後、市場にデビューして以来全く変わっていないのである。
最近の物価高やブランド品の人気の頭打ちなどのため、ショッピングの魅力を強力に打ち出すのにブレーキがかかっているきらいがあるが、商品の品揃えの豊富さや格安の掘り出し物など、決して魅力は衰えておらず、香港を訪れる日本人観光客のお目当ては相変わらずショッピングが
No.1であるのが現実なのである。この傾向は、香港で自由貿易市場が続く限り返還後も変わらないと思われる。