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 この計画は、しかし、埋め立てによるさらに広大な土地の造成を必要としている 過去の埋め立てによって、既にいい加減狭くなっているビクトリア・ハーバーが将来ますます狭くなることは避けられないのである。
 中国政府と香港政庁(英国政府)との間ですったもんだと、もめにもめた新空港の建設は、合意に至ったものの、費やされた時間的ロスのため完成は遂に中国返還迄には間に合わなくなってしまった。
 香港の主権が中国へ移ってから約一年も経過してからようやく開港することになったのである。この "PADS"は、1991年の7月に英国と中国との間で基本的に合意され、計画は既に実行に移されている。
 しかし、返還後の予期しない政治的、経済的情勢の如何によっては、いいかえれば、将来、中国側に何らかの政策の見直しなどがあれば、この英国主導でスタートした開発設計は100%計画どうり実施されるかどうかは全く予測できない。
 ともあれ、英中間で合意された大規模な『港湾・空港開発戦略』が現実に存在し、目下着々と前向きに工事が進捗しているのも事実である。
 ランタオ島の北のチェクラップコックに建設されている新空港はマ・ワン(馬湾)島、チン・イ(青衣)島を経由する『高速空港鉄道』と『高速道路』によって九竜、香港島と結ばれる。
 そのために建設された全長2,032メートルの世界第2の吊り橋『青馬大橋』(世界第1は3,910メートルの明石海峡大橋)は既に大きな話題になっている。
 この『高速空港鉄道』と『高速道路』の2本立の大規模空港アクセスが通る九竜半島西部は、ヤウ・マ・テイ近辺から北へ、今まであったタイフーン・シェルター(台風避難港)も潰して334ヘクタールの広大な土地が埋め立てられる。
 さらに、計画によれば、チン・イ(青衣)島と対岸の新界クワイチュン(上葵涌)一帯に、大コンテナ・ターミナルや、多目的埠頭を有する一大海運基地が建設されることになっている。完成すれば、その規模もさることながら、世界で最も効率のよい陸揚げ、積み出し港となることは間違いない。
 その一部として、ビクトリア・ハーバーの西部の要所に位置し、英軍が使用していたストーン・カッターズ・アイランドも、その西側、つまり、チン・イ(青衣)島寄りが約110ヘクタール埋め立てられる計画がある。
 その内の48ヘクタールは4つの埠頭を持つコンテナ・ターミナルとなり、残り62ヘクタールは港湾付帯施設に使用されるとのこと。チン・イ島そのものも60ヘクタールが埋め立てられ同じく4つの埠頭のコンテナ・ターミナルが建設される計画だ。
 一方、新空港が完成し不要となるカイタック(啓徳)空港の、ビクトリア・ハーバーに突き出ていた滑走路付近一帯も埋め立てられ、その一部は港湾施設となる。
 香港島側も、ションワン(上環)のマカオ行きフェリー乗り場のセントラル寄り、第1埠頭からセントラルのエクスチェンジ・スクエアー前の第7埠頭(ブレイク・ピアー)まで埋め立てられ、さらにはワンチャイの方にまで埋め立てがのびるとのこと。
 そこは『高速空港鉄道』の香港島終着駅(始発駅)や片側3車線の大海底トンネルの入口のための用地、更には新しいビル街の敷地として利用されるらしい。
 ランタオ島北岸の新空港に対面する新界のツエンムン(屯門)一帯も "PADS”の一環として、珠江デルタ地域を視野にいれた港湾開発が行われる計画もある。
 港湾の新開発にともない、将来の船舶の大型化傾向に配慮しながら、大型コンテナ船、大型貨物船の水路確保のため、ビクトリア・ハーバーの航路が大々的に浚渫されるのは勿論である。

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