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地味な暮らしとアンテナ付き白黒テレビ


 先ず、イギリスと聞いて連想するのは紅茶、王室、紳士と淑女、そしていくつかの英国ブランドといったところか。いずれにしても高級、優雅なイメージである。ロンドン郊外にヴィクトリア調の邸宅を構え、オックスブリッジ出身の紳士の子息はもちろんボーディングスクールに通う。乗馬を楽しんだ週末の夕方にはアフタヌーンティを嗜む…。

 しかし、である。イギリス3年半ほど暮らしたが、私はそんな生活を地で行っているイギリス人にはほとんどお目にかかったことはない。ロンドンの街を歩いている人の格好は非常に地味、彼等の普段の生活もその外見が示すように実に質素である。レストランへはめったに行かず、パブで飲んでも日本の居酒屋のように食べ物はないから(ピーナツをつまみにする程度)お金も使わない。(ビールを2杯飲んでも3ポンド程度)。その後クラブに繰り出し、飲み物代を入れても大体6〜10ポンド程度の出費で済む。年配の人もめったにミュージカルや観劇には出かけない(日本より価格が安いにもかかわらず、何年に一度といった頻度らしい)。

 家庭では未だに白黒テレビが普通に見られていたりする。例えば私の友人のホームステイ先。父親がロイズ保険会社に勤め、母親は古着屋を営み、3人の子供は皆ボ−ディングスク−ルに行っているロンドンの高級住宅街フルハムの家で彼女の部屋にあったテレビは14型の白黒だった。しかしテレビがあるだけマシで、ホームステイ先の家で自分の部屋にテレビがあるなんてラッキーな方。一人暮しの社会人、私の知人のギャラリー勤務34歳は14型白黒テレビ(しかもアンテナがテレビの上に乗っている)しかもっていなかった。こんな例はめずらしくない。

 テレビがこういった調子なので、他のオ−ディオ類もしかり。ミニコンポなんてたぶん今の日本の若者で持ってない人は珍しいと思うが、イギリスでは持ってる方が珍しい。家族は別として、一人暮らしの若者は大抵ラジカセで間に合わせている。しかも非常にシンプルなものが主流である。電気製品が売られている店を覗いてみると、「オートストップ」機能付きという宣伝文句が付けられたラジカセがある。どんな機能かと思えば何のことはない、テープが終わった時勝手に再生スイッチが戻る、という当り前の機能。ということは、それがないものも未だに新製品として販売されているのだ。

  
アンテナ付きテレビのある部屋 散らかった部屋。
   彼はCDというものを持っていない。


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