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素顔の英国・Everyday People

<その2>

British Food


 今回はイギリス人の食生活について書く。あの有名なイギリスの伝統、アフタヌーンティーがごくごく一部の上流階級だけが嗜むものであることを、実は私たちは知らない。庶民は家でスーパーマーケットで買ったティーパックの紅茶をミルクを入れて、暇があるごとに飲むのが彼等のティータイムなのである。さて、彼らが普段何を食べているのか、また庶民が利用するテイクアウトの店にはどんなものがあるのかを紹介します。


ロンドン・カムデンタウンにあるフラットのキッチン


料理を知らないロンドナー 

 イギリスではレストランは当たりはずれがあるので、店は選んで入れ、というガイドブックの言葉は本当である。そしてイギリスに来る他のヨーロッパ人がまずがっかりするのがそのパンのまずさ。ベーカリーは選んで買わないとならない。うっかりあまり繁盛してないベーカリーに入ろうものなら外はカチカチ、中はパサパサといったパンを買うはめになってしまう。
 だいたい「グルメ」という概念がイギリスにはないのだと思う。イギリス人は働くために食べ、フランス人は食べるために働くというがまさにその通り。安い、新鮮、健康によいくらいがイギリス人の食材を選ぶ基準なのではないだろうか。平均的な一日の食事を紹介すると、朝はコーンフレーク、昼はサンドイッチとジュース、クリスプス(ポテトチップス)、そして夜は魚か肉をメイン(たいてい冷凍食品のフィンガーチップスという魚フライ)に茹で野菜(茹ですぎで味はない)とポテト(たいていフレンチフライ)の付け合わせといったところだ。毎日代り映えしないこの食事を文句もいわず食べている。洋食に飽きたから今日は和食か中華、なんていう選択はもちろん、ない。
 「私は料理できるのよ。」と話す友人はいつも冷凍食品のフィンガーチップスかハンバーグにフレンチフライを温め直しているだけで、私は「cook」の意味を考え直さざるを得なかった。学生や若いビジネスマンはお金がないのであまり外食はしない。さらに保守的な国民性が輪をかけ、エスニック料理に自ら進んで手を出すなど食べ物について冒険はしない。(ただしベジタリアンとゲイは例外で、彼らには健康と食の快楽を追及するあくなき欲望がある)。
 イギリスの料理がまずいのは、家庭がないからでなないだろうか。弁護のためにいっておくと、今でも地方の家庭の料理はおいしい。昔ながらのレシピに基づいた家庭の味がある。ただロンドンなど都会の人々は忙しく、料理をしない。ロンドンに実家があっても母親も働いているなど、忙しく料理に手間をかけている暇がないのだ。そういう母に育てられた子供は料理を知らない。家族から独立した若者がいる一方、またロンドンには一人暮しの老人も多い。家族での団欒がないのが食事に重きをおかない理由かな、と思ったりする。 
 最近(というか今ごろになって)日本食が流行だし、「わがまま」なんていう日本のビールメーカーがスポンサーについた日本食レストランが流行っている。これがはっきりいってまずい。店内もまるで学食、社食といった趣で、早さと安さだけが取り柄のような店にもかかわらず、連日列ができている。日本人はいない。いわゆる日本人が調理や給仕に携わる正統派(?)日本食レストランとは全く異なるものなのだが、これがロンドンの情報誌『タイムアウト』でベストレストランとやらに選ばれてしまうのだから、イギリス人の味覚がわかろうというもの。でも日本人駐在員が接待に使うような超高級ジャパニーズレストランより、庶民的な日本を伝えてるのかも。

 
庶民の胃袋を担うスーパーマーケット こんな風にちゃんと料理する人は珍しい



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