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 トウールからポアティエを経てボルドーへ

トゥール/オールドタウン

 トウールからポアティエへの道は平で、7月にはヒマワリ畑が広がっています。この平野で732年トウール・ポアティエの戦いが行われ、イスラムの進撃が食い止められました。サン・チャゴへの巡礼はそれ以後のイスラムとの戦いに深く関わった巡礼です。
 ポアティエではこの街の守護聖人にちなんだサンティレール・ル・グラン教会に詣出るよう、”巡礼の案内”は指示しています。4世紀に建てられたサンジャン礼拝堂はフランスで最も古い教会の一つです。その他ノートルダム・グランド教会、サンピエール大聖堂など古い遺跡の多い観光都市です。
 しかしこの街が日本で有名になったのは、数年前に”すべての日本製家電製品の通関をポアティエで行う”とフランス政府が決定したためです。つまり対イスラム戦ならぬ対日戦の火蓋を732年の故事にならってポアティエで切って落としたわけです。

ポワティエ市庁舎

 トウールもポアティエも”オールド・タウン”の町並みがよく保存されており、飲食店が軒を並べています。私はこうゆう所で一杯やるのが大好きですが、いつの頃からかフランス料理屋が中華とイタリア料理に取って替わられています。その理由は値段の手ごろさと客の回転の早さといわれています。 
 ポアティエから道は西南に向かいシャラント川の左岸の街、サントに着きます。この街は古くローマ時代から開け、中世にはサンテュトロプ教会を訪れる巡礼の街として栄えました。サンチャゴへの巡礼が必ず立ち寄るべき聖地です。
 道は”ローランの歌”の悲劇の主人公ローランのお墓のあるブライユを過ぎると、いよいよボルドーです。ここでは聖スーラン教会に詣でます。”カリストウスの巡礼案内”ではローランの角笛を拝せよ、とありますが、この笛は今この街にはありません。

島崎藤村が散策したボルドーの市立公園

 ボルドーは勿論そのワインが有名ですが、観光名所も少なくありません。パリのオペラ座のモデルとなった大劇場、その北に隣接する欧州一の広さを誇るカンコンス広場、この広場の東端はガロンヌ川の港に接し、西北には市立公園が拡がっています。第一次大戦中に疎開先のリモージュからこの地を訪れた島崎藤村はこの公園を次のように記しています。
 「白鳥の静かに浮かぶ古池の畔には黄ばんだ柳の葉がまだ深い秋を語り、枇杷の葉に似たマグノリアの濃い緑も生き生きとして居た。そこにも西方の空をしのばせるものがあった。」

リモージュ/島崎藤村が疎開していた家


藤村が通ったカフェ

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