野崎キャプテン
「飛鳥にとって、シンガポールまでは慣れた道」とにっこり笑ったのは、飛鳥世界一周の船長をつとめる野崎利夫氏。1963年、日本郵船(株)へ入社後、貨物船をはじめ、コンテナ船、オイルタンカーなど多数に乗船勤務。オランダで建造され、現在長崎のハウステンボスで人気を集めている復元船・咸臨丸を平成元年秋、ロッテルダムから横浜まで回航し、航海記「帆走27000キロ」(ダイヤモンド社刊)の著書を記した。
また、探検クルーズ船・フロンティア・スピリットの副船長時代には、北極、南極、アマゾン等アドベンチャークルーズの経験も培ってきた。実生活では2人の娘さんの優しいお父さんだが、この世界一周では、252人の乗組員の父親的存在であり、クルーズ全体のリーダー役もこなす、文字通りの船の長である。自ら浴衣にはっぴを着て、船上盆踊りに加わる気さくさと、穏やかな語り口で、船客からの信望も厚い。精悍な海の男、といった風貌の頼もしい船長さんだ。
3月12日、シンガポールに入港。清潔で近代的な町並み。ただし物価が高いのがたまにキズ。このところ急速にクルーズ人口が増え、世界第2位のクルーズ大国となったシンガポールに別れを告げると、暫くは、飛鳥が初めて訪れる港が続く。きっと、日本の誇る、白く優美な客船の初お目見えは、各地で大歓迎を受けることだろう。日本を離れてはや10日余り。飛鳥の旅は、いよいよ佳境へと入っていった。(以下次号)