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 2月1日ふじ丸のアジア・オーストラリアクルーズが催行された。東京港を発ち、香港、ベトナム、シンガポール、バリを訪ね、夏も盛りのオーストラリアで、パース、メルボルン、タスマニア島、シドニー、ケアンズに寄港した後、パラオで南の楽園を満喫し、グアムに立ち寄り、3月14日再び東京港へ帰る、寒さ知らずの43日間の船旅だ。

シドニーのふじ丸

 日本では、クルーズ=豪華客船の旅と、ただでさえ堅苦しいイメージが先行している上に、43日間98万円からの旅と聞いて、船客はお金も暇も有り余る特殊層ばかりと想像していたが「昨年退職し、これまで苦労をかけた妻との労い旅行」、「年金生活ですが、倹約し、2〜3年に一度は夫婦で旅行を楽しみたい」というフルムーン型が半数を占めた。

 「連れ合いを亡くしてから、年々消極的になって行く己を元気づけようとやってきました」というシングル客も大勢いた。また、一見高額にも思える旅行代金だが、日割りにすれば約2万3千円である。この中には、運賃、1日7回も出る食事代、船内催物やショーの料金等が含まれるので、陸上の旅館やホテルと比べても、法外な値段とは言えない。そして、このように、長年の仕事を勤め上げ、自身のできる範囲で、第2の人生を謳歌しようという人々が多い印象を受けた。

デッキランチ

 海外旅行は魅力的である反面、移動の煩わしさ、言葉、食事、生活習慣の違いなど、億劫な面も少なくない。しかし、ふじ丸はこれらの問題を見事に解決していた。毎日和食が食べられる食事内容。夕食がフランス料理のフルコースの日もあるが、夜食には、トロロソバと太巻寿司、讃岐うどんと羊羹等、思わず誘惑されそうなメニューが日替わりで登場する。また、天気の良い日に、屋外で、青い海を眺めて食べるデッキランチもクルーズならではのスタイルである。潮風に吹かれて冷たいビールをキューッとやれば、ちょっとした悩み事など吹き飛んでしまうほどの爽快さだ。神津船長もお客様とテーブルを囲み、南太平洋上に談笑の花が咲く、心に残るランチタイムとなった。

 最近日本のクルーズ客船の中には、展望大浴場を持つものが有るが、なんといってもその草分けは、このふじ丸である。1989年にデビューしたとき、この日本船ならではの構想は、人々をあっと驚かせた。なにしろこのお風呂は、陸上では不可能な景色が動く展望風呂なのである。昨日は、移りゆく島陰を眺めながら、今日は大海原に沈む夕日を望みながらと、誠に結構な入浴ができる。日本人の旅とお風呂は切っても切れない関係だ。私も南太平洋を目の当りにして入浴。「あー極楽、極楽」であった。

 道中の船内イベントも盛り沢山で、寄港地に因んだ文化講演、写真講座、社交ダンス教室等カルチャースクール並みだ。そして南半球ならではの2月の船上夏祭りとなる。会場には縁日をしつらえ、ヨーヨー釣りや的当て。中央の櫓で打ち鳴らす太鼓に合せ、八木節や東京音頭で盛り上る。


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