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ラプラヤプール |
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昨秋、私のもとに1通の招待状が届いた。それは、セレブリティークルーズ社の新造客船・マーキュリー(問い合わせ先03−5434−4811)のイギリス・サザンプトン港に於ける披露レセプションへの招待だった。ドレスコードはブラックタイ。輝くばかりのニューシップとタキシードやイブニングドレス姿があいまって、華やかな宴となることが目に浮かぶようだ。
読み進むうちに、一昨年、姉妹船ギャラクシーの披露会でドイツのメイヤー造船所を訪れた時、丁度良くマーキュリーのブリッジを取り付ける瞬間に立ち会えたことが懐かしく思い出された。あの頃は、まだ鉄板剥き出しだった船が、どんなに立派に仕上がったのだろうか?胸を弾ませて、ロンドンへ飛んだ。
レセプション前日は、同社の造船担当重役・アレックス・クセナキス氏の家に厄介になった。クセナキス・ファミリーとは、ギャラクシーのデビュークルーズで、毎日食卓を囲んだ間柄。「前泊はホテルを取りました」と連絡すると、「そっちはキャンセルして、我が家へ来てよ」と親切な言葉をかけてくれた夫人の照子さんは山口県出身。良妻賢母を絵に描いたような素敵な女性だ。ギリシャ人のアレックスさんと結婚し、現在はロンドン郊外の閑静な住宅街イーリングに住んでいる。
アレックスさんはすでに船に詰めていて留守だったが、手入れの行き届いた白い邸宅、果物の木が茂る庭は、日本の住宅事情と比べ、羨ましい限り。名門ウエストミンスター校に通う秀才の長男レオ君、見とれるほど美人の長女エリカちゃんとも1年ぶりに対面した。それにしても、2人ともなんと大人っぽくなったのだろう。その夜は、日本のニュースから、教育問題まで、照子さんと遅くまで話し込んだ。
メインレストラン、マンハッタン |
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翌朝、到着したサザンプトン港には、本日の主役マーキュリーが777,313総トンの堂々とした巨体で佇んでいた。この船は、セレブリティークルーズが放ったセンチュリーシリーズの第3船。第1船センチュリー、第2船ギャラクシーに継ぐ、シリーズの完結編として誕生した最新鋭の客船だ。ソニーエレクトロニクス社との提携による徹底的なコンピューター化によって、21世紀に対応しうる新型クルーズ船を排出してきたセンチュリーシリーズの集大成とも呼べる船である。
披露レセプションは、昼の部と夜の部の2回制。約2千人招待された昼の部は船内見学からスタートした。同型姉妹船だけあって、船内のレイアウトはギャラクシーと似ているが、経験に基づいた、さまざまな改良も試みられている。
例えば、ガラス窓に覆われた眺望ラウンジはいずれの船にもあるが、マーキュリーでは思い切ってバーカウンターを中央に設置し、人の流れと華やぎを部屋の中心に持ってきた。船上では珍しいシガーバーも、マーキュリーでは憩いの場としてより落ち着いた雰囲気が出せるよう、U字型に形を変えた。ギャラクシーでは、天井の世界地図と、4種の異なる絨毯を敷きつめたメインレストランの斬新さに目を見張ったが、マーキュリーは、シャンデリアを飾り、青地にカモメ柄の絨毯というシックな出来映え。シャンペンバーは、壁のガラス絵も絨毯も水玉模様。小気味よく弾けるシャンペンの泡をテーマにしたそうだ。
そして、先の2船より前進したコンピューターシステムもこの船の強みだ。一段と省力化された会議室の投票装置や、陸上と船上を生中継で繋ぐライブビデオ・テレコンファレンスシステム。安全性も、強化され、全90カ所を通信室とテレビスタジオの両方のモニターで2重に監視するダブルチェック・ファイアーアラームシステムを導入した。このように未来型でありながら、客船らしいエレガントさを加味したマーキュリー。船内を巡りながら、私の頭には「宇宙と人間の共存」というイメージが浮かんできた。船名「マーキュリー」は交通の神様である水星を意味するが、その名の通り宇宙時代を天掛ける斬新さと客船ならではの優雅さを兼ね備えていた。
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