もう一つの目玉は、海抜60メートルの高さにそびえるロッククライミングの壁である。煙突の壁面を利用した岩登りは、スリル満点。講習付き1時間30分で8米ドル。登る人と綱を支える人の2人1組で行われる。
私の相棒となったのは、100キログラム以上あるアメリカ人のジョンさん。初対面同士の自己紹介を済ませると、彼は、登る前に「僕の妻の運命は、あなたのその腕にかかっている。一つ宜しく頼むよ」。そういわれちゃあ、こちらも責任重大だ。巨漢が登りやすいよう、必死でロープをたぐりよせた。
そして、いよいよ私の登る番である。ひ弱な筋力、襲う恐怖心と戦いながらの岩上りだが、それを支えてくれたのは「スミコ、次は右上のピンクの岩をつかめ」「いいぞ、すごいぞ」「そうだ、もっと行け」等々の回りから贈られる暖かい声援であった。
その夜偶然、ラウンジで寛いでいるジョンさんの家族と出会った。彼には、私に運命を託した美しい夫人と、かわいい5歳と3歳の息子さんがいた。「あなたたちのお父さんは、すごいわね。とても勇敢に岩上りをしたのよ」と言うと、坊やたちはとても嬉しそうにパパに抱きついた。
よく、巨大客船は人との出会いが少なく、味気ないという人がいるが、決してそんなことはない。クルーズならではの家庭的な雰囲気は、ちゃんとこの世界最大の客船にも存在していた。
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ロイヤル・プロムナード |
この船には、洋上の銀座通りもある。122メートルにわたるロイヤルプロムナードだ。両側にはブテイックや、カフェが並び、中央には歓迎パーテイーの際に、キャプテンがスピーチをする「船長のお立ち台」を設置。通りには、突如大道芸人が出没し、ストリートパフォーマンスを披露。朝の町並み、夕暮れ時等々、照明効果により刻々と変化する町の表情も見ものだ。そして、この町の模様を見物する特等席がアトリウムビューキャビン。ロイヤルプロムナードを見下ろすユニークな客室である。
まばゆいシャンデリアの光に包まれた3階建ての主食堂。各階を結ぶ金色の螺旋階段は、淑女たちがイブニングドレスの裾を引きながら上り下りする様が実によく似合っている。フルコースのメニューは、日本語をはじめ、7日国語に訳されているので、日本人にとっても分かりやすい。
また、24時間サンドイッチやピッツアが無料で食べられるカフェもある。加えて、50年代のアメリカンオールデイズの雰囲気がただようジョニーロケッツの船上ハンバーガーショップは、行列の出来るほどだ。東京のジョニーロケッツで頼めば、1200円位する特製チーズバーガーやチリドックが、無料なのだから、人気のほどが伺える。
大きさのみならず、すべてが、豪快でバラエテイーに富んだ、ボイジャー。ロイヤルカリビアン社のリチャード・フェイン会長曰く「この船は、最初に大きさを決定したのでは有りません。娯楽、食事等々すべてのものに最高のものを選んだ結果が、世界最大の客船になったのです」。彼自身、10年前には、こんな大きな客船は想像したことすらなかったそうだ。
ボイジャーオブザシーズのクルーズコースは、毎日曜マイアミ発着の西カリブ7泊8日。同社の所有するプライベートビーチ・ラバデイーにも立ち寄る。ダイナミックなカリブ海クルーズへぜひ出掛けてみて欲しい。日本ではミキ・ツーリストクルーズセンター(電話03―3575―8513)が扱っている。
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