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階段の手摺を飾る踊り子像
階段の手摺を飾る踊り子像
 ところで、カーニバルコンクエストの当面の発着港ニューオリンズはドガの母親の出生地であり、弟が住んでいた町でもある。1872年にはドガ自身も訪れ「ニューオリンズの綿花取引所」などの作品も生まれた。そんなドガゆかりの港町からデビュークルーズを行ったカーニバルコンクエストは、階段の手すりにも踊り子の像が飾られている。

 デザイナー・ファーカス氏が一番お気に入りの部屋が、炎の画家ゴッホをテーマにしたジャズクラブ「ビンセント」だそうだ。壁やテーブルにひまわりを描き、天井にはガラス工芸のアイリスをつるした黄色い部屋は、ゴッホがゴーギャンと暮らした「黄色い家」を思わせる。

 メインダイニングの「モネレストラン」で食べるディナーは、メニューの中から好きなものが選べる。某日、私は、ソフトシェルクラブの前菜、冷たいビシソワーズスープ、ロブスターの焙り焼き、チーズ、パイナップルアイスクリームと焼きピーチの盛り合わせを注文した。こちらの料理代金も、すでに乗船料金に含まれているので、大らかな気持ちで選択できる。このほか、ビュッフェレストラン「セザンヌ」には、昼食時に海鮮コーナーがオープンし、ロブスターサラダやマグロのたたきなどもでる。バラエティーにとんだ食事も、この船の魅力だ。

ルソーのディスコ「アンリのダンスクラブ」
ルソーのディスコ「アンリのダンスクラブ」
 船内の一番広い廊下は「印象派大通り」だ。このメインストリートには、ゴーギャンをテーマにしたカジノ「タヒチ」や、ジャングルなどを描いた画家ルソーにちなんだ野性的なディスコ「アンリのダンスクラブ」などが並び、中ほどには寿司バーさえあるのだ。ほとんど、毎日夕方から開店する無料、食べ放題の寿司バーなんて、日本人にとっては嬉しいかぎり。いやいや外国人にも人気の場所で「ワサービ」「テマーキ」などという言葉がこの界隈に飛び交っていた。寿司は日替わりで約4種類をだすという。ちなみに、私が食べた日は、焙りマグロ、ウナギ、サーモン、そしてえびとキュウリの海苔巻きであった。ミシシッピ川を走る外国客船で、モネやルノワールを模した絵に囲まれながら、寿司を立ち食いするなんて嘘みたい。19世紀後半のフランスにはジャポニズムが流行し多くの印象派画家に影響を与えたといわれるが、この寿司バーは現代の船上ジャポニズムかもしれない。

 「船内はいった何点の絵画があるのですか?」と私が質問すると、ファーカス氏は、「それは、良い質問だが、私にも数え切れない」と笑ってこたえた。確かに沢山の絵画で埋め尽くされている船ではあるが、美術館のような生真面目で堅苦しい雰囲気は少しもない。芸術家達の特徴や、イメージを強調したり、組み合わせたりして、現代的で愉快な夢の空間を洋上に描きあげたというのがこの船の印象だ。

 では、最後になぜ、この船のテーマは印象派芸術となったのだろうか?この答えは同社のボブディキンソン社長から明快に返って来た。「芸術は世界の人々が言葉の壁を越え、共通に楽しめるものであり、この船にもぜひ世界中のお客様が楽しめるものであって欲しいという願いを込めたのです。

 日本のお客様もこのユニークな船旅にぜひお出かけ下さい」。詳しい情報をお望みの方は、アンフィトリオンジャパン(03-3832-8411)へ。

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