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拡大するとわかる部分食
拡大するとわかる部分食
 

 そして、待ちに待った7月22日。朝4時半に目覚めると、外は無情の雨。6時に7デッキまで上がってみると、すでに天文観察完全装備の人たちでいっぱいだ。コーヒーを飲み、雨宿りしながら、何とか天気が回復することを祈った。

 7時ごろ雨が小降りになり、各々が観察モードにスタンバイ。私も頭からバスタオルを2枚かけて世紀の瞬間に臨んだ。

 それにしても今朝のプールデッキは、普段の長閑なクルーズのプールサイドとは全く違う。所狭しと、三脚が立ち並び、溢れるような人人人。そして全員が雲の向こうにあるだろう太陽の方向を見上げているのだ。

日食が見えた振りをするスペイン組
日食が見えた振りをするスペイン組

 やがて、8時50分頃、切れ始めた雲の間からうっすらと太陽が見えた。もう既に部分日食がはじまり一部が月と重なっている。その途端、船上にはどよめきと拍手が沸き起こった。

 再び太陽が雲に隠れると、人々は口々に「ねえ、見た」「うん、ちょっと見えたね」と喜び合った。
そして、9時15分頃、もう一度部分日食を観察。しかしその後、再び厚い雲に覆われた。今日はもう観察は難しいかも知れないと思い始めたそのとき、面白い人たちを発見した。

 全員が準備した日食観察メガネをかけ、「ワー」、「ホー」とさも皆既日食が良く見えたように声を上げ、ポーズをとり記念撮影をしているのだ。

 聞いてみるとスペインからきたグループだそうで「見えないと腐っていてもしょうがない。あなたも一緒にやりましょうよ。きっと面白い乗船記念になるわ」と誘われ、私も観察メガネをかけて空を指差し、大げさなポーズをとって大笑い。
たとえ予想通りに見えなくても、ユーモアで楽しくしてしまう。さすがコスタの乗客は陽気だ。

 やがて、みるみるとあたりが暗くなり始めた。たとえ太陽は見えずとも、確実に太陽と月が重なり皆既日食となってゆく様が肌に伝わる。なんと神秘的なのだろう。待ちかねていたように船の汽笛がなった。

イタリア客船ならではのピッツアリア
イタリア客船ならではのピッツアリア

 そして船上は真っ暗な闇の世界へと変わった。

 「オオー」「ワアー」

 叫びとも呻きともつかない声の渦が沸き起こり船上は興奮に包まれた。暫くすると、海は夜が明けるように徐々に明るくなり、何事も無かったかのように元の朝景色へと戻っていった。

 いったい今、何が起こっていたのか? 黒い太陽は見えなかったが、なんともいえない不思議な気分を味わうことができた。

 今回、コスタの客船に乗るのは3年振りだったが、アジアの海でコスタアレグラに乗れたことも収穫であった。
この会社ならではの気さくなイタリアンスタイルのクルーズを基調にイタリア人シェフと中国人シェフによる欧中混合のメニューや、言葉の壁を越えて楽しめるダンスやゲームを中心としたイベントの数々など、一段とアジアの乗客にも乗りやすいクルーズとなっていた。

 コスタアレグラは9月、10月にはシンガポール発着のアジアクルーズを行う予定。また9月、10月に日本に立ち寄るクルーズは、僚船のコスタクラシカ(5万2965総トン)が行う。今年の秋はフレンドリーで国際色豊かなコスタスタイルのクルーズが身近に楽しめそうだ。

(コスタクルーズに関する問い合わせ先:オーバーシーズトラベル TEL:03-6226-4622)



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