ベネディクティン博物館の華麗な内庭
FECAMP(フェカン) <ミニ・メモ> 上ノルマンディーでも重要な漁港のフェカンは、特に鰊(ニシン)と鱈(タラ)の水揚げ港として知られ、大規模な漁業施設がある。港湾施設は海岸から大きく引き込んだ幾つもの内港の周りに大規模なものが見られ、鉄道の引き込み線が何本も走っている。 フェカンをもう一つ有名にしているのは、ベネディクト派の修道院が置かれて、その修道僧による秘酒に起源する「ベネディクティン」という有名なリキュールが醸造されていることである。醸造所の近くの中世の華麗なお城を思わせるような建物の中には、ベネディクティン博物館が作られている。 「ベネディクテイン」は、30種近くもの薬草や香草を使って作る重厚な甘口のリキュールで、同じように修道院の秘酒として生まれたフランスのリキュールには「シャルトルーズ」や「ドミニカン」などが有名。 町の見所は、このベネディクティン博物館と LA Trinite (三位一体)と呼ばれる教会。12世紀の後半に英王リチャード一世がこの古い修道院付属の教会を再建して以来、18世紀に至るまで何度も再建・改築がなされた。 夏は海水浴場としてもにぎわい、海岸にはビーチが広がる。カジノもあるようである。 また、エトルタと同様の白亜の波食断崖がある。 |
エトルタからTAXIでフェカン駅に到着。
駅前の丘の上の教会は、朝エトルタ行きのバスに乗ったところ。まずは、この教会へ
教会の内部に入ると、近所の10才くらいの男の子達が中で何やら秘密の相談中。私に気がつくと、一瞬の間をおいて「Bonne Annee,Monsieur」と声を掛けてきた
勿論、こちらも挨拶を返すが、子供達は、何となくばつが悪かったのだろう、「今、何時?」と時間を訊いてから、みんな教会から出ていってしまった。
どうも邪魔をしてしまったようだ。この教会にそれほど興味があったわけではないので少し後ろめたさが残る。
フェカン駅前の高台の教会
三位一体教会から商店の立ち並ぶ通りを駅に向かって引き返す。一軒のカフェに入ると、ぴかぴかに磨かれた銀色の焙煎機が目を惹く。店の主人が、焙煎機を操作して煎り上がったコーヒー豆を容器に入れ替え始めた。
焙煎機の燃料はガスを使っている。面白いのは焙煎に使った熱気を大きなパイプで階上に導き、温水器や暖房に利用している。店の主人は、一連の作業が終わったあとで、店に伝わる数種類の焙煎機や豆挽き機を見せてくれた。
ここまで店の自慢の焙煎機やコーヒーミルを見せられると、コーヒーを追加オーダーしなくては居られない。味の方は、確かに当たりがマイルドで独特のコクがある。
勘定を払って出ていこうとすると、店の主人が「ベネディクティン博物館」をぜひ訪れるように勧める。パンフを見せて貰うと、なるほど下の写真のような魅力的な建物である。それに、修道院秘蔵の薬酒を起源とするベネディクティンはシャルトリューズと並ぶ銘リキュールである。
しかしながら、時間は既に16:00を過ぎている。ブレオーテブーズ行きの列車の時間は
16:30。この列車を逃すとパリでの宿探しがつらくなる。駅員さんに預けた荷物も気に掛かる。とりあえず、せめて写真だけでも取っておこうと博物館をめざす。
博物館はフランボワイヤン様式によくある華麗な塔と窓飾りを持つ優美な建物で、壁はベージュと茶色のツートンカラー、屋根は黒いスレートで葺いてある。
正面の格子の門の奥まったところに入口があり、その入口横には流れる曲線の階段が2階から衣の裾を伸ばすような形でついている。周りには、醸造ポットを形取ったメーカーの宣伝や、貯蔵庫らしい赤煉瓦の倉庫が並ぶ。
未練たっぷりに写真を取っていたが、時刻は既に16:20。早足で駅へ向かう。
出発3分前に駅へ着き、荷物を預かってくれていた駅員さんへのお礼もそこそこに、買ってあった切符にスタンプを押し、停まっている列車に飛び乗る。
これからブレオーテ・ブーズで乗り換え、パリ行きの列車に乗るのである。
私の駆け足のノルマンディーの旅もこれで終わり。
さて、久しぶりのパリの夕食は何を食べようか?
「YASのノルマンディー紀行」 (了)