ギリシャの神々の故郷を訪れる
神話の舞台、ピリオン半島
神話の国、ギリシャ。ゼウス、アテナ、ヴィーナス、ゼピュロス、フローラ、ペガサス、アトラス、オルフェウス、ヘラクレス、メデューサといった名前を、耳にしたという方も多いことだろう。ギリシア神話とは、古代ギリシャで生み出された世界の始まりや神々、英雄たちの物語のこと。西洋では古くから想像力の源となった。
そして、こうした物語に登場するギリシャの神々や思想は、果てしない時を経てイタリアにルネッサンスをもたらし、非キリスト教の神を主題とする芸術を生みだす原動力となった。
古代にはぺーリオンと呼ばれたピリオンは、ギリシャ北東部のテッサリアに広がる半島。ここはオリンポス十二神が夏の住まいとし、また半人半獣のケンタウロス族が住んでいたという伝説が残る地方である。そのため、ギリシャ人にとって特別な場所の一つになっているのだという。
日本でも人気のクリスマスローズが見られるピリオン山は、ギリシャ屈指のハーブの産地。アポロンから音楽や医学、予言の技を、アルテミスから狩猟を学んだとされる賢者ケイローンは、このピリオンの洞穴で暮らしながら薬草を栽培して病人を助けたと伝えられている。
一方、港町ヴォロスは、アルゴー船に乗って金の羊毛を手に入れる旅に出た勇者イアソン(ジェイソン)の故郷。人類初となったこの大型帆船は、ピリオン山の木を伐採して造られたと言われている。ヴォロスでは、アンティゴノスの子攻城者デメトリオスの宮殿などが発掘されている。
乾燥したイメージが強いギリシャだが、このピリオン山には降雪もあることからシーズンを問わないリゾート地となっている。
春から秋にかけては豊富な雪解け水が山を潤し、特に春から夏にかけて清々しい風景が広がる。深い緑で覆われた山にはフィリーキ(小さなリンゴ)や栗、ワイルドチェリーなどの果樹も多く自生し、どこか懐かしい日本の里山を思い起こさせてくれる。