祈りの境地、世界遺産メテオラ
ギリシャの世界遺産、メテオラの修道院群
ギリシャに数多くある世界遺産の中でも、圧倒的なインパクトを誇るのが「中空の修道院群メテオラ」だろう。
ギリシャ三大遺跡の一つに数えられるこのメテオラがあるのは、ギリシア北西部のテッサリア地方、トリカラ県にあるカランバカ。ピンドス山脈の渓谷からピニオス川が流れくるこの町は古代都市エギニオに再建された都市で、ローマ帝国反抗争で知られる。かつてはこの地にアポロの神殿が建てられた。
キリスト教徒は長きに亘り、数々の迫害に遭ってきた。古代ローマ時代には時の皇帝、暴君ネロによる迫害を受け、信者たちは祈りを捧げながらライオンの餌食となって神のもとへと旅立っていった。そして、ある時は迫害から逃れ地下に身を潜め、またある者は上を目指し、そこでひっそりと暮らしながら信仰を貫いた。中空に浮かぶメテオラもそうした祈りの境地の一つであり、神への祈りを捧げる修道僧たちの聖域となった。
メテオラの歴史は修道僧らが、岩山の裂け目や洞穴で修行を始めた9世紀にまで遡る。
ビザンチン時代後期、セルビア王国やオスマン・トルコ帝国時代になると、ここに戦乱や異教徒による迫害から逃れようとする修道僧らが集まり、高さ400メートル以上もある岩山にビザンチン様式の修道院を次々に築いていった。
そうした修道院の建設はオスマン・トルコ帝国時代も続けられ、最盛期となる16世紀には24を数えた。だがその後、統治者からの保護が受けられなくなってくると、修行僧らは新たな祈りの場を求めてこの地を去った。そして今、現存する修道院はわずか6つとなった。
ここでの生活で唯一、必要とされるのは祈りと断食。修行僧たちはこの不毛な場所で質素な生活を送り、瞑想をし、そして神への祈りを捧げる。そうして自らに潜む罪を追い出し、言葉では表せない究極の平穏を求める。
絶壁に建つメテオラの修行院では、垂直のハシゴを立てたり、滑車に縄袋を吊ったりしながら建築資材や食料、そして時に修道僧をも運んだ。修道僧ドメティウスにより、1458年から1476年にかけて創建されたアギア・トリアダ僧院は、そうした当時の生活を最も忠実に守っている僧院である。