祈りの境地、世界遺産メテオラ

更新日 : 2014年02月03日

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メテオラ最大の修道院、メガロ・メテオロン



メテオラ最大の修道院、メガロ・メテオロン


メテオラの語源は、ギリシア語で“中空に浮かぶ”を意味する「メテオロス」。メテオラ最大の修道院、メガロ・メテオロンの名もこれに由来している。
メガロ・メテオロン修道院の最初の住人は、メテオラ出身の修道僧アサナシウス。1380年に礼拝堂が建てられ、1387年から1388年に修道僧のイオアサフが、1541年から1542年にかけてシメオンによって修復、拡張された。その礼拝堂は今も修道院の入口にある。修道院の裏手には農園があり、ほぼ自給自足の生活を送っている。

修道院への入口までは、岩⾯に掘られた115段ある急な階段を上っていく。この階段は、後から作られたものだ。それまでは人の昇降にも、絶壁に設置された滑車が使われていた。
駐車場から後をつけて来た白ネコが、修道院へと導くかのように寄り添ってくれた。私はそのネコと歩みを揃え、そこに広がる壮大な眺めと奇岩を横目に、修道院の門をたたいてきた修道僧たちに思いを馳せながら修道院を目指した。

修道院に到着する頃にはそのネコの姿は見えなくなったが、入口に到着するとストールを一枚借り受けて腰に巻き、聖なる空間へとさらに足を進めた。メテオラの修道院に入場する際、女性は丈の長いスカートをはくことが求められるが、そうでない場合は入口で貸し出される布を巻くことになっているのだ。

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メガロ・メテオロン修道院の壁に
描かれたフレスコ画

多くの寄付により自治権を持ち、数々の貴重な美術品を有するこの修道院には、かつての修道院の生活が垣間見られる食堂や、写本や書籍が所蔵されている図書館、無数の髑髏が並ぶ納骨堂などがある。
さながら、ちょっとした博物館といった印象であったが、修道僧は院内での私語を禁じられているため、そこには厳かな空気と静寂な時が流れていた。きれいに整えられた中庭からは周辺の景色が一望でき、フレスコ画やイコン(聖画像)といったビザンチン美術も見事な修道院である。

修道院内では彼らの修行の妨げにならないよう、イコンなどを売るギフトショップで言葉を交わす際も、修道士と視線を合わせることはもちろん、顔を見ることも避けた。
だが、この前日に訪れたアギオス・ステファノス修道院(尼僧院)で、偶然にも一人の年老いた修道女と出会った。
彼女は言葉にならないほどの澄んだ瞳を持ち、そしてその真っ直ぐな眼差しはまるで「別の世界」を見ているようであった。
筆者自身、これ程までに美しい瞳を持つ修道女を目にしたことはなかった。
恐らく深い信仰の末に得た、このメテオラに暮らす修道僧らが求める「究極の平穏」を知る瞳なのではないかと考えた。
そして一瞬、彼女の背後に神の姿が見えるような気がした。

近年、急速な観光地化が進むメテオラは、世俗を避ける修道僧にとって生活の場として適さなくなりつつあるという。
とはいえ、観光客がそこで落とすお金が、彼らの貴重な収入源の一つとなりつつある現状も否めない。
このメテオラの修道院群が後世に残されるために、そして何より修道僧たちのためにも、極力彼らの聖域を侵さないような観光マナーに配慮したいものである。

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