空からの南極探検
白い氷の大陸を空から見たらどんな表情をしているのだろうか--95年11月、オーストラリアのメルボルンからカンタス・オーストラリア航空のチャーター便(ボーイング747-400)で、初めて空からの南極探検飛行を楽しんだ時の写真が次ぎの数枚だ。
メルボルンを飛び立った飛行機が南緯60度付近に達すると、モザイク模様の美しい氷の割れ目が一面に展開する。冬の間、張りつめてじっと春の訪れを待っていた海氷が、春の暖かみを取り込み割れ目を覗かせはじめる姿だ。
更に大陸の奥深く入り高度を3千メートル位にまで下げると、凹凸のある白い大陸のいろいろな表情が眼下に開けてくる。日本のざっと36倍もある南極大陸は、平均2千メートルもある厚い氷に覆われた独特の世界だ。
飛行ルートはまずオーストラリアに一番近いアデリーランドのフラットな氷原を辿る。反射する太陽の反射光が目を射る。更に機首を東に向けるとビクトリアランドに達する。 幾重にも氷の山脈が重なり、山の頂上が氷の上に飛び出すような塊をつくる。その山々の間を大小の氷河が幾筋もになって、くねくねと曲がりながら海にそそぎ込む。
白い氷と雪渓がデザインする青い山並み。白と青の世界が描き出す大自然のパノラマはただただ感動の連続だ。窓に顔をつけっぱなしで見入る。
オーストラリアの南極観測基地で研究に従事してきた越冬経験者や科学者が、座席の間を回りながら、乗客の質問に答えて忙しく解説する。さながら、白い大陸の高度3千メートルに繰り広げられる移動教室といったところだ。
そんな調子で、南極大陸の多様で変化に富んだ表情を楽しんだ後、機は再びメルボルンに11時間後帰着する、というのが南極大陸探検フライトの全行程である。
10数回にわたり南極観光を体験してきた私にとって、空からの南極探訪は船で巡る大陸観光とはまた全く違った白い大陸の魅力を見せてくれたが、時間のない方や探検旅行の初心者の方にとっても、お勧めのもう一つの南極旅行である。