止まることを知らない恐るべきスーパーウーマン

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旧ベルギー政府観光局
元日本事務所長

宮下 南緒子 さん


出張が続く多忙な合間をぬって、ほぼ独立独歩で68ページに及ぶ待望のホームページ「ベルギー観光局」を立ちあげた。50代キャリアウーマンの恐るべきパワーですね--と水を向けたら、

 「外注すれば楽だし良いものができるのは分かっている。でも、自ら手を染めてみないと、インターネットの命であるこまめな情報発信が出来なくなってしまう、と思って頑張っちゃたの」と、気負いのない返事が返ってきた。家事をこなし睡眠時間を削ってのインターネットとの付き合いだが、そんな猛烈さを感じさせない爽やかさが、この人の持ち味である。

 「でも正直言うと、さてこれから自分の作品をインターネットに載せるんだと思った時は、怖かった。インターネットはひとり一人が編集者であると共に世界の人に情報を伝えることのできる公器。他人様の前に自分をさらけ出すということになるわけだから、恥ずかしいやら緊張するやらで、かつて新聞にエッセイを転載していた時と同じようなスリリングな気持ちを覚えた」

 ベルギー政府観光局の初代日本事務局長に就任して22年。これだけ長く政府観光局の現地支局長を勤めた例は世界でも希だが、女性としてのハンディキャップが加わる日本となれば、まずは異色中の異色である。

 「ベルギーはやすらぎに満ちたヨーロッパの偉大な田舎。かつてヘドロと老人の街だったブルージュはいまヨーロッパ中世を代表する観光地として見事に蘇っているが、小国なりに知恵を働かせ、自然と人間的な温かさを大切にする風土を作り上げてきた素晴らしい国です」商社勤めのブラッセル駐在時代に、偶然のことから観光局日本事務所の開局に伴う代表に推され、今ではベルギーを代表する日本の顔になってしまった。

 ワープロから始まったコンピュータとの付き合いは、その後、パソコンを手に入れることで事務所の情報システムを着々と整備、日本の支局ではLAN環境で業務処理ができる唯一の観光局となった。コンピュータの活用に関しては以外と保守的なヨーロッパの例に漏れず、ベルギーの本部も情報化社会への対応はむしろ低速である。FAXサービスの導入も日本が初めてなら、インターネットで先陣を切ったのも日本事務所が発信元である。その都度、先頭に立って本部と掛け合い、ベルギー政府観光局全体の標準仕様づくりを働きかけてきた。FAXと音声による「ベルギー観光局情報」も、僅か数万円のソフトを使い、スタッフが情報の保守管理を行っているというから、生産性の高さは日本にある観光局の中でも恐らく1ー2位を競う優良観光局だろう。

 事務所と自宅に互換性のあるマシーンとソフトを整備、シームレスに業務をこなす。自ら秋葉原に足を運び、新しい情報シャワーを浴びる。しかも、週末は最近始めた田舎生活にひたり、大根やジャガイモづくりで自然や村人とのコミュニケーションを楽しむ、というから見事である。この2月にウィークエンド宿借り族12世帯で”建国”した千葉県山田町の「かかし会」から世界の「かかし候補村」に向け、ホームページをつくって呼びかけるのが次の計画だと目を輝かす。しかも日本旅行作家協会の会員として本も書く。止まることを知らない恐るべきスーパーウーマンぶりである。

 「この間、学生時代の仲間が集まってつくづく感じたのは、50歳代がいま最も元気だということね。少し前の世代は亭主は粗大ゴミや塗れ落ち葉などといって、女性だけが集まってはしゃいでいた。次の団塊の世代はファミリー優先で動く。その谷間でこれまで余り目立たなかった50代女性が、子育てを終わり、亭主を引っぱり出し夫婦揃って行動を起こしはじめているって感じがする。好奇心も旺盛で意欲もある。頭の柔らかい内にボケ防止でインターネットでも始めなさいよ、とハッパをかけて来たのよ」何事も自然流がいいと歳も隠さない。中年女性ネットワーカーの鏡のような人だといったら、誉めすぎだろうか。

 ベルギーの観光プロモーションで共同歩調をとる小西酒造のホームページで、エッセイの連載も始めた。ネットワーカー時代の申し子のようなひとである。

(構成:高梨 洋一郎)



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