INETは情報の宝庫という「ハワイ旅行の達人」
トラベル・ライター
小玉 ヒロ子さん
ガイドブックが溢れている。
いずれも判で押したようにグルメとショッピング情報が詰め込まれる。お陰で国内旅行感覚で外国の街を手軽に楽しめるようになった。善し悪しは別にして、その分、ガイドブックから異国情緒は殆ど感じられなくなった。
海外旅行の黎明期から旅一筋、それもハワイ観光の草分け的な存在としてガイドブックの発行など日本人ハワイ旅行の水先案内役をつとめてきた小玉さんにとっても、ヨーロッパ・ファッションを求めてワイキキ・カラカウア通りに列をなす旅行者の群は、計算外だった。
「団体旅行も結構。安売りもいい。しかし、その陰で十束一把のハワイ旅行に満足しない旅行者も確実に増えている。カウアイ島ハナレイ湾の桟橋に立って名画『南太平洋』の舞台を偲ぶのもそれだけで結構印象深いが、ちょっと太陽光線の角度を考えてタイミングを工夫すればヤシの葉がキラキラと光って、それはそれ感動的な光景をお見せすることができる。お客様がどんなニーズをもってハワイに行くのか、事前にお聞きしてそれにあったプランを考えてあげる。年間200万人もの日本人が押し掛けるとなるとハワイは隅々まで最早知り尽くされてしまったような観があるが、そんなことはない。ハワイ観光の奥はもっともっと深い」。
そのこだわりがきっかけとなって本誌オンライン・トラベル・マガジン「旅コム」に「小玉ヒロ子のハワイこだわり講座」として登場することになった。
ジャンボが登場する直前、海外旅行が大衆化の兆しを見せはじめた1971年、ハワイ観光局からアクションを主体にした初の滞在型ガイドブック「見るハワイ遊ぶハワイ」が登場、瞬く間に13万部のヒットとなった。その筆者が小玉さん。現地取材を重ねること半年、その後に続くハワイ向けガイドブックの雛形となった。
どんな顧客にも勧められ収益性に富むハワイ旅行は、日本の旅行業界にとって「海外市場のバロメーター」とも「米の飯」とも言われ、いわば海外旅行そのものの象徴でもあった。
「それにしても、いまの旅行会社のやり方はまるでお客様を荷物扱い。現地デスクの対応を見ていると、お客が余り同じ質問ばかりしてくるものだから、言葉も出さず掲示板を無造作に指さすだけ。そして、やることといったらショッピングだけというひどいケースも少なくない。旅行会社の対応もさることながらメディアの責任も大きいわね」。
「安売り合戦も結構。しかし、その分無理をすればどこかに弊害は必ずでる。6万、7万円のツアーで行って現地で荷物を扱うようなぞんざいなサービスを受けたと立腹してた方がいたけど、まず売る方がちゃんとそれなりのデメリット表示をして説明をしておく。いい意味での差別化をきちんとしておかないから、見当違いのクレームや不満を生む。勿論、買う側もその辺のことは十分心得ていないと何度海外旅行に行っても、ベテラン旅行者にはなれない。スマートなハワイ旅行を楽しんで欲しいわね」
大学卒業後、1年半の米国生活を体験して旅行業に従事することになった。米国やヨーロッパ向けの主体に、一般観光から視察旅行、個人旅行者向けの完全手配など日本人の海外旅行が急成長を遂げる中で、あらゆる業務をこなした。もちろん団体旅行に添乗して世界中も飛び回った。海外観光旅行が自由化を含む黎明期、我が国初の海外観光チャーター旅行の実現に奔走するなど、女性の旅行業界人というばかりでなくキャリア・ウーマンとしても草分け的な存在である。
日本にハワイ観光局が設立されるのと前後して、現地受け入れの旅行会社の設立などハワイにシフトすること30年弱。ハワイ観光の水先案内人としてペンを執ったり、旅の世話役を続けてきた。ハワイの楽しみ方を隅々まで知り尽くした「ハワイ観光の達人」である。
非キリスト教徒である日本人ヤングカップルの結婚式に異を唱える地元の教会を説得して東奔西走したり、カウアイ島シダの洞窟での日本人旅行者としての初めての結婚式もプロデュースした。子連れの海外旅行がまだ珍しいかったころ早くも3世代家族旅行を発案、その一環として実現することになった「全員赤ちゃん連れのチャーター旅行」は世間の度肝を抜いた。そして今。
「結局、旅は思い出づくりだと思うの。シニアがハワイに滞在して現地の人と交流を深めたり、代わる代わる日本からやってくる家族を迎える旅や、職場旅行の際に現地のビジネス関係者とソフトな触れ合いが可能なオプションの開発など、新しいハワイ旅行の工夫はいくらでもある」
話題となった豪華客船「飛鳥」による初の世界一周で船上カルチャー教室の講師役をつとめ、ライフワークのひとつである「ムームーのコレクションと民俗誌の研究」を披露、好評を博した。ムームーに関する造詣の深さはもちろん世界でもトップクラス。ハワイ人以上にハワイの文化そのものであるムームーに詳しい「ハワイ研究の達人」でもある。
旅行会社入社と同時にキーボードを叩きはじめ、以後、IBM、MACと使いこなしてきたからパソコンとの付き合いも年季が入っている。自宅ともなっているマンション管理にはエクセルを活躍。目下、眠い目をこすりながらインターネット・サーフィンに熱中する。
「つい最近、インターネットで仕入れた情報を手がかりにハウステンボス、シーガイヤと九州旅行を楽しんできた。居ながらにして世界の情報が引き出せるインターネットは、断然シニア・シチズンにとっては必須のツールよ」とも言い切る。
インターネットの積極的な活用アーティストとして知られるある有名なシンガーソングライターが隣人であることも、何かと楽しい刺激になっているのかも知れない。
小玉さんの「こだわりハワイ旅行講座」に将来何が飛びだすか、楽しみでもある。