アメリカは全てが同居する地球の縮図

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吉田隆志フォトジャーナリスト
吉田隆志さん

アメリカは全てが同居する地球の縮図

本誌に毎号「実践・アメリカドライブ旅行」を執筆していただいているフォトジャーナリストであり、写真家の吉田隆志さんである。
「好きな写真でアメリカ人の生活や自然を撮り続けている内に、あっという間に30年が過ぎてしまった。マルチメディア時代に備えた写真電送システムづくりなどのために、最近は年に2、3回、それも短期の出張で帰ることが多くなりましたが、以前はキャンピングカーをひいて1カ月に及ぶ旅を年間3回も4回も行うなど、よく動き回りました。アメリカの魅力? 一言でいえばアメリカは人種も自然もそして文化も全てが凝縮しているひとまわり小さな地球です」

アメリカの写真だったら吉田隆志さんであり、吉田さんが主宰する「アメリカン・フォト・ライブラリー」である。特に自らハンドルを握り、心に刻み、ファインダーをのぞいてきただけに、アメリカの道路や町々の説明は実用的である、というのが「旅コム」読者の評価である。

吉田隆志 吉田家は代々日本を代表する画家ファミリーである。
明治の画壇を白馬会と共に2分し、明治美術会を率いた近代絵画の巨匠・吉田博画伯は、吉田さんの祖父に当たるが、実父の吉田遠志、叔父の吉田穂高、博の妻で祖母にあたる吉田ふじを、といずれも日本を代表する版画家であり洋画家でありそして水彩画家である。

1899年(明治32年)祖父博は、水杯を交わし渡米した。決死の画家修行である。幸いデトロイトやボストンで開いた美術展が大成功、博画伯は世界的な名声を得ることになるが、そのためもあってか吉田家は代々、海外からの客人が絶えない地球人ファミリーとなった。
吉田隆志さんも「祖父や父の知り合いが年中我が家にホームステイしているような状態で、気がついたらアメリカからの客人と何の違和感もなく生活していたというような感じだった」と振り返る。吉田家にとって、地球規模での会話はごく当たり前のことだったわけだ。

父が旅先で撮ったおびただしい数の写真が次々と送られてくる。
「それが写真の世界に興味を持ち始めた遠因だったが、もうひとつ、こつこつと描きあげるのに大変な時間がかかる絵の世界に比べ、写真は結果の出るのが早い。才能は別として将来は写真で身を立ててみたいと思うようになったのは、そんなことが原因であったような気がします」大学で写真を専攻し祖父が武者修行の場として選んだアメリカに渡り、旅と写真の日々を続けるようになる。筆に代えてカメラでの武者修行である。

全米を共に旅したキャンピングカーと

全米を共に旅したキャンピングカーと

「広大で変化に富んだ自然もさることながら、特にアメリカ人のライフスタイルに興味を持ちファインダーを覗いている内に気がついたら、旅の世界にどっぷり浸かっていたというのが本当のところです」山と渓谷社の雑誌で「日本と世界の旅」を1年間にわたって連載したのが、旅行作家としてのスタートになった。

1967年に初めてアメリカに足を踏み入れて以後、毎年のように長期取材旅行を試み、全米50州、25万キロを走破した。
「車という足を持たないとアメリカという国は身動きできない。しかも、取材となると寝泊まりのできるキャンピングカーは放せなくなる。日本にいる時は、全米各地に知人がいるので困ることはない」すでに6台のキャンピングカーや車を乗り潰したというから、やはりアメリカ・ドライブの旅でも、第一人者である。

30年間にわたり収録した写真は15万枚にのぼる。勿論、アメリカばかりでなくメキシコやアフリカ、ヨーロッパ諸国、そしてアジア各国などへの取材も多く、特に祖父が父と共に足を止めたインドへの思いは強い。
吉田隆志 インターネット時代、マルチメディア時代を迎えてフォトライブラリーも世界的なネットワークを活用する時代になった。このため、自らもホームページを開設するなど、フォトライブラリーの国際的なネットワークづくりには積極的な取り組みを行っており、アウトドアー関係のデータベースである「アドベンチャー・フォト」のほか、将来2000万点のデータベースづくりを目指す「アーカイブ・フォト」の日本総代理店もつとめる。米国にあるデータベースから、現在15万点にのぼるあらゆるジャンルの歴史的な写真が、日本にあるパソコンからオンラインで検索し借りることができるという、画期的なシステムである。

「フォトライブラリーの世界も、国境を越えたグローバルな競争時代を迎えて、ストックの多さにプラス質の時代になってきた」
「素晴らしい地球の姿を伝えるのが画家の使命」と世界に雄飛していった祖父の遺訓を胸に、将来、吉田ファミリーの美術館づくりを実現するのが夢。そして、当面の夢は、時間をつくってもう一度、アメリカ50州をじっくり旅することだ。根っからの「アメリカ大好き人間」である。

(構成:高梨 洋一郎)


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