生き生きネットで円熟社会を謳歌
パソコン通信「メロウ・フォーラム」
山本 祥一さん
「熟年世代のパソコン通信やインターネットの世界についてインタビューしたい」とフォーラムのシスオペに頼んだら、早速、紹介いただいたのが山本祥一さんである。
いわば6,000人のメンバーを代表するメロウ・フォーラムの顔である。さぞ、創設以来のベテランユーザーのひとりに違いないと訪ねたら、開口一番、パソ通歴は「僅か2年です」という答えがはねかえってきた。
熟年世代の元気印を代表するようなアクティブユーザーである。
「オフ、オフの連続で人生退屈している間なんかない。過去2年間にメロウ・フォーラムのオフライン・パーティ(オンラインと違って会員同士だ実際に会って楽しむ交流会)は合計、62回に上りました。カラオケ、ダンス、琴の演奏、麻雀、タバコのみオフなど中身は実に多彩で場所もいろいろ。オンラインでいろいろ海外旅行の話をしているうちに、それではほんものの海外旅行ということになって、この2月には遂に16名が参加してバリ島オフとなりました。いやー、実に楽しかった」。
バリ島には80歳を最高に70歳代が主力となった。62回を数えるオフのうち、23回はハンドル・ネーム「羊」さん、こと山本さんが幹事役を引き受けた。面倒見の良さが若さの秘訣でもある。
実家は東京・渋谷ながら多摩・青梅線沿いの羽村市に単身赴任。常勤監査役を務める会社の社宅で自炊生活を送りながら、畳の暖まる間もなくパソコンに向かい仲間との交流を求め東奔西走する。
数年前まで営業担当の役員として一線で活躍、今なお仕事を持つ勤め人だから、会社仲間との付き合いも欠かせない。若い頃からはじめた社交ダンスでは地元の名士的な存在というから、こちらもパソ通以上に忙しい。単身赴任の侘びしさなど無関係。むしろ独り身をエンジョイしているダンディ・シルバーでもある。
「仕事でキーボードは触っていたというものの、パソコン操作は素人。2年前の日経新聞でメロウ・フォーラムの紹介記事を読んで興味を持ったのがコトのはじめでした。インターネットもそうでしょうが、パソコンネットは世間のシガラミである肩書きが通用しない個人の世界。オンラインで知り合いオフラインで親交を温めあうパソコン通信はコミュニケーションの密度が全く違う。すでに150名もの方との出会いが生まれましたが、まだまだこれからが本番です」
統計によると2015年には65歳以上の高齢者人口が3100万人と、4人に1人はシルバーエイジの高齢社会が到来する。
高齢者=弱者という消極的な見方を打ち破り「高齢者の積極的な社会参加を情報化の支援によって促進し、ゆとりある豊かな活力溢れた21世紀の長寿社会日本を構築していこう」という通産省のメロウ・ソサエティ構想の一環として、賛同企業や地方公共団体等などの手によって平成3年7月に誕生したのがNIFTY-Serve上の「メロウ・フォーラム(FMELLOW)」だ。
「単にパソコンに向かって情報をやり取りするだけでなく、人生に素晴らしい出会いの場をもたらしてくれるのがパソコン通信。オンとオフはその車の両輪です。オンラインで知りあってオフで実際に心を通わせると、次ぎからオンの発言が全然違ってくる。あの時あの新聞記事を読まなかったら今の私の人生も随分違っていたでしょうね」
その猛烈なパソコン・ユーザーぶりがあれこれ伝わって、最近はマスコミの取材も随分受けるようになった。さしずめ、メロウ・フォーラムの広報部長さんでもある。
この6月、完全退職したら渋谷の自宅に戻ってそこから全国のメロウ仲間に向かっての発信となる。足下の奥さんをどうパソ通に馴染ませるかが「最大の難関」と言うが、「羊」さんの生き方は、誰にでもやがて訪れてくるリタイア後の新たな人生をどうエンジョイするか、そのひとつの方法を身をもって教えてくれている。
韓国のシルバーネット「元老坊」との交流も軌道に乗り始め次は韓国に旅するという。「メロウ・フォーラム」の国際交流もいよいよ始動開始である。
「羊さん」「メロウ・フォーラム」がんばれ!
(写真はバリ島オフのひとコマ。いずれも山本さんがデジカメで撮影したものである)
(構成:高梨 洋一郎)