スイス最古の名門ホテル「ル・トワ・ロワ」
スイス最古のホテル「ル・トワ・ロワ」
スイスきってのグルメシティー、バーゼル

 バーゼルの町はライン川を境に二つのエリアに分けられており、裕福な人々が住む左岸(フランス側)がグロースバーゼル(大バーゼル)、右岸(ドイツ側)がクラインバーゼル(小バーゼル)、もしくはレッサーバーゼルと呼ばれている(写真左下)。

ライン川越に見たクラインバーゼル クラインバーゼルは、領主司教ハインリヒ フォン トゥンの命により、1226年にライン川を横断する最初の橋が掛けられ、その多額の資金が投入された橋を守るために要塞化された街として造られた。橋は路面電車の導入に伴い1905年に架け替えられ、現在の「まんなか橋」となっている。

 「まんなか橋」まで来たら、橋の袂にあるという店舗の外壁に目を向けてみて欲しい。すると、王冠をかぶった男性が舌を出してているマスクが目に入るはずだ。
これは「Lällekönig」(写真右下)と呼ばれ、バーゼルの言葉で「舌を出した王様」を意味している。

 実は、グロースバーゼルとクラインバーゼルは昔から仲が悪く、何かにつけて張り合ってきた。これはその象徴とも言える物の一つで、このアッカンベーはクラインバーゼルに向けられている。ちなみに、軒下のマスクは時計仕掛けになっていて、10秒毎に舌を出す。現在、ここに飾られているのはレプリカで、オリジナルは歴史博物館に保存されている。

 だが、舌を出されてるクラインバーゼルも、大人しく引き下がっているわけではない。
クラインバーゼルでは、毎年1月に「フォーゲル・グリュフ」と呼ばれるカーニバルが開催される。これは、紋章にもなっているフォーゲル・グリュフ(半鳥半獅子)、ヴィルト・マァ(野生の男)、ロイ(獅子)が、ドラムバンドを旗持ちを率いてクラインバーゼルを練り歩き、その脇で「ウェリス」と呼ばれるひょうきん者が貧しい町のために寄付を集めるというもので、舌を出した王様 祭りはライン川の両岸につながれたボートの筏に乗ってヴィルト・マァが登場することから始まるのだが、その際にヴィルト・マァがグロースバーゼルに尻を向け、クラインバーゼルの人々に代わって「お返し」をするのだという。

 「Lällekönig」のすぐ近く、ライン川に面した場所にスイス最古のホテル「ル・トワ・ロワ」がある。 あのナポレオンやピカソも宿泊したという名門ホテルだ。「ル・トワ・ロワ」という名はフランス語の「3人の王様」の意で、星に導かれ誕生したイエスの元にやってきた「東方の三博士」を表している。

 バーゼルがドイツやフランスから受けている影響は、何も建物や経済だけに限った事ではない。
フランス文化の大きな影響を受けているバーゼルは、大味と評されるスイス・ドイツ語圏にあって、スイス産はもちろん、近隣諸国から集められた良質のワインと、洗練された繊細な料理が一緒に味わえるスイスきってのグルメシティーなのだ。

 見た目の華やかさよりも内面の質を重んじるという、堅実なバーゼル気質は意外なところにも現れている。
高級レストランともなれば身なりで入店を制限する店が多いヨーロッパにあって、バーゼルには「ドレスコード」というものが無い。バーゼル最古のレストラン「ツム・ゴルデネン・シュテルネン」
これは高級ホテルのレストランも然り。つまり、普段なら「ホテルのレストランは肩が張るから気が引ける」という人でも、気軽にディナーを楽しむことができる。ライン川の夜景を眺めながらエレガントなディナータイムを過ごしたいという人は、先に紹介した「ル・トワ・ロワ」のブラッスリーがお勧めだ。

 スイス第2の都市バーゼルだが、ほんの少し中心部から離れただけで、穏やかな心安らぐ風景に出会える。 そんな静かな場所で、ゆっくり食事を楽しみたいという時にお勧めしたいのが、現代美術館のすぐ近くにある「ツム・ゴルデネン・シュテルネン」だ。

 1412年に開業した「ツム・ゴルデネン・シュテルネン」(写真左)は、バーゼル最古のレストランだ。長い歴史を誇るレストランだがスタッフは実にフレンドリーで、堅苦しさを感じさせない正統派のコンチネンタル料理を提供している。
春から夏にかけてはテラス席もオープンする。ライン川を眺めながらテラス席でワイングラスを傾ければ、真のバーゼルの魅力が感じられるに違いない。 対岸のイタリア大使館の近くから渡り舟を使えば、レストランの傍に着岸できるので、クラインバーゼル散策と組み合わせてみると良いだろう。

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