リンツは、宗教改革の時代にヨハネス・ケプラーが天文観測に従事した町でもある。
そこで、第一部で紹介したレーゲンスブルクとも合わせて楽しめる、ケプラーと関係のある見どころを紹介しよう。
◆ ケプラーの足跡をたどる休日「ケプラー・ホリデー」
リンツはケプラーがリンツ大学で惑星の軌道計算をしたことで有名だが、ケプラーが14年間住んでいたこの町にはケプラーに関連した場所がたくさんある。では、旧市街の中央広場にある観光案内所から、ケプラー散歩に出てみよう。
まず観光案内所が入ってる建物に向かって右手にある小道を、少し入った左側にあるのがケプラーの家。入口にプレートが掛けられているが、うっかりすると通り過ぎてしまうような建物だ。
ここはケプラー・サロンとも呼ばれている。欧州文化都市になった2009年から、科学をわかりやすく説明する仕掛けがイスに施されているのだというが、訪れたこの日はあいにく閉まっていた。
ケプラーの家を後にしたら、中央広場へと戻って旧市庁舎のアーケードを覗いてみよう。ここには、ケプラーのポートレートが掲げられている。2009年には旧市庁舎にあるアクスティコンで、音楽と占星術にも精通していたケプラーの『ハルモニカエ・ムンディ(世界の調和)』に関連したイベントが開催されていたが現在は休館中だそうだ。
月の動きを解き明かす月時計のチェックもお忘れなく!
さて、市庁舎を出たら脇道に入り、Dametzstrasse沿いにあるノルディコへ足を進めてみよう。現在ここは市立博物館となっているが、その昔はイエズス会の寮であった。また、宗教改革の時代にはケプラーはここで働き、1619年に主著である『ハルモニカエ・ムンディ』を完成させたという。この博物館では、リンツ市の歴史が紹介されている。
次に目抜き通りのラントシュトラーセを通り越し、ステンドグラスにケプラーが描かれているという新大聖堂(マリーエン・ドーム)へ。
堂内にはたくさんのステンドグラスがあるが、ケプラーが描かれているのは祭壇に向かって左側、後ろから3つ目のステンドグラス。
右側の下から4枚目のパーツに、紫のマントを羽織り望遠鏡と地球儀を手にしたケプラーの姿が描かれている。また、大聖堂の近くにあるリンツ州立図書館には、ケプラー直筆の資料やケプラーに関する書籍がたくさん保管されている。
新大聖堂の見学が終わったら、ヘーレンシュトラーセ沿いにドナウ川に向かって歩いていくと、オーストリア屈指の美しいルネサンス宮殿と言われている州庁舎ラントハウスがある。
ケプラーはこの建物のホールで講義を行っていた。回廊に囲まれたパティオにある、7つの惑星の擬人像と紋章で飾られた「プラネーテンブルネン(惑星の泉)」も必見だ。
ラントハウスを出てプロムナード沿いに歩いていくと、リンツ州立歌劇場がある。ここでは世界天文年であった2009年、ケプラーの生涯をえがいたフィリップ・グラスのオペラ『ケプラー』が上演された。
散歩の最後には、城塞にある城博物館(オーバーエスタライヒ州立博物館)へ立ち寄ってみよう。
この博物館では先史時代、古代ローマ、中世、民俗学など、膨大なコレクションが展示されている。
2010年1月17日には新たにアッパー・オーストリアン・テクノロジーの部屋が加わり、ここにはケプラーに関する展示やフィルム上映なども行われるようになった。また、城の公園にはケプラー実物大の銅像が置かれている。
この他にも少し離れた場所には、ケプラー天文台やケプラーの名を冠したヨハネ・ケプラー大学などがある。
ドナウの橋向こうにあるアルスエレクトロニカセンターでは、ケプラーの世界を3Dで再現したツアーなども実施されているが、こちらはグループのみに対応している。
(写真左上:旧市庁舎のパティオ/写真右上:ラントハウス/写真左下:リンツ州立歌劇場/城塞にある城博物館)
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