鉄道で巡るドナウ世界遺産の旅



ウィーンを起点に楽しむ世界遺産
〜 グラーツ旧市街 2 〜


写真:イタリア・ルネッサンスの傑作と言われる「州庁舎の中庭」
 

ハプスブルク帝国時代の面影が色濃く残る、オーストリアの奥座敷グラーツ。旧市街は交通量も少なく、見どころもコンパクトにまとまっていて町歩きに最適だ。ここではグラーツの魅力が満喫できる、旧市街の散策コースをご紹介しよう。なお、所要時間は2時間程度となっている。
 


 ◆ 旧市街巡りコース 前半

    州庁舎→壁絵の家→中央広場→ドイツ騎士団の中庭→階段教会→ザウラウ宮殿→
    宮廷御用達のパン屋→王宮→王宮庭園


 さて、町歩きはヘレンガッセにあるツーリストインフォメーションの前からスタートしよう。
グラーツの街角には、美しいパティオを持つ建物がたくさんあり、そのうちの幾つかを旧市街巡りのコースで訪れることができる。

 その一つがツーリストインフォメーションがある「州庁舎」だ。この建物には、イタリア・ルネッサンスの傑作と言われるドメニコ・デラリオ作の柱廊をめぐらせた中庭がある。円窓で飾られた建物二は、シュタイヤマルク州政府の会議室がある。また、冬期には氷で造られたオブジェが展示されている。

 この州庁舎の通り向かい(ヘレンガッセ7番)には、一際目を引く建物がある。それがファサードにギリシャ・ローマ神話の神々が描かれた「壁絵の家」と呼ばれる建物だ。壁のフレスコ画は、1742年にバロックの巨匠、ヨハン・マイヤーによって描かれた物で、この建物のパティオには有名なヘルツォークホーフ(侯爵の中庭)がある。また、その隣の建物(ヘレンガッセ6番)から入った場所にも、ジェネラリホーフという美しいパティオがある。

 これらの美しいパティオを見たら、中央広場へと移動しよう。
町の中心部にあるこの広場1160年に誕生した広場で、には、「シュタイヤマルクの王子」と呼ばれたヨハン大公を追悼し、1878年に造られた噴水がある。大公の足元に傅く4人の女性は、旧シュタイヤマルク領を流れていたムーア、エンス、ドラウ、サンの4つの大きな川を象徴している。また、この広場から見える「ルエッグハウス」は、中央広場を囲むファサードの中でも特に豪華でお洒落と言われている。

 中央広場の南側にあるのが市庁舎だ。当初は1550年にルネッサンス様式の市庁舎が建てられたが、1806年に増築された際に新古典様式に、さらに1887年に行われた大幅な改築で、現在見られるようないくつもの塔を持つ歴史主義様式の建物となった。

 中央広場から緩やかに上るシュポールガッセを歩いて行くと、ホーフガッセの少し手前右にあるアーケードをくぐった場所に、ゴシック様式の柱廊がめぐらされたパティオがある。中庭全体にムーアノッケルと呼ばれる石が敷かれたこのパティオは「ドイツ騎士団の中庭」と呼ばれている。

 再びアーケードをくぐりシュポールガッセへ戻ると、すぐ先の左側に「シュティーゲンキルヘ」という階段教会がある。
シュロスベルクの南側、アウグスティヌス修道院の後ろに隠れるように建っているこの教会の名が古文書に登場するのは1343年のこと。グラーツ最古の教区教会と言われ、イベントなどの催しで学生がよく利用している教会だ。建物内にある階段を上って行った先に、壁にあるモダンな絵画が目を引く礼拝堂がある。

 階段教会の少し先には「ザウラウ宮殿」がある。これは1566年当時、ヴィンディッシュグラーツ出身のパンクラッツ氏が町にあった外壁の側に建てさせた4つの翼部からなる宮殿で、軒下には伝説にもなっているトルコ人兵士の像がある。

 シュポールガッセを少し戻りホーフガッセに折れると、すぐ右に金箔の双頭の鷲が掲げられた立派な木製の玄関がある建物が目に飛び込んでくる。これが宮廷御用達のパン屋「エーディッガー・タックス」だ。
この店では、皇帝時代から続く「シシーのキス」や「皇帝ラスク」といったパンや焼き菓子が販売されている。

 ホーフガッセをさらに進んでいくと、左手にフライハイツプラッツと擬古典様式で建てられた劇場がある。正目に見えてくるブルクトア(王宮の門)の手前に「王宮」への入口がある。

 この王宮は、当時シュタイヤマルクの統治者であった(のちに皇帝となった)フリードリッヒ3世が、1438年から1452年にかけて造らせたもので、のちに皇帝マキシシリアン1世によって拡張された。王宮の奥の中庭に通じる右側通路脇には、1499年に造られたゴシック末期の石工芸術の傑作と言われる二重螺旋階段がある。王宮の主な部分は19世紀に撤去され、現在はシュタイヤマルク州知事の官邸として使用されている。

 この王宮の裏手側、ブルクトアをくぐった場所に「王宮庭園」への入口があり、その先は「市立公園」へと繋がっている。市立公園には、1873年にウィーンで世界博覧会が開催された際に購入された噴水がある。
(写真右上:ヘルツォークホーフ/写真左上:王宮=州知事官邸/写真右下:王宮庭園)
 

(写真:左からドイツ騎士団の中庭/階段教会/エーディッガー・タックス)


 ◆ 旧市街巡りコース 後半

    大聖堂→霊廟→神学校→グロッケンシュピール広場→メール広場&フェルバー広場→
    シュテファンプファー通り→市教区教会→オペラハウス→州立武器博物館


 さて、公園の散策が終わったところで、再びブルクトアをくぐり王宮へと戻ってこよう。
この王宮の通りを挟んだ向かい側にあるのが「大聖堂」だ。
これは12世紀に建てられた教会の跡に、皇帝フリードリッヒ3世が王宮礼拝堂として1438年から1462年にかけて建造させたもので、後期ゴシック様式の堂内には豪華絢爛なルネッサンス様式のチェストや、ピエトロ・デ・ポミスによる祭壇画などが飾られている。

 大聖堂の南側左手、小さな張り出し屋根の下にあるフレスコ画は、1480年にシュタイヤマルクを次々に襲った3つの苦難を描いた『国三重苦画』。1485年に描かれたこの後期ゴシックのフレスコ画は、グラーツに現存する最古の街図と言われている。この聖堂は、1786年から司教座聖堂となっている。

 大聖堂のすぐ横にあるのが、初期バロックの傑作に数えられるハプスブルク家最大の「霊廟」。
オーストリアの覇者としてグラーツに滞在した皇帝フェルディナンド2世が、1614年から1638年にかけて造らせた霊廟で、設計はイタリアの宮廷画家であったジョバンニ・ピエトロ・デ・ポミスが手がけた。霊廟はカタリーナ教会と地下礼拝堂で構成されており、霊廟の丸天井には十字架と帝国の表章が見られる。

 霊廟の斜め向かいにあるファサードの裏手にあるのが、イエズス会の集会所だった場所。ここにはルネッサンス様式のパティオがある。現在は「神学校」になっていて、その隣には1585年に創立された「旧大学」がある。

 神学校の中庭を出て、右にあるアブラハム・ア・サンタ・クララ・ガッセを抜けると、グロッケンシュピール広場にでる。
この広場には、当時の館主であったゴットフリード・シモン・マウラーが1903年から1905年にかけて作らせた大きな仕掛け時計があり、11時、15時、18時の毎日3回塔の扉が開き、民族衣装を着た木彫りの人形が鐘の音を合図に現れる。

 この近くにあるメール広場フェルバー広場周辺には、レストランやカフェ、バーがあり多くの人で賑わっている。このエリアは、楽しさのあまり一度足を踏み入れると何時間も姿を消してしまう人がいることから「グラーツのバーミューダ三角形」と呼ばれている。ここからは、ルネッサンス様式の建物と近代的な建物「M1」が見える。

 グロッケンシュピール広場から続く小道エンゲガッセを抜けると、シュテファンプファー通りに出る。
この通りにはモダンなブティックや有名なブランドショップが軒を連ね、グラーツのショッピングの中心となっている。

 再びヘレンガッセに出てオーパーリングの方面に行くと、左手に「市教区教会」がある。
ユダヤ地区の小さなゴシック礼拝堂として始まった教会で、ドミニコ会の修道院だった時代にバロック、そして新ゴシック様式へと改装された。教会のガラス窓には、暗い過去を思い出させるヒットラーとムッソリーニの絵が描かれている。

 その先のオーパーリング通りには、1899年にウィーンの有名な劇場建築家であるフェルディナンド・フェルナーとヘルマン・ヘルマーによって造られた「オペラハウス」がある。オーストリア国内の歌劇場として、ウィーン国立歌劇場に次ぐ規模を誇る。

 建物はグラーツ出身のフィッシャー・フォン・エアラッハにヒントに設計されたもので、バロックとロココ調の装飾を施したホールは、美しく調和の取れたホールの一つと言える。オペラハウスの前には、1992年芸術祭「シュタイマルクの秋」の際に建てられた「光の剣」と呼ばれる巨大なオブジェがある。
また、オペラ座の裏手にあるカイザー・ヨーゼフ広場には、グラーツで一番大きな農産物のマーケットが立つ。

 ヘレンガッセへと戻り、中央広場に向かってあるいて行くと、ツーリストインフォメーションのすぐ近くに「州立武器博物館」がある。
アントニオ・ソラールによって1643年から1645年に建てられたこの建物は、トルコの襲撃に対する武器の常備庫として造られたもので、4つのフロアーに16世紀から19世紀まで約3万2,000点の武器や軍需品が納められている。

 展示されている武器は、現在も定期的に手入れが行われていて、建設当時あから途切れなく保ち続けられている世界唯一の武器庫と言われている。館内はガイドツアーでのみの見学となっているので、最初に立ち寄ってツアー催行時間を確認してから町の散策に出かけると良いだろう。
(写真右上:大聖堂内部/写真左上:ハプスブルク家の霊廟/写真右下:オペラハウス/写真左下:州立武器博物館)
 


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グラーツ観光局

 
Useful Links

レイルヨーロッパ
www.raileurope.jp
 
オーストリア国鉄
www.oebb.at
 
オーストリア政府観光局
www.austria.info/jp
 
グラーツ観光局
www.graztourism.at
 
階段教会
Stiegen-kirche St. Paul
graz-seckau.at/pfarre
/graz-stiegenkirche

 
大聖堂
Dom zu Graz
www.domgraz.at
 
エーディッガー・タックス
Hofbakerei Edegger-Tax
www.hofbaeckerei.at
 
オペラハウス
Oper Graz
www.theater-graz.com/oper
 
州立武器博物館
Landeszeughaus
www.museum-joanneum.at
 

 
Access

鉄道:ウィーン・マイトリング駅からEC/ICで約2時間30分。リンツからICで3時間弱、もしくはREXとECを乗り継ぎ約3時間30分。

 
 
Contact

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