鉄道で巡るドナウ世界遺産の旅



ドナウの真珠、ブダペスト 3


写真:欧州最大規模の総合温泉施設「セーチェニ温泉」
 

温泉の町としても知られるブダペスト。源泉の数は全80ヶ所にもおよび、そこから毎日7千万リットルの湯が湧き出すまさに温泉天国なのだ。市内では2世紀に造られたローマ式風呂も発掘されているが、温泉文化が広まったのはトルコ統治時代の16世紀から17世紀にかけてだった。ブダペスト市内には、トルコ時代の建造物が残された温泉が4つある。温泉大好きの日本人としては聞き逃せない旅の楽しみだ。そこで今回、ブダペストに数ある温泉施設の中から、カップルにお勧めの施設を一つ選んでご紹介することにしよう。
 


 ◆ カップルの強い味方!セーチェーニ温泉

 緑豊かな市民公園の中にある「セーチェーニ温泉」は、1879年に源泉が発掘された欧州最大規模の総合温泉施設だ。

 1913年に造られたネオバロック様式の建物には、大小とりまぜ8つの浴槽がある。うち4つは男女別。泉質はフッ化物を多く含む炭酸水素塩や硫酸塩温泉で、関節炎・胃腸炎・呼吸器疾患などへの効能が確認されている。お湯の温度は日本人の感覚からするとかなり低めだが、源泉の温度はブダペストで最も熱い75度となっているため、1927年に増設された中庭のプール(露天風呂)は冬でも営業している。ここで湯につかりながら指す「風呂チェス」でも良く知られている。

 ブダペストには他にもたくさん温泉があるが、営業時間が短かったり、男女で営業日が異なったりと、カップルで訪れたい人には難が多い。だが、このセーチェーニ温泉では水着の着用が必要となるが、源泉温度の高さから年間を通じて混浴が楽しめる屋外プールが営業されている。しかも夜10時まで営業しているので、町歩きを十分に楽しんだ後でも温泉にゆっくり浸かって疲れた体を癒すことができる。また、地下鉄M1でセーチェーニ・フュルドゥー駅で下車してすぐという立地の良さから、冬でも湯冷めすることなく電車に乗ることができるというのも大きな利点だ。

 

(写真:左からセーチェニ温泉ホール/ホールにある案内版/チェスを楽しむ入浴客)


 さて、ここでセーチェーニ温泉のシステムについて簡単に触れておこう。
セーチェーニ温泉には屋内用と、屋外用の2つの入口がある。屋内の営業は夜7時までとなっているので、プールだけを利用する場合は建物の裏手側にある屋外用の入口へ向かう。

 窓口は入浴料とキャビンなどの使用料のみを精算する。タオルについてはレンタル可能だが水着は持参。できればビーチサンダルも持参すると良い。更衣室への入口は左右の2ヶ所があるが、日本の銭湯やクアハウスのように男女別にはなっていない。どちらから入っても同じなのだが、理由は後ほど説明するとして冬場は右側の利用をお勧めする。

 キャビンを利用する場合、中に入ったら係員を呼びチケットを見せキャビンを割り当ててもらう。このキャビンの鍵の開け閉めは、すべて近くにいる係員が行うため、鍵を手渡されることはない。また、タオルは地下にある専用窓口で貸し出している。そこでレンタル料とデポジットを支払う。このデポジットは、返却時に返金してもらえる。ドライヤーは施設内に完備されているので持参しなくても大丈夫だ。

 水着に着替えたらプールへと移動しよう。中には3つのプールがあり、それぞれ温度が異なる。夏はどこから入っても問題ないが、一番暖かいプールは右手側の入口から出た正面にある。先ほど右手側の更衣室を進めた理由はここにある。さすがに水着で外を歩くには、冬のブダペストの夜は寒すぎる。

 昼間は家族連れなどで賑わっているというが、夜は大人の社交場に大変身、ムードも満点だ。
お湯に浸かりながら名物のチェスを楽しむ人、彼女をお姫様だっこしてあま〜い二人の世界に入ってしまったカップル、そしてカップルたちを羨ましそうに眺めている男性客の姿などなど、日本の温泉ではまず目にしないような光景が広がっている。

 しばらくすると、このプールがカップルに甘い時間を誘惑する強い味方であることが分かった。
それはこのプールの深さ。中央にいくに連れてだんだん深くなっていて、中央部分は最低でも身長が160センチはないと水没してしまう。立って呼吸をするには165センチ位ないと辛い。
そのため背の低い女性たちは、男性に抱っこやオンブをしてもらわないとプール中央脇にあるジャグジーに近づくこともできない。後は自力で泳いで移動するか、“プールサイドの花”となるしかなさそうだ。

 温泉の温度は低いとは言え、1時間も浸かれば体はポッカポカだ。温泉を存分に満喫した後は、旅の終焉にドナウ川に浮かぶ美しい夜景を眺めながら、上質なハンガリー産のワインと美食に酔いしれてみてはいかがだろうか。

 
 


〔魅惑の国、ハンガリー〕

 ドナウ川流域の町とウィーンを起点にして楽しめる旅を第1部と2部に分けてご紹介して参りましたが、皆様お楽しみ頂けましたでしょうか。また、お役に立つような情報はございましたでしょうか。

 今回の旅はこのブダペストで終わりますが、ここでご紹介してきた町はほんの一握りにしか過ぎません。レイルヨーロッパにはご利用に応じて選べる豊富なパスがたくさん用意されていますので、次回はその中の一つを活用して、ご自身で《ドナウ発見の旅》を楽しまれてみて下さい。

 ハンガリーというのは実に魅力的な国です。思わず目を奪われてしまうような美しい風景に出会ったかと思えば、旧社会主義時代を彷彿とさせるような産物にも数多く出会えます。

 中でも一番印象的だったのが地下鉄でした。
爆音を響かせ走る地下鉄の車体は、薄暗い車内に白熱灯、ビニール張りの座席、そして吊掛駆動の旧ソ連製(写真右)。
初めてこの地下鉄に乗った時に脳裏をよぎったのは、昔観た旧ソ連時代を描いた映画の一場面と、旧東ベルリンのUバーンでした。
ヨーロッパ大陸で一番古いこの地下鉄も、世界遺産の一部というのですから本当に驚きです。

 そうかと思えば遊園地のような地下鉄の駅があったり、お年寄りや子供は乗れるのかと思わず心配になるような超高速エスカレーターが現れたりと、とにかく(良い意味で)脳が刺激されっぱなしでした。

 人々はラテン民族のようなノリは感じさせませんが、心には情熱が漲っていて賑やかなことが大好きな民族だと言われています。また、同じアジア系の民族であるからかも知れませんが、実際に町で出会った人々は皆親切で、一部の欧米諸国にみられるような人種差別を受けることは一切ありませんでした。

 それは一見怖そうに見える警備員さんも同じです。少々ぶっきらぼうな感じはありますが、言葉の端々から温かさが伝わって来ます。一丸となって幾多もの苦難の歴史を乗り越えてきた国民だからこそ、その懐の深さや温かさがもDNAにしっかりと刻まれているのでしょう。
ホテルやカフェなどのサービスも実にスマートですし、高級ホテルやレストランでは上質なワインを手頃な価格で楽しむもできます。こうした点については、隣国を上回っている印象です。

 また、彼らは非常に賢く勇敢な国民でもあります。とりわけ語学に関してはズバ抜けた能力があります。どの施設でも結構ですので、機会があればガイドツアーを利用なさってみて下さい。対応するその豊富な言語にきっと驚かされることでしょう。そして、ベルリンの壁崩壊のきっかけを作ったのは他でもない、ハンガリー国民の勇気ある行動であったという事を忘れてはなりません。

 バイエルンからウィーンを経てブダペストへの旅は、奇しくもハプスブルク家のエリザベート皇妃が通ってきた道でもありました。皇妃はハンガリー国民をこよなく愛したと言われていますが、ドナウの旅を通じて皇妃の心が少し理解できたような気がします。

 ハンガリー政府観光局では現在、隣国のスロヴェニア、クロアチア両観光局と協力し、3ヶ国を巡る“パールロード”のプロモーションを展開しています。
この3ヶ国がそれぞれ「ドナウの真珠」「アルプスの真珠」、そして「アドリア海の真珠」と呼ばれていることから、こう名付けられたそうです。

 そして、ブダペストは、その“パールロード”のスタート地点でもあります。こちらの方はまた機会があればご紹介させて頂きますが、興味のある方は上記の観光局まぜ是非お問い合わせをなさってみて下さい。

 ウェブとしては少し多めの文章量となりましたが、最後までお読み下さった皆様、本当にありがとうございました。また、取材にご協力頂きました関係各社の皆様にも心より感謝申し上げます。(旅コム編集部)
 


 
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Useful Links

レイルヨーロッパ
www.raileurope.jp
 
ハンガリー国鉄
www.mav.hu
 
ハンガリー政府観光局
 www.hungarytabi.jp
 
ブダペスト観光局
 www.budapestinfo.hu
 
セーチェニ温泉
Szechenyi Gyogyfurdo
 www.szechenyibath.com
 

 
Access

鉄道:ウィーン西駅からレイルジェットで約2時間45分。

 
 
Contact

ブダペスト観光局
BTH Budapesti Turisztikai
Nonprofit Kft.

Add:1056 Budapest,
Marcius 15. ter 7.

TEL:
(+36) 1 322-4098
(+36) 1 438-8080

 
 
 
 
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