歴史博物館、その裏にある市立博物館レアラーボイトル、ドーム宝物館など、レーゲンスブルクを訪れたら足を運んでみたい博物館や美術館が旧市街にはたくさんある。
そこで、その中からちょっと変わった博物館を2つを選んで紹介しよう。
◆ ケプラー記念館
ヨハネス・ケプラー(1571〜1630)は、1619年にティコ・ブラーエの観測結果を基にした惑星の運動に関する法則を3つにまとめ上げた有名な天文学者である。俗に言うケプラーの法則だ。レーゲンスブルクは、そのケプラーの終焉の地でもある。
ドナウ川に平行するケプラー通りには、ケプラーにゆかりのある建物が二つ残されている。その一つはケプラーが1626年から1628年まで住んでいた2番の家、もう一つが5番にあるケプラーの友人宅だ。ケプラーは1630年、この友人の家で死亡した。その5番の家は、現在ケプラー記念館として公開されている。
館内にはケプラーが生涯大切にしていた惑星の軌道模型や、研究に使用した器具や模型、資料などが展示されている。また、壁に設置されたモニターでは、ケプラーの法則をわかりやすく解説されている。中でも目を見張るのが、角テーブルに描かれたエッチング。これはケプラーが知人に依頼して描いてももらった物の見られるが、まさに芸術の域に達した見事なエッチングだ。
さて、このテーブルの正体は・・・というと、なんとケプラーが作ったカレンダー。テーブルの中心には小さな穴が開けられていて、そこに針のような物をセットしその日の日付を把握していた。もちろん、手動だが、これが実に良くできていている。また、よく見ると曜日はドイツ語で書かれているのに対して、月などはラテン語で書かれているのがその時代を反映していて興味深い。
博物館としては少々こぢんまりとした印象の記念館だが、知的好奇心をくすぐるものがたくさん展示されている。
それらを一つ一つ丁寧に見ていると、なぜか自分まで頭が良くなった気分になってくるから不思議だ。また、この記念館には当時使用されていた家具なども残されていて、ケプラーが生きた中世の生活が垣間見られる貴重な場所でもある。思わず「賢い!」と口にしてしまうような機能的な家具も展示されている。
天文学者としてだけでなく数学者、自然哲学者、そして占星術者としての顔を持つケプラーが、この家で亡くなったのは1630年11月15日のこと。病死だった。遺体はレーゲンスブルク中央駅近くの共同墓地に埋葬。トゥルン・ウント・タクシス城へと続く緑豊かな公園には、ケプラーの記念碑が残されている。(写真右上:ケプラー像/写真左上:エッチングで描かれたケプラー・カレンダー)
(写真:左からケプラー記念館外観/展示品/ケプラーが住んでいた2番の家=ツタの辺り)
◆ 嗅ぎタバコ博物館
もう一つ紹介するのが嗅ぎタバコ博物館だ。
日本ではあまり普及していないこの「嗅ぎタバコ」とは、着火せずに香りを楽しむタバコのこと。細かい粉末を鼻から吸引する。その行為から一般に「スヌッフ」と呼ばれている。
2009年にオープンしたこの博物館は、旧市街の中心ある中世に建築された建物の中にある。
約200年に渡って良質の嗅ぎタバコを製造してきた大手メーカー、ベルナード社がごく最近まで使用していた場所で、最盛期にはここで350人もの職人が働いていた。
部屋は3つ。ここでタバコの葉の発酵や熟成からブレンド、パッキングまでの全ての工程が行われていた。これらの工程で実際に使用されていた器具や道具がそのまま展示されている。今にも労働者の姿が見えてきそうだ。
ブレンド室はさながら理科の実験室のようだ。ここでバニラの風味や、メンソール、コーヒーなどが配合されていた。
嗅ぎタバコは、着火させる一般的なタバコのように喉や呼吸器への負担は全くなく、煙で人に迷惑を掛けることもない。第三者の健康への悪影響も及ぼさず、また場所も選ばず楽しめることから利点も多のだそうだ。
(写真上:葉っぱの発酵と熟成が行われた大きな樽/写真下:展示されている実際に使用された道具の数々)
◆ レストラン・ビショフスホフ・アム・ドーム
ここからは博物館巡りの合間に楽しみたい、グルメやショッピングについて少しお話しをしよう。
まずは腹が空いては戦...、いや街歩きはできぬということで、グルメの話題からだ。
2008年9月のリーマンショック以降、世界中が不況に苦しむ中、経済が緩やかながらも上向き傾向にあるレーゲンスブルクには、とにかく裕福な人が多い。
その市民が先頭となって外食産業を支えていることもあり、決して大きいとは言えない旧市街には、実にたくさんのカフェやレストランがある。なので観光客であっても、食べる場所を探すのにさほど苦労することはない。
食事にあまりを時間を掛けずに名物料理を味わいたい人であれば、ドナウ川沿いのヒストリーシェ・ヴルストキュッヘの炭火焼ソーセージが定番となるが、やはりここは歴史都市レーゲンスブルクへ来たのだから、歴史ある建物でゆっくりと、そしてちょっぴり優雅な気分で食事を楽しみたいという人には、ドーム横にあるレストラン・ビショフスホフ・アム・ドームをお勧めしたい。
ホテルとしても営業しているこの建物は13世紀から16世紀にかけて建造されたもので、その歴史は初代司教にまで遡る。ルネッサンスの影響を受けたアーチ型の窓が印象的だ。店内に仰々し内装は施されていないが、どことなく気品ある風格が漂っている。
このレストランでは、お洒落にアレンジされたドイツ料理が味わえる。日替わりメニューなら10ユーロ前後という手軽さも嬉しい。また、ア・ラ・カルト・メニューからはは、町のもう一つの名物であるナマズ料理も堪能できる。味は淡泊だがボリュームは満点。肉に飽きたという人にはお勧めの一品だ。ここでは、夏には屋外でも食事が楽しめる
(写真右上:観光客でにぎわうヒストリーシェ・ヴルストキュッヘ/写真左上:アーチ型の窓が印象的なレストラン・ビショフスホフ/写真下:ビショフスホフの料理=右2つはナマズ料理)
◆ レーゲンスブルクの秘薬、カルメリテンゲイスト
商業都市の面影を残す旧市街には、多種多様な老舗が軒を連ねている。
さすがにパリやミラノの様には行かないが、さすがにお金持ちの町というだけあってウィンドウに飾られている商品も、心なしかドイツの他の町よりもお洒落感が増してみえる。
とはいうもの、グローバル化が進みどの国のどの町に行っても売っている物が同じだったり、どれを見ても中国製だったり・・・と、お土産探しに頭を悩ませている人も多いだろう。
そこで、ご紹介したいのが “Made in Regensburg” の「カルメリテンゲイスト」だ。
これは1721年からレーゲンスブルクにあるカルメリテン修道院ザンクト・ヨセフで、300年に渡り作られている秘伝の薬。頭や歯など体のどこかが痛む時にお茶に1滴垂らして飲んだり、患部に塗ったりするのだという。なにせ秘薬というだけあって細かい成分や製法については明らかにされていないが、きちんと国からも製薬と販売の許可を受けている万能薬なのだそうだ。
このカルメリテンゲイストは薬局やお土産屋などでも取り扱っていて、旧市庁舎にあるツーリストインフォメーションでも販売されている。
また、レーゲンスブルクの薬局には胃痛やアンチストレスなど、様々な症状に効能のあるお茶が販売されているので、ここでのお土産探しに困ったら薬局を覗いてみるのも一つの手だろう。
こうしたお茶は現地在住の日本人たちの間でも口コミで広がり、愛飲されているそうだ。
(写真右上:レーゲンスブルクの秘薬、カルメリテンゲイスト)
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