エジンバラ城

エジンバラ城


 1995年、世界遺産に登録されたエジンバラは、ロバート・バーンズも『スコットランドの最愛の首都よ・・・』と歌ったスコットランドの首都。その象徴ともいえるのがエジンバラ城だ。


 そこからかつてマーガレット王妃の息子、ディビッド1世の修道院があったホーリルード宮殿へと続く約1マイルの道は、王の馬車が通っていたころから「ロイヤル・マイル」と呼ばれ、スコットランドはこのロイヤル・マイルを中心に政治や経済を発展させ、独自の文化を育んできた。街に残された古い石畳や建物が、中世の面影を今に伝えている。


 現在も政治や商業の中心となっているこの通りには観光の見どころも多い。そこで、エジンバラ観光に欠かせないスポットを紹介しよう。


 

 世界遺産「エジンバラ城」

 エジンバラの岩山(カッスル・ヒル)に威風堂々と聳える、エジンバラ城
7世紀に築かれたこの城砦は11世紀から歴代のスコットランド王の居城となり、スコットランドの苦難の歴史と共に歩んできた。

 城門にはスコットランド王、ロバート・ザ・ブルース(ロバート1世)と、スコットランドの独立をかけて戦った英雄、ウィリアム・ウォーレス(映画『ブレイブハート』の主人公)の像が掲げられ、現在も城内に英国陸軍の中でも最も古い歴史を持つ歩兵連隊「ロイヤル・スコッツ」の本部が置かれている。

 城門をくぐり抜け、アーチ道を進んでいくと見えてくるのが「落とし格子門」だ。
1573年に収束した「ラングの包囲」後に造られた門で、4つの障壁に鉄製落とし格子、さらに3層構造の木製扉で構成されている。ここを通過するのは容易な事ではなかったという。
 この門の横には城の中核である「ロイヤル・パレス」への近道となる「ラングの階段」があり、この落とし格子門はこうした城の構造を巧みに利用して造られた。現在も重い扉を支えた蝶番を見ることができる。

 また、落とし格子門の最上部にある「アーガイル・タワー」は1880年代に増築されたもので、9代目のアーガイル伯爵に因んで名付けられた。ジェームズ7世に対する謀反で唱導したとして処刑されたアーガイル伯爵は、その直前までここに監禁されていたと伝えられている。
 

 
スコットランド王「ロバート・ザ・ブルース」
ロバート・ザ・ブルース像
英雄「ウィリアム・ウォーレス」
ウィリアム・ウォーレス像
落とし格子門


 落とし格子門のすぐ先に見えてくるのが「アーガイル砲台」と「ミルズ・マウント砲台火薬庫」だ。1715年にシェリフミュアでジャコバイトを鎮圧したアーガイル公爵2世、ジョン・キャンベルに因みこう呼ばれるようになった。

 火薬庫は現在カフェとして営業。その右横には「ワン・オクロック・ガン」が設置されている。この大砲は、日曜と復活祭の金曜日、クリスマスを除いた毎日午後1時に火を噴くので、この時間帯に近くにいる人はその轟音にご用心を!

 アーガイル砲台から坂の中腹にあるのが、1742年に要塞司令官用の住宅として建てられた「司令官の邸宅」だ。1935年に儀典用のために再建され、現在は商工の会食堂、および司令官の住居として使用されている。残念ながら一般には公開されていないが、窓からほんの少しだけ室内の装飾が伺える。

 司令官邸宅の裏手左にはナポレオン率いるフランス軍との戦闘の最中に建てられた「新兵舎」と、18世紀から19世紀にかけて起こった欧州の戦争から世界規模での紛争にかかわってきた連帯の歴史を展示した「ロイヤル・スコッツ・ドラゴン近衛騎兵連隊博物館」がある。その向かいにある「ロイヤル・スコッツ連隊博物館」では、最初の戦闘栄誉賞を授与した1680年のタンジールの戦いから、18世紀初頭のマールバラの戦いやワーテルローの戦いや先の大戦に至るまでの同連隊が輝いた148にもおよぶ栄誉の数々が記録・ゆかりの品々が展示されている。館内にはロイヤル・スコッツの象徴ともいえるバグパイプの音色が響いていた。

 司令官の邸宅の右裏手の一角には当初、武器などが収められていた2階建ての武器庫と火薬庫が建設されたが、1897年に火薬庫は取り壊された。その際、武器庫は保存されて陸軍病院に改築され、奥井戸のある庭には遺体安置所が設置された。これらの建物は現在も保存され、17世紀から今日に至るまでのスコットランドにおける軍隊の暦所を展示した「国立戦争博物館」として使用されている。館内にはオーディオ・スペースもあり、インクランドとの戦争などのビデオも上映されている。
 
 

ガイドの二ジェルさん
ロイヤル・スコッツ本部
セント・マーガレット礼拝堂内部


 エジンバラ城には、エジンバラ最古といわれる建物がある。それが「セント・マーガレット礼拝堂」だ。
1130年頃、ディビッド1世によって王室メンバーの私的な礼拝堂として建設されたもので、待ち伏せ惨殺された夫マルコム3世の死に悲しみにくれ、1093年に城内で死亡した母親であるマーガレットに捧げられた。
現在は独立した空間になっているが、かつてはホールやホテルを備えた大きな王室用の住居の一部で、イングランドのノルマン式タワーハウスのようではなかったかと推測されている。

 そのセント・マーガレット礼拝堂の前にある大砲が「モンス・メグ」だ。
これは1457年にスコットランドのジェームス2世に、姪の夫であるバーガンディのフィリップ公爵が寄贈したもので、1449年にベルギーのモンスで作られたことからこう呼ばれるようになった。
重さは6トンで、330ポンド(150キロ)の砲弾を発射することができたが、100人の男が引っ張っても1日に5キロ程度しか運ぶことができず非常に扱い難かったという。

 やがて戦闘の日々も終わり、1550年には軍事活動から退役。それ以後は祝砲として使用されるようになり、1558年にはスコットランド女王、メアリーの成婚を記念して大砲の音を轟かせた。そして、最後の祝砲となったのは1681年10月14日のオールバニ公爵(後のジェームス7世)の誕生日だったという。

 その後、砲身が破裂したことから1754年まで火薬庫の傍らに放置されていたが、スコットランドの脱軍事化を図った武器解除行動の犠牲となってロンドン塔へと運ばれた。だが、幸いにもその大きさから溶解を免れ、70年後にエジンバラ城へと戻され現在に至る。
 
 

バーガンディのフィリップ公爵から
寄贈されたモンス・メグ

 
バース・チェンバーにある
ホリールード宮殿の紋章

© Edinburgh Castle
バース・チェンバー
天井のモノグラム

© Edinburgh Castle


 エジンバラ城の最大の見どころといえば、やはり王族の住居となっていた「ロイヤル・パレス」だろう。 ここにはわずかではあるが、ジェームズ1世のために建てられた王の寝室兼居間にオリジナルとなる石造り天井の地下室が現存している。また、地上階内にはオリジナルの暖炉や、城の東側に突き出した窓にある3つの支柱が当時のまま残されている。これらの突き出し窓は、王家の人間が美しい市街地の眺めを楽しめるようにと造られたが、「ラングの包囲」を終結させることになった砲撃で大きな損傷を受けた。

ジェームス6世バース・チェンバー エジンバラ城の歴史において最大の出来事といえば、1566年6月19日のジェームス6世(イングランドのジェームス1世)の誕生だ。1566年の春、この城に住居を定めていたスコットランド女王メアリーは、この城の一室(写真右:© Edinburgh Castle)でジェームス6世を出産した。物音一つしないこの部屋で目を閉じていると、今にもジェームス6世の産声が聞こえてきそうだ。この寝室の天井は、後に王の訪問にあわせて装飾されている。天井のモノグラムのMRはメアリー1世を、IRはジェームズ6世を意味している。

 ここには残念ながらメアリー女王の住居で現存するものは何も残されていないが、クラウン・スクエアから「メアリーの部屋」に続く出入り口には、金箔が施された「1566」という年とジェームス6世の両親のイニシャル「MAH」(Mary & Henry)を絡めたパネルを見ることができる。

 ジェームス6世がここに戻ってきたのは、自身の50回目となる誕生日の祝典に出席するためだった。
ここに滞在した最後の君主はチャールズ1世で、スコットランド王戴冠式の前夜1633年6月19日までと伝えられている。

 ロイヤル・パレスのすぐ横にある「オナーズ・オブ・スコットランド」も必見だ。
このオナーズ・オブ・スコットランドとは王冠、笏(しゃく)、御剣を射す、ブリテン島最古の戴冠用宝玉のことで、ここに展示されている王冠は1540年にジョン・モスマンという金細工師によってジェームス5世のために作れられた。
古い王冠の金を溶かしたものにスコットランド産の金が混ぜられ、周囲にまばゆいばかりの宝石がちりばめられた王冠は、近くでみるとため息がでるような美しさだ。この王冠は、ホリールード寺院で行われたマリー・ド・ギーズ妃の戴冠式で使用されたという。
 
 

儀式などに使用される
グレート・ホール内部
スコットランド国立戦争記念館
© Edinburgh Castle
戦争記念館に納められた棺の数々
© Edinburgh Castle


 ロイヤル・パレスの左側には、現在も儀式などに使用されている「グレート・ホール」がある。
中世のハンマービーム天井は、英国で特に重要とされる財宝の一つで、メインのトラスを支える石造りの受材にはルネッサンス彫刻が施されている。これは英国で現存する最古のものと言われているので忘れずに見ておこう。

 そのグレート・ホールの正面にあるのが「スコットランド国立戦争記念館」だ。
「ジャスト・ウォー」を象徴した彫刻で溢れた外観が印象的な建物で、窓や壁には「悪徳」と「美徳」を象徴する動物達が描かれている。中でも、入口上の不死鳥から立ち上がっている彫刻は、魂が不滅であることを表しているという。ここには先の大戦や1945年以降の軍事行動で亡くなった人々も祭られている。

 エジンバラ城はいわゆる贅を極めた城とは全く異なるが、城内を巡っているだけでスコットランドの歴史の重みが感じらる見ごたえのある城だ。城をじっくりと見学したいという人は、最低でも2時間は見積もっておこう。城内を効率よく見学したいという人は、ガイドツアーへの参加がお勧めだ。
 



スコッチ・ウイスキー・ヘリテージセンター

 バーンズも愛したスコットランドの酒といえば、スコッチ・ウィスキー。エジンバラ城を出て少し歩いた右手側にあるのが「スコッチ・ウイスキー・ヘリテージセンター」だ。ここでは、スコットランドが世界に誇るそのスコッチ・ウィスキーの魅力や秘密に迫ることができる。

 このセンターは一般的な資料展示が行われている施設とは異なり、「ウイスキー樽」に乗ってスコッチ・ウイスキーの歴史を旅できる他、ヘリテージセンターに住むマスターブレンダーの幽霊が、ウイスキー職人としての生活についてやブレンディングの秘訣を紹介してくれるなど、アトラクション感覚で楽しめるのが特徴だ。

 また、ミニ蒸留所では穀類ウイスキーの製造過程を見学し、自分の鼻でモルトウイスキーと穀類ウイスキーの違いを嗅ぎわけるなど、五感を使って楽しむこともできる。

 この他にも、厳選された食材を使ったユニークなスコットランド料理が楽しめるレストラン・バー「アンバー」やカフェ、300種類にもおよぶスコッチウイスキーとスコッチウイスキー・リキュールなどを販売するウイスキーショップも併設されている。エジンバラ城観光とセットで訪れたい場所だ。


 
  BACK  |  NEXT
 

 
 

Copyright Tourism World Inc. All rights reserved 許可なく転載を禁じます