伝説の怪獣との遭遇を予感させる波立つ「ネス湖」

 

新鮮なホタテに舌鼓

 ツアー最終日。朝食を済ませ、地元の漁師さんの漁船へと乗り込む。

 ロンドンが20年ぶりの寒波に襲われたこの日、ハイランドも朝から厚い雲に覆われ、カロン湾をなでる風が冷たい。指先がかじかんで、カメラを持つ手が振るえる。

小雪が舞い始めた。この悪天候に肩を落としているかと思いきや、意外にも様々な天気のハイランドの風景に出会えたと一様に喜んでいた。

 湾に出て程なく船が止まり、漁師さんが仕掛けてあるザブトン籠を引き上げる。中にはホタテ貝。大量だ。漁師さんはその中の一枚を手にとり、殻を開いて中を見せてくれた。

 「食べてみる?」
貝中腸腺を取り除き、前に差し出す漁師さん。
辺りを見渡すと、皆ギョッとした顔をして硬直。無理もない。

 ならばと、自ら名乗りを上げ先陣を切る。
貝柱を手に取り、口へと放り込む。ホタテ特有のプリプリとした食感と、口に広がるほのかな甘さが堪らない。

 「甘くて美味しい!」
その一言に皆が反応した。

 毒味が終わったのを見て安心したのだろうか。
「えっ?甘いの?」と言いながら、一人二人と手に取って口にし始める。
それでも若干名は口にすることはなかったが、皆初めての体験に大喜び。もちろん、魚介大好きの私も大満足だ。
 

ホタテを捌いてみせる漁師さん
クラブのブレスレッドに大はしゃぎ
新鮮ホタテの試食会


大興奮!イルカに遭遇!

 船の先端から湾を一望しようと、操縦席の外にある足場をカニ歩きで渡る。
すでに数名の先客がいたが、その中の一人が船の下を覗き込んでいた。
気になって横から覗き込む。

そこにいたのは何とイルカ。しかも2頭いる。つがいだろうか。
その2頭のイルカが戯れるように体を交差させながら、船にピッタリとついてくる(写真右)。

 それにしても、こんな北の海にイルカがいるとは。驚きと感動で言葉も出てこない。その何とも愛苦しい姿に我を忘れて見入った。

 船の先端に移動してから10分ほどで、イルカたちは方角を変え波間に消えていった。
ちょうどその頃、船の後方から何やら良い香りが漂ってきた。
匂いに誘われるように船の後方に戻ると、漁師さんがさっき水揚げしたホタテをガーリックでソテーしていた。スコットランド版漁師料理だ。フライパンに皆で手を伸ばす。
フライパンはあっという間に空。最後にホタテの焼き汁が残ったが誰も飲もうとしなかったので、結局私がもらうことに。
豪快にフライパンに残った汁を飲み干し、空になったフライパンを漁師さんに差し出す。
すると漁師さんがニヤニヤしながら「洗っておいて」の一言。

 洗うってつまり・・・

どこを見てもフライパンが洗えるような場所は一ヶ所。そう海だけ。

 届くかな〜???

持っていたカメラを近くの人に預け、船から身をのり出してみる。
どうにか水面にフライパンが届いたが、水の抵抗でフライパンが引っ張られて重い。
海に落としてしまわないように、ギュッとフライパンを握りしめ無事洗浄完了。
洗ったフライパンを漁師さんに手渡すと、何故か皆からの拍手。一体どれだけ身を乗り出していたのだろう。

 船が岸に戻り、礼を言って船を降りる。
先に戻っていたメンバーが用意してくれた熱々のミルクティーで出発まで暖を取る。
冷えきった身体はもちろんのこと、心までほんわかと温かくなってきた。
 


伝説の湖「ロッホ・ネス」

 2日間お世話になったストロームフェリーに別れを告げ、最終日のツアー再開だ。
まず最初に訪れのが、あのネッシーの伝説で有名な「ネス湖」。英国最大の淡水湖だ。

 小雪の舞っていたストロームフェリーとは一転、ここでは青空がのぞいていた。
車を降り、足早に湖畔へと移動する。

 伝説の怪獣、ネッシーは本当に存在するのか?!
 波立つ湖面にネッシー出現の予感。
 期待が高まる。

 だが、その望みは儚くも散ってしまうことに・・・。
湖を波立てていた身を切るような冷たい風が、心の中に吹き抜けていった。
 

ネッシー親子のオブジェ
ネス湖周辺の穏やかな風景
「カロデンの戦い」古戦場


敗北と独立への願い

 ネス湖の近くのパブで軽いランチを済ませた後、次の目的地に向けて車がひた走る。
やって来たのは、インバネスから10キロほどの場所にある「カロデンの戦い」の古戦場だ。

 1746年、ここで英国最古とされる内乱、ジャコバイトによる最後の組織的抵抗が勃発。大勢のスコットランド人が敵味方に分かれ戦い、数多くの尊い命が失われた。

 この敗北によってジャコバイト運動はほぼ鎮圧されることになったのだが、イングランドは反乱の再発防止のためキルトとタータンを奪うというスコットランド人にとって屈辱的な制裁を加えた。
その結果、イングランドへの対立を深めてしまうことになった。

 太陽が傾き始めた冷たい荒野に、はためくスコットランド国旗。
その戦いの様子を熱く語るブルースの横顔にも、怒りともとれる悲しげな表情が見え隠れしていた。

「スコットランドの人は、英国から独立したいと願っているの?」

メンバーの一人が問いかける。その言葉に

 「もちろん。簡単なことではないけど、いつかきっと実現してみせる・・・。」

そう答えるブルースの目から独立への切なる願いと、祖国に対する深い愛情、そしてスコットランド人としての誇りが感じられた。


 インバネスを出発して約4時間。降りしきる雪の中、車を走らせエジンバラへと帰ってきた。
車が停止すると同時に、感謝の意を込めてブルースへ拍手が贈らる。楽しかった旅がとうとう終わってしまった。
荷物を下ろし、別れを惜しみつつそれぞれの場所へ戻っていく。

 彼らと別れるのは残念だったが、不思議と寂しさはなかった。
ここに来れば、彼らと再会できるような気がしたのだ。

 そう、またここに帰ってくればいい。
スコットランドは「お帰りなさい!」と、いつでも温かく迎えてくれるのだから。



ワイルド・グリーン・トラベルの現地ツアー

 今回紹介したのは主に20代を対象としたツアーだが、年齢に関係なく参加が可能だ。
また、ワイルド・グリーン・トラベルではこの他にも様々なエキサイティングなツアーを催行している。この春からは新たに30代を対象にしたフーディー・ツアーも開始した。

 こうしたツアーの詳細は同社のウェブサイトで紹介されており、オンラインでの予約も受け付けている。ツアーの日程はシーズンにより異なる場合があるが、雨天でも基本的に変更はされないという。天候も含めて、スコットランドの魅力なのだそうだ。

 一部のツアーにはワイルドな体験が含まれているが、参加者の意思と自主性を尊重してくれるので、決して強制されることはない。 そっと背中を押してくれる感覚なので、日本人にも受け入れ易いだろう。

 スコットランドには世界中からたくさんの若者が集まり、こうした現地ツアーをうまく活用した旅を楽しんでいる。 日本の若者も負けることなかれ!彼らと一緒に、とっておきのスコットランドの旅を楽しんでみてはどうだろうか。
ワイルド・グリーン・トラベルなら、強力なサポーターとなってくれること間違いなしだ!


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