ワイマールの中心地にある「ホテル・エレファント」は開業1696年と、実に300年以上の歴史を持つ5つ星の名門ホテルだ。その昔はゲーテ、シラー、トーマス・マン、バッハ、ワグナーといった名だたる人物や、現在でも政治家や著名人、各国のVIPが宿泊するホテルとして名高い。
ホテルは全99室。クラッシックな歴史を感じさせる建物の中に足を1歩踏み込むと、そこにはクラッシックとモダンが融合した不思議な空間が広がっている。アールデコ調ともいえるアンティーク風のソファや肘掛椅子が置かれており、天井は非常にモダンなデザインのライト。それが妙にマッチして、かつエレガントな雰囲気さえ醸し出している。
伝統的ホテルでありながら伝統に留まらず、常に独自の新しいスタイルを求め続けるワイマールスピリットがここでも生かされており、なるほど、と感心させられる。
ルームキーは象のモチーフ。ルームキーのみならず、客室にセットされたスリッパやバスローブ、レターセットやトイレットペーパーを留めるシールなど、至る所で象のモチーフを目にする。それらが可愛らしく、また楽しく何とも微笑ましい。もちろん、ここのクリスマスツリーのオーナメントも象だ。開業当時には珍しかった象を、あえてホテルの名にしたのだと言う。
部屋の内装は、バウハウス風の洗練されたもの。どっしりとした大きなソファに広々とした部屋は居心地がよく、またほとんどの部屋でワイヤレスLANが使えるという、近代的な設備もしっかり整っている。
ホテルが建つ「Markt 19」は、1542年の文献にはすでに登場していたという。ホテルの正面には市庁舎の建つマルクト広場があり、この地が昔から賑わいの中心だったことがわかる。
ホテルの向い側にはドイツを代表する画家クラナッハが住んだ「クラナッハ・ハウス」が建つ。ここは現在、劇場として使用されており、夕方になるとワイマールの劇団が芝居などを行っている。また、ホテルのすぐ横には、1708年から1717年までヨハン・セバスティアン・バッハが住んでいたとされる住居跡がある。シラーの家もほど近い。
日帰り観光が多いというワイマールだが、小さな趣のある街だからこそ独自の発見や町歩きの楽しさがある。伝統的なホテルにゆったりと泊まり、町のシンボルであるギンコー(イチョウ)の並木を眺めながら、のんびり散策してみるのがお勧めだ。