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総督官邸
左手手前には港を背にして総督官邸がある。この街は昔ラグーザといって貴族による共和制をとりヴェネチアの属国といった時代もあり、この辺りが丁度ヴェネチアのサンマルコ広場に当たると考えて頂きたい。この国もやはりヴェネチア共和国と前後してナポレオンによって滅ぼされた。
総督官邸の中庭はそれほど広くは見えないが、翌日はここでピアノコンサートが開かれこの街の音楽シーズンが初まる。
西洋の音楽に室内楽というのがある。元来は宮殿の中庭や広間で演奏されたもので、バッハにしろ、モーツアルトにしろ、私の考えでは、本来こうゆう場所で聞いてこそ作曲家の意図が生きてくると考えている。
例えばモーツアルトは、自分の作品が東京の日比谷公会堂やサントリーホールで演奏されると思って作曲した筈がない。
私の今までに聞いた一番美しいモーツアルトは、この後に話題となる1960年夏、このドブロブニクに来る途中に、ザルツブルクの音楽祭でレジデンツ(司教邸)の中庭でローソクの光にカール・ミュンヒンガー(?)の影法師が怪しく揺れた”アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク”であった。

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