音楽の街、ライプツィヒ
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ナッシュマルクトにある若かかりし頃のゲーテ像。視線の先には、ライプツィヒ大学がある。
ゲーテゆかりのアウアーバッハス・ケラー
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アウアーバッハス・ケラーの壁に描かれた森鴎外
そうしたライプツィヒに残るゲーテゆかりの場所が、足繁く通った1525年創業の酒場「アウアーバッハス・ケラー」である。ゲーテはこの店で、ある客人から黒魔術師ヨハネス・ファウストス博士の伝説を耳にし、戯曲『ファウスト』のインスピレーションを受けたという。店の雰囲気やそこに掲げられた絵画に魅せられたゲーテは、作品の一場面にこの店を登場させている。
同じくライプツィヒで学び、『ファウスト』を初めて日本語に翻訳した森鴎外もまた、その偉業が称えられ、アウアーバッハス・ケラーの大地下室レストランの一角にある壁画(幅3.16メートル、高さ1.8メートル)に、その姿をとどめることとなった。その壁画のすぐ下には記念のプレートが、ドイツ語と日本語の両方で掲げられている。
バッハゆかりの2つの教会
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J.S.バッハの眠るトーマス教会
ライプツィヒが属するザクセン州の隣、チューリンゲン州のアイゼナハで生まれたバッハは、このライプツィヒで27年に渡って市の音楽監督を務め、ここで数多くの作品を作曲した。バッハの墓所があるトーマス教会のステンドグラスには、この町で活躍した音楽家たちと共にバッハの肖像が描かれている。
このトーマス教会の向かい側には、バッハ資料財団によるバッハ博物館が、また教会の左斜向かいには、ライプツィヒ発祥のお菓子「ライプツィガー・レアヒェ」とバッハ・コーヒーが楽しめるカフェ・カンドラーがある。このカフェでは、バッハの没後250周年に合わせて考案された円形の焼き菓子「バッハ・ターラー」が販売されている。
このトーマス教会と並びバッハ活躍の舞台となったのが、市の中央教会となっているニコライ教会である。バッハはこの教会でも音楽を担当し、1724年に『ヨハネ受難曲』、1734~35年に『クリスマス・オラトリオ』を初演した。この教会には、ザクセン州最大のパイプオルガンがある。
ニコライ教会はまた、旧東ドイツ平和革命により「東西ドイツ統一の出発点」としても有名な教会。淡いピンクを基調とするこの教会からは、柔和で慈愛に満ちた空間が広がっている。このライプツィヒを発端とする平和革命から25年を迎えた今年、教会の入口付近で当時の様子を伝える展示が行われている。